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公園にいる大人はわたしだけだった

 ピンポン、とインターフォンが鳴って、モニターに小さな女の子が映っている。
 娘の友だちだった。宿題が終わってゲームをしていた娘は、友だちと一緒に、友だちの家の近くにあるという公園に向かった。
 同じ学校の、同じ体操服を着た二人は、手をつなぎ、スキップしていて、家の角を曲がると見えなくなった。
 息子が、ぼくも公園に行きたい、と言うので、一緒に行くことにする。
 娘の友だちから、だいたいの位置は訊いていたので、すぐにわかった。
 住宅街の中にある、小さな公園には、娘と友だちと、あと何人かの、同じ小学校の子どもたちが遊んでいた。
 わたしと息子に気づくと、娘は「来たの」と少し微妙な顔をしていた。息子は娘たちの中に加わり、遊び始めた。
 昨日は曇り空で、少しも空が見えなかった。
 時折吹く風が気持ちよかった。
 公園で遊んでいる子どもたちは、住宅街に住んでいるのだろう。いつもそうしているような、慣れた感じで走ったり、ボールを蹴ったり、公園を出たり入ったりしている。自転車で通り過ぎた子が、もう一度やってきたり、また見えなくなったりを繰り返す。
 母親や父親らしい人の姿がない。公園にいる大人はわたしだけだった。

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