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規格要求事項の私的解釈:「4.1 組織およびその状況の理解」(2024年問題と法改正の影響)

規格要求事項の私的解釈:「4.1 組織およびその状況の理解」(2024年問題と法改正の影響)

■規格要求事項の欠陥

4.1 組織及びその状況の理解
組織は,組織の目的及び戦略的な方向性に関連し,かつ,その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える,外部及び内部の課題を明確にしなければならない。
組織は,これらの外部及び内部の課題に関する情報を監視し,レビューしなければならない。

これが規格要求事項に書かれていることの全部である。主たる要求は「明確」にすることだけである。
なぜ明確にしなければならないかは記載されていない。
明確にしたとですべきことの具体的なことも記載はない。

したがって、この規格要求事項だけを眺めていても「パフォーマンス全体を改善し,持続可能な発展への取組みのための安定した基盤」はできあがらない。

■目の前の現実に目を向ける(2024年問題)

この規格要求事項を満たすために「SWOT分析」が引き合いに出されるが、そもそも規格要求事項ではそんなことは求めていない。こうした要求事項については、
①なぜこうした取り組みをしないと困るのか
②明らかにしたとしてその後に何をするのか
といった文脈を形成しなければ何も解決しない。

それは一般論ではなく具体的な出来事に焦点を挙げなければならない。
今回は事例として「2024年問題」を取り上げる。

2024年問題は一言で言えば「残業規制」問題であるが、付随して「プロセス改善」にも目が向けられ、労働環境の改善なども視野に入っている。その一例が運送業や物流に関する法律の改善である。

以前から、物流に関しては「荷待ち」が効率の障害であり、これにより長距離トラックの運転手の長時間労働を引き起こしているばかりではなく、彼らに適正な賃金が払われていないのではという懸念があった。

これに対しての法律の切り込みであろう。

○大手荷主に罰金100万円 荷待ち削減対策不十分で―物流法改正案
2024年02月06日

 改正案では、大手を対象に、荷待ちや積み下ろし作業にかかる時間の短縮に向けた中長期計画を作成した上で、取り組み状況を国に毎年報告することを義務化。計画に基づく対策が不十分の場合、国が是正を勧告、命令し、違反すれば最大100万円の罰金を科す。計画が未提出の場合などの罰金は最大50万円。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2024020601142

そして、荷待ち時間を誰が負担するのかと云えば、おそらくは今までは「運転手」であったものが、他の誰かが負担させるという方向性で荷待ち時間の短縮を狙っているのだろう。

○2024年の“大改正”「労働時間短縮」でドライバーの給料はどうなる? 「休憩時間」分を請求できる可能性も
2024年01月24日

なぜ改正が行われたか
ドライバーの長時間労働を是正するためです。道路貨物運送業の長時間労働は顕著で、脳・心臓疾患による労災支給決定件数は、すべての業種のなかで道路貨物運送業が最多となっていました。そのような現状を改善すべく改正が行われました。

https://www.ben54.jp/news/843

■プロセス改善が求められる

さて、こうした法改正などを含めて「4.1 組織およびその状況の理解」で取り扱うべき課題であり、それを怠れば法令違反のリスクが発生する。

○ヤマトなど2社に初勧告 「トラックGメン」で監視強化―国交省
2024年01月26日

 国土交通省は26日、トラック運転手に長時間の荷待ちをさせるなどの疑いがあったとして、貨物自動車運送事業法に基づき、ヤマト運輸など2社に改善を勧告した。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2024012601155&g=eco

これを運送会社だけの問題だと思わないことである。

もし自社に製品の搬出部門があれば「荷待ち」を少なくするための枠組みを構築するべきである。たとえば、受け入れるトラックなどの駐車スペースの確保。搬出する製品と使用する運送業者・トラックの効率的な管理、待ち時間を減らすための自動搬出機械(コンベアなど自動倉庫で使っているシステム)の整備などが考えられる。

当然、生産管理・在庫管理システムなどとの連動も必要であり、設備投資のための財務計画とも無縁ではない。

箇条4.1は一部の経営層だけが行なうだけでは不十分である。組織全体伝取り組みであるとの認識が必要である。それは、会社の意思決定システム屋ガバナンスなどトも緊密に関わる。

表面だけ規格要求事項を満たすことでは何も解決しない。
もちろん不十分だと云うことで不適合にはしない。
それがこの認証制度の怖いところである。

(2024/02/11)

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