見た目にもこだわる脳神経外科手術 ①髪の毛と皮膚切開・縫合の話

脳の手術って、怖いですよね。頭蓋骨を開けられるって考えただけで恐ろしいです。

現在名戸ヶ谷病院脳神経外科だけでも月間40件以上の手術を監修する私も、手術に挑む患者さんの気持ちを想像するとぞっとします。
手術の際は毎回この最も大事な臓器に対峙する脳外科医の責任を感じています。

脳外科の手術は、脳という臓器の重大さと繊細さをもって神聖な領域のように語られることもありますが、もう一つの側面を忘れてはなりません。

頭頚部(首より上)は人と会った時にその見た目が与える印象が非常に重要な社会的機能を果たしています。
だから、私達は毎朝髪型を整え、化粧をして、あるいは髭を剃ったり、美容院に行ったりします。人によってはピアスなどの装飾品に気を遣い、歯列矯正や美容整形を行います。
人間が首より上の見た目を整えるために費やす時間と労力って、一生の中で相当のボリュームになると思いませんか?

整容面にこだわる手術

頭頚部の手術を行う存在として、名戸ヶ谷病院脳神経外科ではその見た目の仕上がりにも非常に大きなこだわりをもって全ての手術を行っております。

脳の病気を治したのはいいけど、見た目が気になって外に出るのは少し気がひけるようになった、などのようなことにはならないように、一人ひとりの患者さんの年齢・性別、ヘアスタイルや毛根の方向、シワの位置や筋肉の発達具合などを考慮して、皮膚切開から開頭範囲、閉創方法をテーラーメイドにデザインしています。

特に学校や職場での見た目を気にする方には事前にデザインを話し合うこともあります。
普通に社会生活をしているぶんには脳神経外科手術を受けたとわからないような仕上がりを目指すのが私達のこだわりです。

髪の毛は剃らずに行う

名戸ヶ谷病院脳神経外科での手術は髪の毛を剃らずに行います。
ヘアスタイル上、刈り上げている短い髪の毛や毛根の向きから術後も目立たない部分などは部分的に剃ることがありますが、基本的には全ての脳神経外科手術は髪の毛を剃らずに行うことができると考えています。
この髪の毛を切らないで手術をすることを無剃毛(むていもう)と呼びます。
無剃毛手術のノウハウも、見た目にこだわる脳神経外科手術には不可欠と言えます。

時々手術前に気合を入れて髪の毛を切ってきてくれる患者さんもいますが、実は髪の毛は長いほうが束ねたり分けたりと扱いやすいので、切らずにそのままお越しいただく方が手術はやりやすいです。

術前の入院前に髪の毛のことで必ず行ってもらうことは特にありませんが、術後は1ヶ月程度は髪の毛を染められないので、その期間が気になる方は手術前に染めてきていただくとよいかもしれません。

皮膚切開のこだわり

皮膚を切開する部位や方向は、ヘアスタイルや皮膚の厚み、毛根の方向によって患者さんごとに変えています。
場合によっては不思議な曲線・ジグザグを組み合わせることさえあります。

全ての手術はメスで皮膚を切って開始しますが、この基本的な手技である
「メスで皮膚を切る」
というどの外科医も行っている操作でさえ、非常に厳しい姿勢でこだわりをもって行っています。
刺し身やフルーツって、よく切れる包丁で上手に切れば味が変わりますよね。料理人が人生をかけて極める包丁さばきで食事の味が変わる。
外科医のメスさばきで皮膚へのダメージが変わって術後のきれいさが変わるというのは当然のことと言えます。

具体的で技術的な話は長くなるので今回は割愛しますが、多くの外科医とお話ししていて案外軽視されていると感じるこの皮膚切開、これすら職人として極めて行く、というのが私の脳外科医としてのこだわりです。

皮膚縫合のこだわり

脳の手術も一番最後には皮膚を閉じる操作で終わります。
この皮膚縫合、研修医などのビギナーにまかせて術者は立ち去る、ということも多くないかと思いますが、私達はここにも並々ならぬこだわりを持っています。

髪の毛が生えている部分の皮膚を糸で縫うと毛根が傷んでハゲてしまうため、皮膚の裏側の帽状腱膜という硬い膜を吸収される糸で非常に強固に縫い上げ(この糸は皮膚の裏側なので表面には出てきません)、表皮は医療用のホッチキスで毛根に優しく止めるだけで表皮がピッタリ合わさってきれいに治るようにこだわっています。

髪の毛が生えていない部分は、全て皮膚の裏側を吸収される糸で丁寧に縫い上げることで、きれいな仕上がりになり、かつ抜糸が要らないよう工夫しています。

名戸ヶ谷病院脳神経外科では若手脳外科医の手術トレーニングも行っていますが、まずはこの皮膚縫合がパーフェクトにできないうちは脳を触ることはおろか、メスを持つことすら認めていません。
皮膚縫合すらパーフェクトにできない人間に脳を触られたり、皮膚を切られたりしたくないですよね。
皮膚の扱いが上手にできない外科医に脳の緻密な操作はできないと考えています。

手術開始の皮膚切開から手術終了の皮膚縫合まで、本当にすべての操作で最高レベルのクオリティを追求する。
これが私が行う手術の基本的スタイルです。

整容面のご相談

手術前に
「皮膚もきれいに縫ってくれますか?」
「術後って見た目どうなりますか?」
「皮膚縫合は研修医にやらせるんですか?」
のように見た目のことを聞いてくれる患者さんは多くはありません。
脳のことがとっても重要だし、見た目のことってちょっと聞きにくいですよね。

でも前述のとおり、見た目は本当に重要です。
頭頚部の見た目は社会的機能を果たしているので、見た目が悪くなったらそれは機能的に「後遺症」です。
だから術前は見た目のことも気になったら納得行くまで術者に質問をしてください。

名戸ヶ谷病院脳神経外科では、こうした術前の整容面のご相談にも丁寧にご対応します。セカンド・オピニオンももちろんご提供します。

手術のご相談は私の外来にてご対応しております。十分な時間を確保してお話したいので、ご来院の前には一度お電話でご予約ください。
手術のご相談をいただける専門外来の予約専用番号をご用意しています。
【専門外来予約番号: 090-9140-4407 (8:30-17:00)】
脳神経外科の専属チームがご案内致しますので、お気軽にお電話ください。

脳神経外科部長 井上 靖章

社会医療法人社団 蛍水会 名戸ヶ谷病院
Tel: 04-7167-8336(代表)
〒277-0084 千葉県柏市新柏2丁目1−1
https://www.nadogaya-neurosurgery.com/

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