夜中のラーメン

　夫とふたり暮らしの女の人がいて、その人はとんこつラーメンが大好きで、夜中でも、食べたくなると、夫と寝ていたベッドをそっと抜け出し、食べに行く。夫は、妻が夜中に黙ってラーメンを食べに行くのに気づいているけど、知らないふりをしている。
　という話をしていたその女の人を、いいなーと思っていて、昨日の夜はわたしもやってみたいと思ったけど、頭の中で想像するのにとどめて、ふきのとう味噌をのせた豆腐と、茹でたじゃがいもと、お好み焼きを食べた。インスタントラーメンを作ってもよかったけど、鍋を出すのが面倒だし、家族を起こしそうでやめた。
　食べながら、怪談を聞こうとパソコンを開き、何話か聞いて、怖くなってやめた。
　夜中に食事をしていたら、伊丹十三監督「タンポポ」のオムライスを思い出した。
　どんな話だったかはぜんぜん覚えていないけど、夜中の厨房で作られるオムライスだけは、ほんとうに、これ以上ないくらい、子どものわたしにはおいしそうに見えた。
　夜中に食べるものは、なぜかとてもおいしく感じる。いつか、家族に気づかれないようこっそり布団を抜け出して、夜中のラーメンを食べてみたい。