【鎌倉昔噺01】とりとめのないお話【実話】
今でも脳みその端っこに、喉に刺さった小骨のように心に引っかかった記憶がある。
もう二十年以上前、僕が七里ガ浜の幼稚園に通っていたころの話。
当時、僕のことをずっと追いかけてくれていた女の子がいた。苗字は覚えていない。れいなちゃん、という名前だけが記憶に残っている。
腰までストンと落ちた、絹糸のようなれいなちゃんの髪は、日に当たると少しだけ茶色く見えた。
「りゅうくん、りゅうくん、ちゅーしよう、けっこんしよう」
毎日毎日、追いかけてくる彼女から、僕は逃げていた。
白黒のストラ