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戦略人事:置き去りなる「ふさわしい仕事」(賃金アップの影で思うこと)

ちょっと長いよ

■賃金アップをする企業の思惑

 2023年春の春闘は賃金アップにわいている。

○春闘 パナは初の満額回答 シャープも大幅
2023.03.15

 関西の大企業も例年にない賃上げに踏み切ります。

 電機業界では基本給を引き上げるベースアップ(ベア)について、各社の労働組合が前年の2倍以上となる月額7000円を要求する中、「パナソニック」は組合の要求通りとなる初の満額回答で妥結しました。今回が過去最大の上げ幅です。

 また、「シャープ」も7000円相当の賃金水準の改善をし、会社の将来を担う人材の確保や物価上昇の影響を踏まえ、30代前半までの若手の月給を10%程度引き上げ。初任給も組合要求額を上回るアップとなりました。

https://www.ytv.co.jp/press/kansai/189575.html

 パナソニックは「3月期の連結決算は原材料価格の高騰などで2度の下方修正を強いられましたが、急激な物価上昇を受け、社員への投資を重視したということです。」

 社員への投資とは何を指すのかが分からないが、これまで投資はしてこなかったのだと揶揄したい気持ちになる。
 では、他の企業はどんな思惑を表明しているのだろうか。眺めてみる。

●優秀な人材の確保

○ゼンショーHD「人への投資」過去最大のベア 正社員給与を平均9.5%引き上げ、大卒初任給は25万円
2023-03-15

 外食大手のゼンショーホールディングスは15日、2023年春季労使交渉が妥結したと発表した。4月1日から正社員の給与を平均9.5%引き上げ、大卒の初任給は25万円とするとした。

 春闘妥結を受け、「当社はさらなるグローバル展開に向けて、国内外の優秀な人材を確保し、付加価値を生み出す資産である『人への投資』を通じて持続的かつ加速度的に企業を成長させるため、大幅に給与を引き上げることを決定しました」と説明した。

https://www.oricon.co.jp/news/2271635/full/

○鹿児島銀行、初任給を最大3.2万円引き上げ 4月から、優秀な人材獲得が狙い
2023/03/15

 鹿児島銀行(本店・鹿児島市)は14日、初任給を4月1日から8000円~3万2000円引き上げると発表した

改定は2015年以来。物価上昇への対応や、採用競争が激化する中で優秀な人材の確保につなげる狙い。

https://373news.com/_news/storyid/172113/

○ニトリ、若手社員は最大5.6万円月給増 20年連続で総合職ベースアップを実施 パート・アルバイトも時給引上げ
2023.3.15

ニトリは、これまでも経済動向に左右されることなくベースアップを実施してきたが、今年度、ニトリの総合職社員について20年連続となるベースアップの実施を決定。また、パート・アルバイト社員は10年連続となる制度昇給以外の時給引上げを決定しているという。

なお、昨年より従業員の働き方について見直しをおこなうとともに、各種手当についても改定を実施。その結果、ニトリ総合職社員の若手を中心に、月例給が最大で5.6万円上昇するなど大幅な給与水準の改定へと繋がっており、優秀な人材確保に寄与するものと考えているとのことだ。

https://ampmedia.jp/2023/03/15/nitori-base-up/

○すかいらーくHD、過去10年で最大の賃上げ ベア満額回答で給与一人あたり4.38%増
2023-03-16

外食大手のすかいらーくホールディングスは16日、2023年春季交渉が妥結したと発表。組合要求に満額回答し、賃上げ総額4.38%で合意した。

 同社は「人財こそが当社の成長における最大の財産であるとの考えのもと、働きやすい環境づくりへの投資を積極的に行っています」とし、「このたびの春季交渉においては、従業員およびそのご家族が少しでも安心して生活いただけるよう、満額回答にて合意いたしました」と説明した。

https://www.oricon.co.jp/news/2271806/full/

●労働意欲の向上

○ソフトバンク、新卒を含む社員の5.4%賃上げを最終決定-4月から
2023年3月15日

 国内通信大手のソフトバンクは、新卒社員の初任給を含め4月から5.4%の賃上げを実施することを正式に決定した。物価上昇などを考慮した。
 昇給は新卒も対象となる。4月入社社員の初任給はこれまで総合職大卒で24万7000円、大学院修士で26万8200円から、博士修了が27万8800円だった。

  ソフトバンクの広報担当者はブルームバーグの取材に対し、上昇幅は一時金、定期昇給、ベースアップの合計で、対象者と金額の内訳は非開示だと述べた。また賃上げの理由については、昨今の物価高に加え、社員の労働意欲を一層高めるためだという。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-03-15/RRJFUWT1UM0W01

●労働環境の改善

○OKI、春闘で満額回答--競争力強化に向け大卒初任給を2万5000円アップ
2023-03-15

 賃金水準の改善については、要求額の7000円に対して満額の7000円で回答した。
 初任給に関しては、若手社員の早期立ち上げや活躍への期待に加え、採用競争力の強化に向けて、修士課程修了・大学卒の初任給は「現行比5000円以上」の要求額を上回る2万5000円増で回答した。これにより、初任給は修士課程修了が27万4000円、大学卒が25万円となる。

 OKIは人材について「グループが社会環境の変化に対応し、持続的に発展する上で、最も重要な経営資源の一つ。今後も多様な従業員が能力を最大限に発揮できる環境の整備を進め、次期中期経営計画の方向性として掲げた『成長へのかじ切り』『環境変化への対応力』を実現し、持続的成長を確実なものとする」と説明している。

https://japan.zdnet.com/article/35201320/

○シャープ、2023年度の初任給業界最高水準へと引き上げ--「HITOを活かす経営」方針堅持
2023年03月16日

 電機大手では、賃金全体を底上げするベア(ベースアップ)において、満額回答が相次いでおり、2022年度に赤字が見込まれるシャープでも、シャープ労働組合要求のプラス7000円を満たす回答をしている。また、初任給については、シャープ労働組合の要求額以上に引き上げており、大学院(Master)卒は、27万円(引き上げ額は1万3000円)、大卒は24万1500円(同1万円)、高卒は17万8000円(同5000円)としている。

 呉社長兼CEOは、「HITOを活かす経営に向けて、等級体系の見直しや社内公募制度の導入、研修プログラムの拡充など、さまざまな施策を通じて『若くて活気溢れる企業風土の醸成』に取り組むことで、持続的成長に向けた経営基盤の構築を進めてきた」と前置きし、「シャープを取り巻く足元の事業環境は非常に厳しく、2022年度の業績は赤字となる見通しであり、2023年度も、厳しさがより一層増すことが予想される。しかし、私は、こうした時においても『HITOを活かす経営』の方針を堅持し、従業員が安心して業務に励むことができる環境を作り、優秀な人材がシャープで働きたい、働き続けたいと思える環境を構築していくこと大切であり、この難局を乗り越える上で、極めて重要であると考えている」と語った。

https://japan.cnet.com/article/35201371/

■無視されるモチベーションの3要素

 モチベーションの3要素とは
1.ふさわしい仕事
2.ふさわしい環境
3.ふさわしい報酬
であると言われている。

 最初の出発点は、彼らが「うん、この仕事ならやってみたい」という動機付けとなる仕事の魅力度である。もちろん、「お金をもらえるなら何でもやります」を否定しないが、彼らはお金に見合った仕事しかしないだろう。価値は二の次になる。
 もし現存する社員がそうであるなら、Inputを増やすという投資は有効だろう。なぜなら今まで投資してこなかったのだから。

 ふさわしい環境とは、活動に足りる経営資源が提供されることと、責任と権限、コミュニケーションなどのし支援などが適切に行なわれることだ。徒手空拳でたたけと言われても困る。この環境の中には給与は含まれない。資金を使うための権限が含まれる。

 報酬は行なった仕事に対するものである。昨年までと同じ仕事に対して賃金を上げると言うことは、同じ仕事でもかまわないと云っているようなものだ。

 こうした目で見ると、上記の思惑はいずれも的外れなことが分かる。

■誰に対するメッセージなのか

 優秀な人材が欲しいと言うが、これはこれから入ってくる人たちのことなのだろうか。
 誰に対するメッセージなのかが分からない。
 経営者は説明責任がある。

 今の社員の皆さんに
 「すみません。いままで隠していたお金があります。本来は皆さんに渡すべきものでした。反省して賃金に反映させますので会社を助けてください」

 これから会社に来てくれそうな方へ
 「安心してください。世間並みの賃金はお約束します。会社の業績が上がったら、それにふさわしい賃金を用意します。だから来てください」

 ぐらいの本音が聴きたい。

<閑話休題>

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