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3つの星:炎環8月号「俳句界注目の人と作品」より

所属している俳句結社『炎環』。
その8月号で「俳句界注目の人と作品」と題した
3人の若手俳句作家の作品群が掲載されました。

作家名は、西川火尖、箱森裕美、星野いのりの3人(敬称略)。
いずれも、2020~2021年に俳句賞を受賞。

彼らの受賞報告は既に誌上でなされていましたが、
今回、改めて個々の作品群を掲載した企画は
現在の3人の力と世界を紹介するとともに、
炎環のメンバーの個性と顔ぶれの豊かさを
内外に示し、意義ある内容と眩しく読みました。

作家ごとに感銘句を二句ずつ。

◆西川火尖(第11回北斗賞)

端折りつつ話してみても蝶狂ふ
満天星の花や冊子に神のこと

「いつか、絶対に俳句賞をとる人、とれる人」
と思っていました。
西川氏が入会した頃から知っている一人として、
昨年の受賞ニュースは、しみじみ嬉しかったです。
(私も以前、北斗賞に出したけど、全くダメだった^_^;)
初学の頃から誰にも真似できない「うたごころ」があり、
独自のグルーブを17音の中に生み出すことで、
「読者に語り掛ける」作品を書くことができる作家。
第一句集の完成を楽しみにしています。

◆箱森裕美
(第51回埼玉文学賞準賞、第10回百年俳句賞最優秀賞)

飛行機の山へ隠れて豆御飯
また出会ふ別の花吹雪のなかで

一句ごとの言葉のポテンシャルが高くて、
ときに季語まで巻き込んだ危うさスレスレで
攻めてくる俳句が魅力的。
同人になった頃にもその傾向はみられましたが、
どちらかというと端正な句姿、
テクニカルな力のほうが目立っていた。
それが、ここ数年、どんどん「個」の自分が出始め、
高い技術に熱い言葉がブレンドし、
独自の世界を創り出し続けている。
今、私が影響を受けている作家の一人です。


◆星野いのり
(第4回俳句四季新人奨励賞)

春灯や馬は前足より生まれ
旧姓の夜を水中花ひらききる

この作家の作品を読むたびに、
「棋譜をたくさん読み込んで、どんな手にも対応できる棋士」
のイメージが浮かびます。
たくさん俳句を読んで、吸収して、
いろいろな言葉や技術を柔軟に取り込み、
自分のものにして、臨機応変に作品として
繰り出すことのできる。
既に高い技術を擁しつつ、伸びしろは、まだまだ十分。
今後が末恐ろしく、また頼もしい作家と思います。


以前も何度か書きましたが、炎環は私が入った
四半世紀ほど前から、若手が多いと言われています。
その状況は今も変わらず、いやむしろ今の方が
インターネットなどの影響でその数は増えている印象です。

その中で、最近立て続けに外部での受賞者が出ており
(今回の3人以外にも、他の賞で入賞している若手がいます)、
その刺激を受けて内部のレベルもまた上がってきて、
短い間の変化に驚くばかりです。

同じ炎環でも彼らのルーツや歩みが異なるのも、面白い。

西川氏は私と同じく生え抜きの炎環作家。
かたや箱森氏は炎環以外で俳句を始め、
現在も炎環と別の結社で同時に活躍。
星野氏の俳句との出会いはお聞きしたことはないですが、
炎環以外にもインターネットという場を使い、
縦横無尽に創作活動を実施。
こんなところにも、三者三様の個性があり、
作品へもおのずとその影響が表れているといえましょう。

そんな三者に共通しているのは
「季語や17音のかたちを大事にしつつ、
 自分自身でそれらを把握(確認や検討)することで
 個性を自然と滲ませた作品を生み出している」
という点です。

そして、これはおそらく(詠みぶりや個性は違えど)
私を含めた他の炎環の作家たちにも
共通した姿勢ではないかと思います。

『炎環』誌上では、今後も若手にスポットを当てた
企画が掲載されるようです。
かつて「炎環の若手」だった一人として、
「これから、新しい自分の作品を詠むために」
原点に戻る思いで、心待ちにしています。
 


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