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システム思考:安易な解決策は問題を深刻化させる(三菱電機の姿勢)

■不正の本質

過失ではなく故意に不正を働いていると言うことに対して再発防止策は難しい。
なぜなら、それは「意識」の世界のことだからである。

悪いと思っていないのであれば、それ自体を変えなければ再発は防止されない。

○三菱電機の子会社でも不正 5社12件、契約と違う材料で生産も
2023年4月14日

 三菱電機の製品をめぐる不正問題で、同社は14日、子会社への調査で計5社12件の不正が新たに見つかったと発表した。2021年6月に発覚した不正は、本体とあわせて200件を超えた。これで一連の調査に区切りをつける考えだが、今後は「品質に問題がなければよい」との「正当化」(外部調査委員会)に陥りがちな姿勢をどう改めていくのかが問われる。

https://www.asahi.com/articles/ASR4G43CNR4GULFA00T.html?ref=smartnews

○三菱電機、新たに12件の品質不正 子会社5社で、契約と異なる材料使用など
2023年04月14日

 三菱電機は14日、一連の品質不正問題で、子会社5社で新たに12件の不適切行為が確認されたと発表した。契約とは異なる材料で製品を造ったり、顧客に事前申告していた内容と異なる試験をしたりしていた。同社は「いずれも顧客との契約などの問題で、安全性への影響はない」と説明している。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2023041400558&g=eco

○三菱電機が子会社の品質不正調査を完了、41社中5社12件は多いのか少ないのか
品質不正問題
三菱電機が子会社における品質不適切行為に関する調査結果を発表。5社で12件の不適切行為が確認された。
2023年04月17

 三菱電機は2023年4月14日、同社の子会社における品質不適切行為に関する調査結果を発表した。調査対象となったのは、国内関係会社のうち出資比率50%超で、かつ品質不適切行為が発生した三菱電機の製作所と関連があり、開発/設計/製造/据付/保守事業を営む41社である。これらのうち5社で12件の不適切行為が確認された。いずれも顧客などとの契約に関わる問題で、安全性への影響はなく、製品に関わる法令違反、規格違反も確認されなかったという。

https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2304/17/news054.html

上記に共通するのは「品質に問題なければ顧客要求事項の違反はたいしたことはなく、記録を改竄してばれないようにすることは問題視されるべきことではない」というメンタルモデルが見え隠れする。

メンタルモデルとは、システム思考を理解する上での重要な概念であり、「世の中はこういうものだという心に染みついたイメージ」であり、容易に変えられない一人ひとりの価値観になる。

「理解すべき最も重要な点は、メンタルモデルが現に作用している(私たちの行動を決定している)ことだ。「人は信頼できない」と思っている人は「人は信頼できる」と思っている人と同じ行動はしない」(学習する組織 ピーターセンゲ より)

なので、三菱電機が最初にすべきことは「お金は信頼に優先する」というメンタルモデルを「信頼はお金に優先する」というメンタルモデルに変えることである。これが最終的な目標になるだろう。

■時間差のある二つの対策と三大無策

メンタルモデルを変えるのは容易ではない。彼らが「お金は信頼に優先する」と思ってしまうのは、企業文化がそれを助長する風土であるからだ。従って、企業理念をもう一度確認して、個人個人の理念の修正と、それを組織として定着させる取り組みが必要になる。これは、経営者と現場との長い対話が求められ、その効果はすぐに出てこない。

一方、仮にそのメンタルモデルの修正が十分でないとしても、業務プロセスの「自動化」を進めることで人為的な不正を防ぐことも可能であり、こちらは短期間で成果が出てくる。欠点は「投資」が必要であり、「お金が品質に優先する」企業文化の会社では、これを取らない傾向が強い。

しかし、多くの企業が真っ先に飛びつく再発防止策がある。
①(再)教育
②周知徹底
③管理強化
である。
こうした対策が効果が出ることはない。なぜなら、どんな企業であってもすでに行なっている活動のはずで、それが効果がないから事故が起きている。

■学習障害の組織

 なぜこんな施策しか出てこないのか。「私たちは皆、問題に対して見慣れた解決策を当てはめることに安らぎを覚え、自分が最もよく知っていることに固執するしている」と、先の「学習する組織」の「安易な出口はたいてい元の場所への入り口に通じる」の一節に出てくる。学習しない組織の一つの側面である。

○「不正が必要ない仕組みを構築」 三菱電機・漆間社長が経営戦略説明会で表明
2023/5/29

三菱電機の漆間啓社長は29日に開いた経営戦略のオンライン説明会で、一連の品質不正問題に関し「現場が品質不適切行為を起こす必要がない仕組みを構築していきたい」と述べた。

https://www.sankei.com/article/20230529-YMNAQDDVDNN5HNNKE5ERE3QPOE/?utm_medium=app&utm_source=smartnews&utm_campaign=ios

いったい「現場が品質不適切行為を起こす必要がない仕組み」とは何であろう?
「必要」だから「品質不適切行為を起こす」としたら、その必要とは「お金がすべてに優先する」というメンタルモデルナのだろうか。

しかし、実際に三菱電機が提示する「当社における品質不適切行為に関する原因究明及び再発防止等について(第3報) 」を見ても
・品質風土改革
・組織風土改革
・ガバナンス改革
であり、管理強化の側面しか出てこない。
https://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2022/pdf/0525-a1.pdf

典型的な「考えない組織」であり、三菱グループから不正がなくならない原因ではないかと感じてしまう。

<閑話休題>

(その他の資料)

○「循環型デジタル・エンジニアリング」に勝負を懸ける三菱電機が進める2つのDX
2023年05月31日
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2305/31/news102.html

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