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500円でロックをかましたあの日
500円は子供にとっては大金だ。500円あれば駄菓子屋で豪遊ができる。当時の私にとって、500円を持っている=大人になった気分だった。
小学5年生のころ、たまたまテレビで見た人たちに心を奪われた。超サイヤ人になりたかった私にとって、彼らはまさに理想的だった。
私が「サイヤ人だ!」と思った人たちが誰なのかはすぐに判明した。
X JAPAN
というバンドだった。当時4歳上の従兄弟がバンドにハマっておりすぐに教えてくれた。しかし、バンドの話ができる人はそうそう周りにいない。現代のようにネットが普及して入れば良かったのだが。おかげさまで私と従兄弟は共通の話題ができ、今でもこの類の会話ができる貴重な「友達」である。
そんな彼に色々なバンドを教えてもらったり、CDを聴かせてもらった。
ある日、「オススメがある」と言われた。どんなバンドかと聞くと、「バンドで判断するのはよくないよ」と言われた。当時はそのセリフがカッコイイと思った。
「押さえておいいた方がイイ!」「好きなバンドの曲だけを聴くのもいいけど、いろんな曲聴かないとカッコ悪いよ」などと営業された。何という曲名なのか、どういうジャンルなのか、バンドなのか、そもそもバンドなのか。何もわからないまま営業は続いた。
当時の私にとって、従兄弟はまさに「イケてる兄ちゃん」だったので、どんな安っぽいセリフも「ロックだなぁ」などと思っていた。私が「ロック」という言葉を雑に乱用していた時代でもある。
ただ、1000円ちょっとするCDを買うのは非常に悩みものだった。渋っている私に彼は言った。
「俺としてはたくさんの曲を知って欲しいと思う。だから、手放すのは惜しいけど・・・俺が持っているCDを特別に500円で譲るよ!」
ロックだなぁと感動した私は、すぐにお小遣いで貯めた500円を取りに家に帰った。500円を握り締め、CDを受け取りに戻った。
私が初めて買ったCD、それは「ガラガラヘビがやってくる」である。
衝撃を受けた私を見て、彼は大笑いしながら「毎度あり〜!」と言った。私は、衝撃を受けつつも現物を見ようともせず上手く口車に載せられた自分を「ロックだな」と思って爆笑した。何十年経った今でも後悔はしていない。
あの日以来、「くそっ!」と思う出来事に遭遇しても「ロックかましてんな」程度にしか思わなくなったのでむしろ感謝している。
覚えとけよ。
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