【コラム】天皇賞秋2021回顧〜完敗を喫した女傑〜


はじめに

3強の決着で幕を閉じた天皇賞。3頭が各々力を出し切り、熱戦を演じたこのレースは今後長らく語られる事となるだろう。
今回はそんな名勝負を、3着に敗れたグランアレグリアに焦点を当てて徹底回顧していく。



当時の天皇賞予想の問題点


まず初めに、私がレース前に執筆した天皇賞のコラムは読んで頂けただろうか?
下記は当該コラムである。


このコラムでは天皇賞で求められる適性面からエフフォーリアとコントレイルの能力を比較し、最終的にエフフォーリア>コントレイルと結論付けている。
実際にレースではエフフォーリアが圧巻のパフォーマンスで祖父シンボリクリスエス以来19年振りの3歳馬による秋の盾制覇を成し遂げた。ここの見解については後から読み返しても納得の行くものであり、そこに結果も付いてきたので良い記事が書けたのではないかと思う。

しかし残念ながら本命はエフフォーリアではない。3着に敗れたグランアレグリアなのだ。
ここでグランアレグリア本命の根拠を簡単に整理しておく。尚、詳細が知りたい方はコラムを読み返して頂きたい。

根拠①
・グランアレグリアの過去のレース比較でこの馬の適性は緩い流れからの瞬発力勝負にあるとし、同じ適性が問われる天皇賞の舞台でこそ真価を発揮すると結論付けた。
根拠②
・天皇賞と最も近い適性が問われた安田記念でのパフォーマンスを高く評価した。
→具体的には、2つの致命的な不利がありながら上がり最速で2着に来たパフォーマンスが強く、さらにその時の1,3着馬がともに次走でもしっかり結果を残したように相手関係も担保されていた。


しかしこれらの根拠には問題点が2つある。
1つ目は、グランアレグリア自身がこのレースへの適性が高かったとして、ではこの馬のベストパフォーマンスを発揮した際に他の2強を倒せるという比較が出来ていなかった点。 
2つ目は、安田記念で接戦を演じた2頭が強いことによりレースレベルも高かったと結論付けたが、その2頭と天皇賞の他2強での間の能力比較が全く出来ていなかった点。

このようにグランアレグリアの本命根拠は、エフフォーリアとコントレイルの能力比較に比べて、余りに希望的観測が過ぎていた。
もちろんこの馬自身の得意条件・適性についての分析は詳細に行えていたと思うが、それよって「エフフォーリアやコントレイルを上回っている」とするには余りにも根拠が希薄であった。



ラップから見る着差以上の力差


では、実際にレースで他2強との能力差はどれほどだったのか。
まずは今回のレースラップを見て行く。比較として過去5年(不良馬場の17年を除く)の平均ラップも載せておく。

スクリーンショット 2021-11-02 0.28.48

これを見ると今年の天皇賞は例年よりも道中が緩み、よりラスト3Fの末脚が重要となっていることが分かる。

スクリーンショット 2021-11-02 0.29.12

グラフにするとより分かりやすいか。テンの2Fはほぼ同じ入りだが、向正面では例年に比べて大きく緩んでいることが分かる。そしてその分後半3Fは早くなっている。


では例年より緩い流れはグランアレグリアにとってどのように作用したのか?

ここでレース前の見解文を引用する。
“この馬はこれまで3度連対を外しているが、いずれも上がりの掛かるレースであった。逆に上がりの早いレースでは1度も崩れずに走っている。今まで13戦に出走してきたが、上がり4Fが46.0以内のレースに限れば(7.2.0.0)、さらに上がり3F34.0以内のレースなら(4.1.0.0)とともにパーフェクト連対。”

この見解ではグランアレグリアは上がりの早いレースの方がパフォーマンスを上げると述べられている。それを踏まえた上で出走した過去4度の東京G Iのラップを比較する。ここはコラムで触れた内容と重複するので、既に読んだ方は飛ばして頂いても問題ない。


やはりこれを見ても前半〜中盤にかけて脚が溜まる緩いペースに適性があることが分かる。
対照的に0.8秒の前傾戦となったNHKマイルは生涯でもワーストレベルのパフォーマンスであった。

つまり例年よりも道中が緩んで上がり偏重となった今年の天皇賞はグランアレグリアにとって有利に作用。また、敗因の一つとして考えられている先行策についても、ラップと照らし合わせればこの馬が脚を溜めるには全く問題のない位置取りだったと言える。
結論としては、得意展開で敗れたグランアレグリアは着差以上に他2強と力差があったと考えることが出来る。



おわりに


今回はグランアレグリアに焦点を当てて天皇賞を振り返ってみた。
戦前のコラムと合わせて3頭の中で優劣を付けてきたが、決してどれかが弱いということを言いたい訳ではない。あくまで3頭とも能力を認めた上での序列付けなのだ。そして3頭が皆強いということは、天皇賞を見ても明らかだろう。
歴史的名勝負を演じた3強には最大限の敬意を払いたいと思う。

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