経営者の憂鬱(吉野家、引っ越しのサカイ)

■下品な表現

今日(20200/5/6)さかのぼることひと月になるだろうか。吉野家の期待されている取締役が、下品この上ない表現でマーケティング講座で発言し解雇された。

論点はいくつもあるのだろうが、そのうちの一つに「プロ経営者」という視点での記事がある。

〇吉野家の常務解任騒動「プロ経営者」3つのリスク
コンプライアンス教育も大事だがここも外せない
2022/04/21

吉野家の伊東正明常務取締役企画本部長が早稲田大学で行った社会人セミナーでの不適切発言で解任されました。女性顧客を取り込むマーケティング施策について「生娘をシャブ漬け戦略」とネーミングしたことがSNSで拡散された件で、吉野家も「人権・ジェンダー問題の観点からとうてい許容することのできない」問題だとして迅速に処分に及んだものです。

プロ経営者というものは日本人から見ると魅力的な人物です。伊東氏の場合、華々しい実績がありました。同時に非常に科学的・論理的にマーケティング戦略を構築する手腕をお持ちです。

https://toyokeizai.net/articles/-/583661?page=2 から引用

この記事の中では「プロ経営者」という言葉を用いているが、論点がずれている。
そもそも、経営者として結果を出せるかどうかで優秀かそうでないかの評価はあったとしても、経営者でプロでない人はいない。

経営者として招聘することを否定しないが、経営者として云々の前に人としてどうかの判断が必要だろう。

下品な人間は何処まで行っても下品だ。人を貶める発言をする時点で排除されるのは当然であり、その予兆を見いだせない組織文化も問題だろう。

■一発退場すればいいのかという問題

企業理念を世俗的にするということはなく、それなりに社会に誇れるものにしていると思う。しかし、いくら経営者が声高に言おうが、現場が守らなければいかんとも仕方がない。

象徴的な記事を二つほど挙げておく。

〇吉野家、外国籍理由に説明会排除 予約の学生、会社側が勝手に判断

吉野家ホールディングス(HD)は6日、牛丼チェーン吉野家の採用説明会に予約した大学生に対して、外国籍であると勝手に判断し、参加を拒否していたと明らかにした。「ビザの取得が非常に困難」と説明している。国籍を理由に排除した差別的扱いだとして、SNSでは吉野家の対応に批判が集まっている。

吉野家は採用サイトに「組織の活性化を目的に、外国籍社員の積極的な登用を続けています」と明記していた。対外的なアピールと実際の採用活動が異なっていなかったかも説明が必要になりそうだ。参加を拒否された大学生とみられるSNSの投稿によると、大学生は日本国籍だという。

https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%e5%90%89%e9%87%8e%e5%ae%b6-%e5%a4%96%e5%9b%bd%e7%b1%8d%e7%90%86%e7%94%b1%e3%81%ab%e8%aa%ac%e6%98%8e%e4%bc%9a%e6%8e%92%e9%99%a4-%e4%ba%88%e7%b4%84%e3%81%ae%e5%ad%a6%e7%94%9f-%e4%bc%9a%e7%a4%be%e5%81%b4%e3%81%8c%e5%8b%9d%e6%89%8b%e3%81%ab%e5%88%a4%e6%96%ad/ar-AAWZfbG

〇【独自】集合住宅のゴミ捨て場に430人分の住所、電話番号、家財リスト…「引越のサカイ」社員が家に持ち帰りポイッ
2022年5月5日

引っ越し大手のサカイ引越センター(堺市)の利用者の住所や電話番号などの個人情報延べ約430人分が3月、川崎市宮前区の集合住宅のごみ捨て場に出されていたことが、関係者への取材で分かった。

同社は本紙の取材に、この事実を把握していると認めた。従業員1人が本来シュレッダー処分すべき書類を自宅へ持ち帰り、一般ごみとして捨てていたという。

「個人情報の記載書類については、社内マニュアルに基づき、シュレッダーなどをして持ち帰らないように指導教育を行っている」と説明。外部からの通報を受けて回収したといい、「詳細は調査中だが、お客さまへ真摯に対応を行ってまいります」と回答した。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/175665

■会社を責めるのはたやすいのだが

こうした記事に固有の傾向なのだが、「会社は何やっているのだ」という非難が先行する。確かに企業の責任はあるのだが、末端の社員が起こす事件を防ぐのは難しい。製造プロセスや営業プロセスなど、仕組化しているところは対処しようがあるのだが、それでもすべてを機械化できない。

上記の記事も、結局社員の自覚がしっかりしないといけないし、社員への教育しかない。
経営者としてできるのは、社員への不断のメッセージングしかない。

とはいえ、いわゆる上意下達のパワーマネジメントの人を従わせる管理では、社員の行動の優先順位は「お金」になりかねない。「正義」を優先するのであれば、社員が「正義」を優先できるようにエンパワーメントしなければならない。

もうけを優先する発言をする経営層がいる会社に未来があるかは考えもんだ。

<閑話休題>

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