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陽気山脈リプレイ⑥~7,000M編

前回のお話はこちら。

【ここまでのあらすじ】
全ての犬を、わしゃわしゃしたい(ただし相手に嫌がられない場合に限る)。

今回、ついにあの男が目覚めます。

※以下、シナリオ『狂気の峰へ』のネタバレが含まれます! 未踏破の方はご注意ください!
※なお、本キーパリングに関する文章は、KPのまくらさんが通ってきたRPを参考にさせていただいております。





 登山者たちは、夢を見ていた。
 漆黒の山脈を、無数の人影が列をなして登っている。色とりどりの登山ウェアは、さながら虹のように鮮やかだ。
 不意に、山が鳴動する。ずるりと嫌な音を耳にした瞬間、一人の姿が消えた。
 もう一人、また一人と、まるで山に飲み込まれるかのように登山者たちは消えていく。彼らはどこにいったのか。――いや、幾人かは帰ってきていたのだ。山肌に無数に空いた「うろ」が吐き出す、無残な「残骸」と成り果てて。
 漆黒の谷が、〝登山者たち〟だったもので瞬く間に虹色に染まっていく。そして虹の谷の一部となりはてた登山者たちの中に、見つけてしまったのだ。

 ――自分自身の姿を。

 そして、目を覚ました。

ゼッテェ「OH MY GOD!!!!!」

 まず元気いっぱいな雄叫びを上げたのは、ゼッテェである。彼だけではない。周囲を見ると、みな脂汗をかいて酷い表情をしていた。皆、同じ夢を見ていたようだ。

【SAN値チェック】
テッペン (1D100<=69) > 98 > 致命的失敗(SAN : 69 → 67)
ゼッテェ (1D100<=69) > 57 > 成功(SAN : 69 → 68)
エーイチ (1D100<=72) > 20 > 成功(SAN : 72 → 71)
コージー(1D100<=29) > 38 > 失敗(SAN : 29 → 25)
K2(1D100<=85) > 69 > 成功(SAN : 85 → 84)
穂高(1D100<=75) > 43 > 成功( SAN : 75 → 74)

穂高「ひどい夢………」
ゼッテェ「全く嫌な夢をみたよ……」
エーイチ「飲み物のんで、テッペン君。悪い顔色だ」

 一同に戸惑いが広がる中、特にショックを受けていたのはテッペンとコージーである。テッペンが黙って水を飲む一方、コージーは両腕を地面に振り下ろした。

コージー「なんだってんだよ! あの虹色の谷は……!」
エーイチ「コージー君大丈夫か! 君はわしゃわしゃわしゃわしゃ」
コージー「ぎゃーーー」
ゼッテェ「虹色の谷の夢? まさか、みんな同じ夢を見たっていうのかい!?」
穂高「みんなが同じ夢を……? そんなこと、ありえないわよ……」
エーイチ「確かK2さんは、以前も夢を見てましたよね。今回のも同じでしたか?」
K2「いや、似てるけどちがうね……」
エーイチ「ちがう?」
K2「前は、僕自身の姿なんて見なかった」

 夢で見た登山隊の中に、自分自身の姿を見たことを言っているのである。一同が沈黙する中、テッペンがぽつりと「あの最期は嫌だなぁ……」と呟いた。

穂高「もう、6000m。高山病の症状が出てもおかしくはないし、悪夢を見やすい条件なのかもしれないわね」
ゼッテェ「しかし、夢はあくまで夢だ!!! そうだろう?」
K2「ああ、そうだ。たかが夢だ。食料は十分にあるし。体力もまだまだ。まだ何も成し遂げていないんだ。撤退なんて考えるところじゃない。そうだろう?」
ゼッテェ「そうだ! 細心の注意を払って進もうじゃないか!!」

 それでも諦めない頼もしき登山家たちは、互いに視線を合わせて拳を握っている。テッペンもうんうんと頷いていた。

エーイチ「……で、コージー君は大丈夫?」
コージー「だ、だいじょうぶにきまってんだろ!!!」
エーイチ「わしゃわしゃわしゃわしゃわしゃ」
コージー「やめろー!」
ゼッテェ「私も。わしゃわしゃわしゃわしゃわしゃ」
コージー「ぎゃーーーー」
穂高「……ねましょうか」
テッペン「きちんと休みましょう」
エーイチ「はーーーーい!」
ゼッテェ「今度こそはいい夢を!」

 一同は、眠りについた。今度こそそれぞれ安らかに眠り、そして夜が明けた。


○7日目(食料24/30)

ゼッテェ「おはよう!!!」
エーイチ「おはようございます」
K2「ああ、おはよう」

 テントから覗いた空は、快晴。視界の果てまで、目もくらむような漆黒の高峰群が続いている。

テッペン「黒い」
エーイチ「黒いね。写真撮っておこう(【写真術】 (1D100<=80) > 71 > 成功)。それにしてもすさまじい山だ。今から我々はこれをのぼるんだ……」
ゼッテェ「とてもいい天気だ!!!!」
K2「ああ、いい山日和だ。これならスムーズにのぼれそうだね。行こう」

KP「ここから先、登山隊は無数のピークをトラバース(迂回)しながら、漆黒の山脈の最高峰と推定されるピークの取り付きまで移動していきます」

 ここまでの経験が生きたのだろうか。この日は全員絶好調だった。何の苦もなくテッペンはエーイチが感動して泣き崩れんばかりの名登山を見せ、ゼッテェも最高の足運び、そしてコージー(ナビゲート技能値45)ですら絶妙のピッケル使い((1D100<=45) > 10 > 成功)を繰り出したのである。

コージー「これは一流」
エーイチ「わしゃっ」
コージー「それはやめろー!」
ゼッテェ「わしゃわしゃ」

 こうして登山隊は、無事7,000 mに到達した。

ゼッテェ「我々に運が味方している!!!」
エーイチ「えらいぞ、えらいぞ」わしゃわしゃ
コージー「それはもういいって!!」

 コージーがわやくちゃにされているのを見て、また実家の犬を思い出したテッペンが微笑んでいる。エーイチは、推しが笑っていたので心臓が止まりかけた。

穂高「最初はどうなるかと思ったけど、結構馴染んでるわね、彼」
ゼッテェ「私たちはとてもいいチームだ!!!!」

 夕食をとる。少し雑談をしていると、あっというまに寝る時間となった。

ゼッテェ「明日も元気に頑張ろう!!!!」
エーイチ(この大きな声にも慣れてきたな……)

 テントの中に静寂が訪れる。そうして全員が寝静まったころ――。

【聞き耳】
テッペン (1D100<=80) > 37 > 成功
エーイチ (1D100<=65) > 81 > 失敗
ゼッテェ (1D100<=75) > 10 > スペシャル

 ふと、物音にテッペンとゼッテェが目を覚ました。顔をあげると、ちょうどこっそりとテントから出て行こうとするコージーの背中が見える。テッペンはスルーしようとしたが、もう一人の男の辞書にそんな言葉などなかった。

ゼッテェ「どこへ行くんだ!!!!!」
エーイチ「何!!??? え!!!?????」←起きた
テッペン「」
コージー「あ? クソだよクソ。トイレに行くんだ。何なら一緒に行くか?」
ゼッテェ「そうか! いってらっしゃい!!!!!!」
エーイチ「夜襲!!!?????」

 コージーは、ヘッデン(ヘッドライト)に、小さくまとめた荷物とザイルを持って外へ出た。彼の言うとおり、用を足しに行くのに間違いないだろう。しかしここは前人未到の雪山である。寝起きの頭をフル稼働させ、エーイチは急いで声をかけた。

エーイチ「待って、コージー君。夜だし危ないよ。一緒にいくよ」
コージー「おう、足手まといになるなよ」
エーイチ「うーーーーーーーーす(低音)」
ゼッテェ「じゃあ私もいこうかな!!!!」

 こうして、みんなでトイレに行くことになった(テッペンもついてきた)。
 氷点下の夜の雪山の足元は、星の明かりも届かない。少し歩くと、ヘッドライトの灯りが山肌に大きく空いた空洞を照らし出した。

コージー「お、なんだよ。風よけにちょうどいい場所があるじゃないか。特等席のトイレだ」
エーイチ「やめとけやめとけ」

 何やら嫌な予感がしたエーイチは、がんがん洞窟へ突き進もうとするコージを止めた。空洞の中は、鍾乳洞のような様相である。内部の壁はうねうねとヒダ状になっており、鍾乳石が随所に見られる。比較的暖かで、じっとりとした湿気もあった。

テッペン「風よけなのは事実だし……」
コージー「そうだぜ。それに見てみろ、もっと奥まで続いてるぞ。せっかくだし行ってみよう」
ゼッテェ「行かない方がいいような気がするが……」
エーイチ「そうだよ、よくないよ。出よう。夢を忘れたのか?」
コージー「なんで? 世紀の大発見があるかもしれないぞ」
エーイチ「日本は長寿の国だ。どうしてか知ってるか? 科学や医療が発達してもなお、ENGIを大事にするからだ。夢で見たことを自らの脳が警告した危機と信じ、回避してきたからだ」
ゼッテェ「ENGI!!!!!」
エーイチ「そうじゃなくても、洞窟の奥だ。酸素が薄くなってる可能性もある」
コージー「ふーん。じゃあ待ってれば?」
ゼッテェ「私はついていくよ!!!」
エーイチ「えー」

 コージーを先頭に、洞窟の中へと入っていく。だが、そのメンバーの中にテッペンが入っていたのでエーイチも黙っていられなかった。

エーイチ「んんんもう! テッペン君が行くなら行くよォ!」

 こうして、全員で中を探索してみることになった。じめじめした湿気が服にまとわりつくのを感じながら、足を進めていく。洞窟はそこまで長くなく、彼らはすぐに終わりにたどり着いた。
 洞窟の果ては、谷になっていたのである。

コージー「おい、見てみろ。なんだありゃ」

 コージーのヘッドライトが、谷底を照らし出す。覗き込んだのは、コージーに言葉につられたエーイチとゼッテェ(【目星】成功)。そこに広がっていたのは、昨日夢に見たばかりの光景だった。

 カラフルなウェアによって彩られた、〝虹の谷〟。
 第一次狂気山脈登山隊の遺体が、まるでごみのように乱暴に打ち捨てられていたのである。

一人、目星に失敗して何が何だかわからない人がいます

エーイチ「!!!!!」

 一般的に高山での死体は、乾燥と低温により腐らず比較的良好な状態が保たれる。それがもし湿気を帯び空気の通りが悪い洞窟に置かれたものなら、体内の脂肪が変質し屍蝋化する場合もあるかもしれない。
 だが、ここにある死体はどれも違っていた。
 この谷は、まるで胃だった。人々の皮膚や肉が、消化途中のごとくどろどろと溶けている。体の部位は咀嚼された直後のようにバラバラで、断面からは血に濁った白骨が覗いていた。
 果たしてどんな死に方をしたら、あんなおぞましい死体と成り果てるのか。その問いに答えられる者は、誰一人としていなかった。

ゼッテェ「……!」

 しかしこの地獄を前に、なおもゼッテェは目を凝らしていたのである(【SAN値チェック】 (1D100<=68) > 49 > 成功)。彼の友人は、第一次狂気山脈登山隊のメンバーだった。最悪の事態を頭から追い出しながら、彼はいつにない落ち着きで死体の数を数えた。

 二人、足りなかった。そして眼下の死体の山の中に、ゼッテェの友人の姿はなかった。

エーイチ「なんだ、これは……! どうしてこんな……!」

 一歩後ずさるエーイチ( 【SANチェック】 (1D100<=71) > 21 > 成功)。しかしその横を、奇声をあげて走り抜けた者がいた。
 コージーである(【SANチェック】 (1D100<=25) > 63 > 失敗)(SAN : 25 → 19)。この世ならざる光景を目にした彼は、恐怖でパニックに陥っていたのだ。

ゼッテェ「待て!!!!」

 コージーを追ってゼッテェが飛び出した( 【DEX(素早さ)対抗ロール】 (1D100<=60) > 33 > 成功)。エーイチとテッペンも反応したが、驚きのあまり体が追いつかない。

エーイチ「このままじゃコージー君が危ない! 止めてくれ、ゼッテェさん!!」
ゼッテェ「おおおおおおおおお!!!!」

ゼッテェ【組みつき技能ロール※初期値】CCB<=25 (1D100<=25) > 1 > 決定的成功/スペシャル

ゼッテェ「逃がさない!!!!!!」

ラテンの血で狂気山脈の雪が蒸発しちゃう!!!!!!

 洞窟からコージーの体が出ようとした瞬間、全身を使ってゼッテェが飛びついた。そのまま決して逃さぬよう、熱く抱擁する。

ゼッテェ「落ち着くんだ!!!!!!!! コージー!!!!!!!!」」
コージー「あああああ!? はっ!?」

 周りの雪も溶かさんばかりの情熱ラテンハグに、コージーはハッと正気に戻った。逃げようともがくも、ゼッテェの腕からのがれられるはずもない。その間に、テッペンとエーイチも追いついた。

エーイチ「ゼッテェさん、かっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
コージー「あ、あ、あああ!! なんだ、なんだあの死体!!!!」
エーイチ「言ったとおりだよ。あれがENGIだ」

 緊迫した状況だったが、テッペンだけはおろおろとしていた。実は彼だけ谷の底を見ておらず、何が起きてどうなっているかさっぱりわからないのである。
 けれど、残る三人は〝見て〟しまっていた。ゼッテェが谷の底を凝視していたと知っていたエーイチは、恐る恐る尋ねる。

エーイチ「あの、ゼッテェさん……その、ご友人は……」
ゼッテェ「親友の姿は……なかったよ。ただ……」
エーイチ「ただ?」
ゼッテェ「2名をのぞいた全員は、いたんじゃないかな……」
エーイチ「……2名を除いた全員ですか。けれど、希望は出てきましたね」
コージー「はぁっ、はぁっ こ、こんなところにいたくない! 俺はテントに戻る!!」
ゼッテェ「待て!!!!!!」
エーイチ「そうだ、みんなでおててつないで急いで帰るぞ! そしたら怖くないから!」

 まだ混乱と恐怖が抜けきっていないコージーをなだめつつ、四人は手を繋いでテントまで戻った。一度だけ振り返った洞窟は、来た時と同じように何食わぬ顔で口を開けていた。

次回に続く。

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