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西灘オーディナリーズ

阪神が弱い。勝率が.067(4月15日現在)って。ピッチャーの打率か。すっかり野球を見なくなったので、一喜一憂することもない。というより、阪神ファンでもないので人ごとなんだけど、これだけ弱いとちょっと心配になる。灘の街も少し静かなような気がする。気のせいかもしれないけど。

灘区は阪神ファンが多い。子どものころまわりが阪神ファンばかりでうんざりしていた。巨人もいっしょで、要するに人気球団が嫌いなだけ。あと、どうしても阪神を地元球団とは思えなかった。どちらかというと大阪のチームという印象で、いくら甲子園が西宮(兵庫県)だといっても、石屋川から東は大阪じゃないか。地元といえば灘区であって、灘区に球団がないんだからしょうがない。小学校4年のとき、ほとんどのこどもが黒と黄色の阪神のキャップをかぶっている中、ロッテのキャップをかぶっていた。別にロッテが好きなわけではなく、なんとなくキャップのデザインで決めた。たぶん灘区で一人だけだったんじゃないか。甲子園に阪神巨人戦を見にいっても一人ロッテ。でもロッテも1年で飽きて5年生で中日、6年生ではクラウンライターライオンズ。そんなチームあったか?と思うかもしれないけど西武ライオンズの前身である。クラウンライターのキャップはよく少年野球チームと間違えられた。もし、灘区に球団があったら間違いなくそのチームのキャップをかぶったのだろうけど。

そのチャンスが1977年にあった。都市対抗野球で神戸製鋼が全国優勝する。当時、神戸製鋼硬式野球部は神戸製鋼所灘浜工場埋め立てのときに土砂を採取した後に造られた丸山グランド(現在の灘丸山公園)で練習していた。このときにプロ化していたら、灘丸山スタジアムが本拠地の灘区球団が誕生していたかもしれない。(そんなことはあり得ない)

もし、灘区に球団ができるとすればチーム名をどうしよう。やっぱり灘は入れたい。しかしナ・ダは2音でどうも収まりが悪いのだ。ヒ・ロ・シ・マやヨ・コ・ハ・マのように4音が基本。そうだ、灘区誕生前の旧村名のニ・シ・ナ・ダがいい。あとタイガースやカープなどの愛称をどうするか。「西灘ジャイアントパンダ」はどうだろう。ユニフォームは白をベースに、袖と足を黒にする。スライディングでお尻が汚れたら王子動物園のタンタンそっくりではないか。でもタンタンが中国に帰ってしまうと間抜けだ。六甲摩耶のイノシシにちなんで「西灘ボアーズ」はどうか。boarは英語でイノシシ。猪突猛進のヘッドスライディングが真骨頂。でも餌付けされたら最下位決定。

最近は動物名ではなくブルーウェーブやベイスターズ、マリーンズなど地域特性を表現したものもある。灘区の特性。うーん。そうだ、「ふつう」はどうだろう。これといった特徴のないふつうの街。ふつうの人がふつうに暮らす街。あつくるしい熱量もなく、かといって我関せずで冷え切っているわけではなく、ぬるま湯のようなふつうさ。でもその「ふつう」がその地域固有の「らしさ」とつながると世界中のどこにもない「らしさ」が立ち上がってくる。
「西灘オーディナリーズ」(ordinary=普通)。なんか、かっこよくない?
決して派手なプレーやパフォーマンスはないけど、あたりまえのことを淡々とこなす。バントはふつうに決める、佐々木朗希ばりの豪速球ピッチャーはいないけどふつうに打たせて取る。リリーフカーはママチャリがいい。監督もふつうのおっさん、応援もふつう、背番号もマジックで手書き(それは異常か)。ともかくすべてがふつう。地味だけど滋味あふれる玄人好みのいいチームじゃないか。

そんな灘区のordinary(ふつう)を紹介する玄人好みのフォトブック「なだだね」が創刊しました。年に1回「ふつうの風景」をテーマに発行します。4000部限定、なくなり次第終了です。配布場所はこちらでご確認ください。



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