スペース戦略が必要な理由

■旧態依然としたオフィスのレイアウト

リモートワークが進む中で、フリーアクセスが導入されていながらデスクの配置が旧態依然とした島形レイアウトの事務所を見かける。

日本の事務所のほとんどは管理職を端に置き、そこに向き合うように机を配置するレイアウトをとっている。こうしたレイアウトは当たり前のようにに感じるが問題も指摘されている。

○日本式「島型」のオフィスレイアウトは何が問題か

島型のメリットは、コミュニケーションが取りやすいことや、スペース効率が良いこと、デスクが統一されているため移動がしやすいこと等が挙げられます。
また、デスクの角同士が合わさるため電話機の台数が少なくて済むなど、コスト削減も実現できるバランスの取れたオフィスレイアウトと言えるでしょう。
そのため日本では、約9割の組織がオフィスレイアウトに島型を採用しています。
しかし島型というオフィスレイアウトには、他の島との情報交換がしにくいという問題もあります。
同じ島のメンバー同士はコミュニケーションが取りやすいのですが、その半面、閉鎖的で排他的な空間になりがちです。
そのため、組織全体としての情報流通が悪くなり、企業全体の意思決定が遅くなる可能性があります。
また、島型にすると他人の視線が気になって集中できず、仕事の効率が落ちるという人もいるでしょう。
顔を上げた瞬間に同僚や上司と目が合ってしまい、気まずさを感じる人は少なくありません。
そのため、集中を妨げる他人の視線をオン/オフできるオフィスレイアウトが大切になってきます。

https://hitoba-office.com/cpu/column/theme01/2413.html

■様々なレイアウト

「集中を妨げる他人の視線をオン/オフできるオフィスレイアウト」という側面では、キュービクル型というレイアウトもある。

○キュービクル型レイアウトのメリット・デメリット
2014/8/21

キュービクル型レイアウトとは、デスクの周囲をパーテーションで区切り、個別のワークスペースをつくりあげるスタイルを指し、ブース型レイアウトともいわれています。
パーテーションの色や材質、高さなどによってオフィス全体に機能性とデザイン性を追加できることが魅力のひとつです。
個人の多様な発想を尊重するアメリカのオフィスでは、キュービクル型レイアウトが主流です。まるでマンションの一室のような広々としたワークスペースを与えられ「自分だけの空間」に勤務するワーカーも少なくありません。
日本では、部署ごとの連携やコミュニケーション、省スペース性、さらには業務監視体制を重視した島型レイアウトを採用するオフィスがいまだ多数を占めています。しかし、近年では様々なレイアウトを採用したオフィスも増えてきました。なかでもキュービクル型レイアウトは、独創的な発想を生む可能性の高いレイアウトとして注目を集めています。

https://office-layout.jp/column/layout-example/93/

とはいえ、現実的にこうした個別ブース型の事務所というのは見たことが無い。
日本のビジネス慣行にはなかなかあわないのだろう。

■スペース戦略の進化

しかし、ここ一、二年での環境変化はこうした事務所内スペースについての考え方も大きく変化させてしまうかもしれない。
特に、常時、半分の人員が出社すれば良いという環境になったときに、常に半分のスペースは利用されない佐あれないことになる。必然的に常設の机を半分にして、アクセスフリーの環境が整備されるかもしれない。

机を自由に移動させるスペース戦略が前面に出てくるかもしれない。

奇想天外ではあるが、下記の様な取り組みを馬鹿にしてはならない。

○次世代オフィス環境の整備--新しい働き方に向けたHootSuiteの取り組み
2022-05-11

HootSuiteは多くの企業と同様に、2020年3月にCOVID-19のパンデミックが発生したとき、職場の閉鎖を余儀なくされた。同ソーシャルメディア企業は48時間のうちに世界中の14のオフィスをすべて閉鎖し、1200人以上の従業員を在宅勤務に切り替えた。

長期的なリモートワークにより、従業員の関与とつながりの維持など、さまざまな課題が生じる中で、HootSuiteはこの機会を活かして、オフィススペースの使い方を見直した。さらに重要なことに、再開後のオフィスから引き続き価値を得るにはどうすればいいか、と従業員に尋ねた。

その後、HootSuiteは8カ月をかけてバンクーバー本社を改装した。何列ものワークステーションが撤去され、居心地の良い防音ブース、ラウンジエリア、快適な椅子が設置された。ベルベットのカーテン付きの新しい「ウェルネスルーム」も用意され、子どもの世話をする母親や勤務中にちょっと休憩したい従業員が利用できるようになっている。頭と体を同時に動かしたい従業員は、HootSuiteの新しいデスク付きフィットネスバイクやデスク付きトレッドミルを使うことができる。

https://japan.zdnet.com/article/35187233/

■新たなビジネスモデル

こうした動きに呼応するようにテクノロジーを駆使した事業の立ち上げを模索する動きがある。

○イトーキがGoogle Cloudとスマートオフィス開発
2022.04.20

イトーキは2022年4月22日、スマートオフィスの実現に向けた取り組みを強化するため、グーグル・クラウド・ジャパンとのJBP(ジョイントビジネスプラン)に合意したと発表した。

オフィス什器のIoT化を柱とするスマートオフィスコンセプトを実現するための新商品開発や、Google CloudのAI製品を使ったデータ分析・活用、および両社間の人材交流を行う。

スマートオフィス製品の開発については、映像合成技術を活用して、直感的に使える高機能なパーソナルリモートミーティング環境の構築を目指すという。

データの分析・活用については、オフィス什器から生成されるデータやこれまでイトーキが蓄積してきたオフィス空間情報等をGoogle Cloud AI製品を用いて分析。よりデータドリブンなサービスへの昇華を目指すとしている。

https://businessnetwork.jp/Detail/tabid/65/artid/9074/Default.aspx

イトーキは家具什器を取り扱う会社であるが、その先のビジネスモデルを考えていることがわかる。

その背景には、もちろんコロナによるリモートワークもあるだろうが「働き方の多様性の多様化」もある。
下記の様なニュースについても配慮しておきたい。

○イトーキが提案するハイブリッドワークとは ‐ オルガテック東京2022
2022/04/27

オフィス家具を取り扱うイトーキは会場中央にブースを構え、最先端のオフィス家具やITを活用した「スマートオフィスツール」などを紹介している。その中でも、テレワーカーとオフィスワーカーとのコミュニケーションを促進するサービス、IoTセンサーを活用した位置情報提供サービス、個人や組織のパフォーマンス向上を支援するアンケートサービスの3つが目を引いていた。

https://news.mynavi.jp/techplus/article/20220427-2331616/

■準備を進めよう

とはいえ、多くの企業では労働基準法への対応や、社内の多様性に応じた労働環境の整備が十分ではない事例もうかがえる。そうしたなかで、下記の様な記事は参考になるだろう。

○ポストコロナ、働き方は「ハイブリッドワーク」に――新たなルール作りが急務
2022-4-29

新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、企業も従業員も働き方について考える機会が多くなった。緊急事態宣言の発出もあり、日本でもリモートワークにも注目が集まったが、世界的な動きとしては、リモートワークから、リモートワークとオフィスワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」へシフトしてきているという。

また、Microsoft 365の履歴データから、会議やチャットの時間が増えていることが分かった。実際、2020年3月と比べると、会議に費やされる時間が平均で252%も増加していた。残業も28%、休日出勤は14%増えていた。働き方に柔軟性を持たせるのは大切だが、「常時オン」である必要はない。ランチミーティングは減ったようだが、年中無休で働くのを避けるため、管理者がルールを決めて、しっかり境界線を引くことが重要だ。

現在ハイブリッドワークをしている従業員の38%は、職場にいつ、そしてなぜ行くのか知ることが課題だと考えているが、ハイブリッドワークに関する新しい取り決めを用意している企業は28%しかいなかった。また、打ち合わせに関しては、43%のリモートワーカーが参加できていないと感じており、企業側も全員が参加できるようなハイブリッド会議のルールを作っていたのはわずか27%だった。

https://engineer.fabcross.jp/archeive/220429_hybrid-work.html

■戦略的な対応

刹那的に近未来的なオフィスにすることは避けた方が良い。
人々にどんな働き方をして欲しいのかを考える際に、彼らが会社に何をもたらすのかを優先してはならない。そんなことをすれば、彼らは会社に奉仕する奴隷では無いかと疑念を持ち会社を去って行ってしまうかもしれない。

スペース戦略は彼らに幸福をもたらす福利厚生あるいは報酬の一環として考えるべきである。どのためには、特定の部門(例えば総務)だけでことをあたらしてはならない。現場や、その他の間接部門の多様な考え方を収集することを薦める。

単にオフィスの改築では無い。事業戦略、経営戦略の中に位置づけなければならない。

<閑話休題>

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