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ダイコン買うみたいにカブを買う

 ほぼ脳髄反射でお店に電話した次の日、私は約束したバイク屋さんに行きました。約束の時間には5分ほど遅れてしまったのですが、お店の方が店内に準備して待っていてくださいました。

 きれい。美しい。そしてデカい。

 このお店の店頭にあった運命の1台はC125。
 そしてこれがスーパーカブC125を間近で見た印象でした。
 色はパールニルタバブルー。こだわらないつもりでいましたが、一番欲しかった色でした。以前バイク屋さんの店頭で見たことはあったのですが、いずれも遠くからでさわれる距離で見たのは初めてでした。

 乗ってみますか?とおっしゃっていただけたので、スタンドは上げたまま乗ってみました。思ったより座面が高いなあと思いましたが、両ペダルには問題なく足を乗せられます。
椅子の座り心地も悪くありません。すごく前の方に座らないとペダルが届かないということも、ペダルに足を乗せると膝がつかえるような感じもしません。無理のないポジションで座れます。
 そこからすっとハンドルに手を置くと自然に背筋が伸びる気がします。
 高さも疲れる感じや不自然な感じはありません。
 グリップも私にはちょうどよく、太すぎて指が回らないとか細すぎてアクセルを回しにくいといった感じはありません。
 今までとても不自然な格好でアドレスv125sに乗っていた気がしました。

 そしたら座ったままでいいのでスタンドを下ろしてみてください、と言われました。
 目の前には230万円のハーレー
 ここへ突っ込んだらという思いが乗っかったおかげでスタンドが重い。ふえ?と戸惑っているとそのまま勢いつけて行っちゃってください、もし何かあったら僕が押さえますからとお店の方に言われました。
 でも目の前には230万円のハーレー
 やらないことには始まりそうもなかったので言われるままハンドルを押しました。するとフツーにスタンドが降りて、期待してたことは起こりませんでした。
 そして両足を床につけてみました。両足ともかかとが少し浮くという感じ。お店の方もこれなら問題ないですね、とおっしゃたので一旦カブから降りました。
 スタンドをお店の方に上げていただいて、このバイクについて色々なお話を聞きました。でもあまりに堂々として美しい姿にほとんど内容を覚えてません。

 もしもこの子がうちに来てくれたら。
 そいつは楽しいだろうなあ。
 もしもこの子が私のバイクになったら。
 こんなキラキラした子と一緒にどこに行こうか。
 何処でも行けそうだなあ。インスタで自慢し倒すぞ。

 とぼーっと考えてたら、どうします?と聞かれました。
 そうだ。どうするの?また逃げ帰るの?
 いつかは買うのいつかはいつ来るの?

 そんな空を見つめる私になにか思うところがあったのか、車体の傷の話をしてくださいました。この機体にはバックミラーとマフラーの出っ張った所に擦り傷がありました。レッグシールドとグリップの先に傷はなかったのでそうは思えませんでしたが転倒したんですか?と聞いてみました。するとたぶんそういうのではなくて出っ張った壁とか塀とかにこすったのではないか、と返ってきました。
 傷に関してきちんと答えてくださった事に感謝し、自分ならもっとガビガビにする自信がありますと訳のわからない返答をしました。

 走行距離は1,500kmないくらい、発売日を考えたらごく最近製造されたものだと思います。有名な社外のアクセサリーを付けてもらって、見た目もきれいなのになんで手放しちゃったんだろう。大きく傷が付いたから?飽きちゃったから?
 これからもっと楽しいことがいっぱいあったかもしれないのに。
 少しこの子が不憫に思えてきました。

 私の中での最大のネックはお金でした。でも、ものすごく無理すれば、例えるなら今後3年間断酒しておやつ抜きゲーム無し漫画無しの生活を続ければ買えそうな金額です。

 さあ、どうしますか?と店員さんに聞かれました。

 「すみません、これください」

 とうとうカブヌシになってしまいました。
 

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