原作史上主義過激派

妹の和訳を手伝った。
彼女は声楽を学んでいるのだが、その一環で何か論じる必要があるらしい。そのテーマに必要な本が英語で書かれていたので、まだ英語の読める私が和訳を手伝ったのだ。

案外読めた。めちゃめちゃ面白かった。

なんでも、1800年代、ヨーロッパの音楽界はロマン派が跋扈したらしい。
彼らはおよそ100年前の音楽に様々な編曲をほどこした。
例えば和音をあえて不協和音にしたり、声を伸ばす部分をあえてカットしたり。
音楽に明るくない私の和訳に、英語に明るくないが音楽教育を長いこと受けた妹が「そうやわ!ある!」などと合いの手を入れて、たいへん愉快だった。

何より面白いのが作者の語り口である。
彼はロマン派の編曲に辟易していて、「およそ100年前前の音楽を『古典』とよび」だの、「その編曲は100年も経たずに廃れた」など手厳しい皮肉をズバズバ入れる。
どんな時代でも原作史上主義者は原点を大切にするんだなあ。
好きな音楽がアニメ化したらばちくそに文句を言うんだろうなあ。面白いな。

音楽英語も新鮮だった。
私の周囲で「reduction」といえば【還元】なのだが、この業界では【楽譜の簡約化】なのだそうだ。
最高だ!業界によって違う平易な言葉!

興奮したので、その晩はずっとバロックを聞いた。

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