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照明と音響による「五感」の表現

いかに五感を感じさせるか。
ロマンス作品は映像だけでいかに「五感」を伝えるかというのが大事になってくる。

通常の上映方法では当然、視覚と聴覚の「二感」しか使えない訳だが、優れた作品だと、匂いや空気の湿り気、感触などの「五感」がきちんと伝わってくる。

特に、フランスと北欧の作品はこの「五感」表現が抜群に上手い。

具体的に何が上手いかというと、照明と音響。この二つに尽きる。

照明は暗いのに人物はちゃんと見える。というバランスが絶妙だったり(普通の作品だと寝るシーンでもだいぶ照明が明るかったりする)、主人公の二人が接近する時や、感情が動いた時に音響として呼吸音を使ったり(普通の作品だとすぐ音楽がかかったりする)、など人物と空間の切り取り方がとにかく上手い。

『アメリ』(01)の終盤で主人公の二人が接近し、心通わせるシーンでは一切音楽が流れず、途中で猫が目を細めているシーンが挟まれる。

ここで凄いのが、猫がゴロゴロと喉を鳴らす音が音響として使われているところ。このゴロゴロ音により、主人公二人の感情が一発で伝わるのである。

また、北欧作品の照明演出は世界最強だと思う。

『ぼくのエリ』(08)で主人公二人が寄り添い眠る場面。しっかり暗いのに人物はちゃんと見えていて、微かな光に照らされた産毛が光って、とても美しいシーンになっている。

北欧の近年のドラマシリーズ『SKAM』 (16)や『ヤング・ロイヤルズ』(21)などの照明演出も素晴らしい。

照明と音響は、主人公二人の心理的な距離を伝える「五感」表現として機能するので、ロマンス作品では最も神経を使うべきところだと思う。

文・イラスト:長野美里

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