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【コラム】ジャパンカップ2021〜最強世代が生み出した傑物〜


はじめに

競馬界に吹き荒れる3歳旋風。既に最強世代として認知され始めている同世代だが、その評価を決定的にしたのは歴史的名勝負となった天皇賞の存在だろう。同レースを制したエフフォーリアの強さ、そして3歳世代の評価については以下のコラムを参照して頂きたい。


本記事では最強世代においてエフフォーリアと双璧をなすもう一頭の傑物に焦点を当てて書き進めて行こうと思う。
なお、天皇賞のコラムと重複する内容が多々存在する点について予めご了承頂きたい。



ダービーのラップから見る名馬の証明


では、実際にシャフリヤールのダービーを分析して行こう。まずはレースラップを以下に記しておく。

12.2-10.6-12.2-13.0-12.3-12.4-12.8-11.7-11.4-11.5-10.8-11.6(2:22.5)

勝ち時計の2:22.5はダービーレコードだが、このタイムの価値をより高めたのがその内訳だ。
それを解き明かす為に従来のレコード(2:22.6)を記録したロジャーバローズのダービーとラップを比較する。以下は両レースのラップ推移(表1)とそれのグラフ(表2)、前半5F/後半5F/後半3Fで分けた表(表3)である。

表1 ロジャーバローズ及びシャフリヤールのダービーラップタイム推移


表2 表1より作成のグラフ


表3 表1の前半5F/後半5F/後半3F別ラップ


同じく高速決着となった2レースだが、その内訳は全く異なる。ロジャーバローズの年は逃げたリオンリオンの大逃げにより前半からハイペースで推移したのに対し、今年はスローで流れ後半力が問われたレースとなっている。
要するに、前者は速い流れで引っ張るペースメーカーによって副次的に記録された好時計であるのに対し、後者は勝ち馬シャフリヤール及びハナ差2着であったエフフォーリアの後半力の高さによって記録されたレコードであり、この点からも今年のダービーの時計がより価値のあるものと定義できる。
この後半5Fの水準は過去の名馬と比較しても遜色ないどころかそれを遥かに凌駕しているのだが、この辺は後々述べようと思う。

では続いて今回人気を2分するコントレイルとの比較を見ていく。ここでは馬場状態が極めて似ていた昨年の日本ダービーと比較する。
ロジャーバローズとの比較と同じく2レースのラップ(表4)、それをグラフ化した図(表5)、前半5F/後半5F/後半3Fで分けた図(表6)を以下に示す。

表4 コントレイル及びシャフリヤールのラップタイム推移


表5 表4より作成のグラフ


表6 表4の前半5F/後半5F/後半3F別ラップ


今年のダービーもスローで推移したが、昨年はそこから前半5Fがさらに1秒以上遅い入り。その後中盤の6F目、7F目で11.8-12.2と締まっているところが特徴的な点だろう。これは表5のグラフからも読み取ることが可能である。ラップを前後半ごとに区間分けした表6では全ての区間でシャフリヤールの方が早いタイムを記録した。
しかしこの区間分けでは昨年のダービーにおいてラップが早くなった6F目、7F目が含まれておらず、公平性の欠くデータとなっている。これを是正するため、以下に前半4F/中盤4F/後半4Fで分けたラップ(表7)を示す。

表7 表4の前半4F/中盤4F/後半4F別ラップ


これを見るとやはり中盤は昨年のダービーの方が早くなっている。ただ、中盤の0.6秒差に対し、前半で1.4秒、後半で0.8秒今年の方が早くなっており、2レースの比較で言えば今年の方がレースレベルは高かったと見るのが自然である。
この2レースに近い適性が求められた天皇賞でエフフォーリアが勝利した事実もこの見解の正当性を証明する一つの要因になるだろう。


ここまでの分析で既にシャフリヤールを本命とするには十分な根拠が揃っていると思われるが、ダービーのラップからさらなる能力面の裏付けを行う。
記事の序盤で後半5Fの数字が歴史的な水準と述べた。それを証明する為にまずは以下の画像を見て頂きたい。これは過去に東京芝2400mで行われた全レースにおける後半5Fのタイムを早い順に並べたもの(表8)である。

表8 過去東京芝2400mにおける後半5Fタイム順位

〔出典〕TARGET frontier JVより

画像一番上がシャフリヤールが勝利した日本ダービーである。これから読み取れるように、東京芝2400mの全レースにおいて歴代最速の後半5Fを記録していることが分かる。
これを見ると条件戦がちらほらランクインしているが、基本的にどれも前半が遅いレースであり時計的価値は薄い。上記のデータを前半5F61.0以内かつ後半5F58.0以内に絞ると大きく該当馬が減り、時計的価値の高さを認めることが出来る。この条件で該当するのが以下の4レース(表9)である。

表9 過去東京芝2400mにおいて前半5F61.0以内かつ後半5F58.0以内を記録したレース一覧

〔出典〕TARGET frontier JVより筆者作成

前述の抽出条件を設定すると該当馬は僅か4頭となり、その時計的な価値は高くなる。
上記の4レースにおいても、60.3-57.0の2021日本ダービー、59.9-57.2の2018ジャパンカップは特に高い評価が必要だろう。
2018ジャパンカップはアーモンドアイが2400mの世界レコードを記録したレースであり、これと同等レベルの水準を記録したシャフリヤールは、ここに反映されていない6F目、7F目の時計の違いを差し引いても破格のパフォーマンスであったと結論付けることが出来る。



おわりに


最強世代と謳われる今年の3歳世代において双璧をなすエフフォーリアとシャフリヤール。その2頭が激闘を演じた日本ダービーは間違いなく歴史に残る名勝負であった。今後の競馬界を背負っていく若き才能。先にそれを証明したエフフォーリア。さあ、シャフリヤール。次はお前の番だ。

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