宿りしもの
昔々、あるところにホシガリがいた。
ホシガリは、クリエイターだった。
ものを作っては、それを売って生活していた。
素晴らしいものができた時、それは自然に売れて苦労しなかった。
素晴らしいものができない時ほど、それが売れずに売るのに苦労した。
ホシガリは気づいた。
売れることを願っている時ほど、不完全燃焼だと。
上手くできていないとわかっているから、売れることで不完全な思いを埋め合わせしたかった。
上手くできているとわかる時は、売れることを一切、考えなかった。
売れる前から、もう満足していたから。
ホシガリは、売れることが頭に浮かぶと、さらに精進した。
それは上手くいかない時だから。
基本に立ち返り、テクニックではなく、真心で創作した。
心という無形のものを【もの】に宿らせる。
それが価値あるものになった。
心が宿らないそれは、ただのもの。
ホシガリが欲しいものは、価値だった。
ホシガリが生み出す唯一無二のもの。
心の分身のような
生きた証のような
ホシガリの子のような
そんなもの。
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