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人事部の憂鬱(魅力が無ければインターンにもきてくれない)

■辞めることを前提としている応募者

統計データを見ると、3年内離職率はすっと変わっていない。すなわち、大卒の3割は3年以内に転職・離職している。もちろん、業種や会社毎に偏りはあるものの、人手不足は各会社共通の悩みだろう。

会社を辞めるつもりで入社してくる人間はいないだろうという幻想も怪しくなってきた。

○新入社員の約半数が「10年以内」に退職予定…働き続けない理由に男女で“明確な差”も? 理由を調査した企業に聞いた
2022年8月29日

マイナビが運営する総合転職情報サイト「マイナビ転職」は8月4日、「新入社員の意識調査(2022年)」を発表。2022年に新卒入社した男女の新入社員800人を対象に、インターネット調査を実施していた。

この調査で、「今の会社であと何年ぐらい働くと思いますか?」と尋ねたところ、28.3%が「3年以内に退職予定」と回答し、「10年以内に退職予定」は51.0%となった。

https://www.fnn.jp/articles/CX/408340

これも統計データになるので素直に見る必要は無いにしても、新入社員に「今の会社であと何年ぐらい働くと思いますか?」と質問することが当然のようになっていることが驚かされる。

内定辞退どころか早期退職も心配しなくてはいけないのかと同情する・

■会社の魅力

年齢構成のゆがみや、会社の成長の鈍化はポスト不足を引き起こし「課長にすらなれない」という経済雑誌での記事を見て、これではキャリア志向の人は別のルートを探さざるを得ないと感じる。

就職に求めるものが安定であれば、有名企業・大企業になるだろうし、実際応募者も多いのだと思う。しかし、だからといって争奪戦がないわけではない。

○「もはや学生が憧れる企業ではない」 NTT東日本の危機感が生んだ”実務型インターン”
2022年09月01

「学生の憧れの企業から年々離れていっている」――NTT東日本でインターンシップの設計を担当する総務人事部 人事第二部門 海外研修担当の伊藤信吾氏(取材当時)は自社の採用力低下に対する懸念を示した。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2209/01/news017.html#utm_medium=email_html&utm_source=bz_tsushin&utm_campaign=bz2022%2F09%2F01

この中で、危機意識として下記が記載されている。

「就活生にあたる00年前後生まれの24卒や25卒の学生は、いわゆる「Z世代」と呼ばれる。Z世代を研究する電通若者研究部によると、「これまでの当たり前が通用しない、正解のない時代に育った世代」だという。先行きが見えない時代を生きてきた彼らは、会社に人生を預ける気なんてさらさらない。ファーストキャリアですら転職前提で判断する」

インターン制度は、就活生にとっては就職後の不安を除き、企業側としては「囲い込み」に使える。それとなく「内定」を匂わせることで自社に縛り付けることも可能だろう。

しかし、安定を求める学生には魅力的であっても、それが必ずしも「会社を背負ってくれる次世代人材」とは限らない。キャリアアップが望めない企業には、インターンにすら来ないかもしれない。

■人材が流動化しない恐怖

有効求人倍率に関する二つの記事が目についた。

○“行動制限なし”が影響か 7月の有効求人倍率1.29倍 7カ月連続の上昇
2022/08/30

厚生労働省によりますと、仕事を求める求職者1人あたりの求人の数を示す有効求人倍率は、7月は前の月より0.02ポイント上昇して1.29倍でした。
 有効求人倍率が前の月を上回るのは7カ月連続です。
 おととし4月以降では初めて、すべての都道府県で1倍を超えました。

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000266598.html

宿泊業、飲食業などマンパワーに頼る業態ではここに来て、時給を上げても人が集まらないと聞く。トラック運転手なども不足しているらしい。

彼らは一体どこに行ったのだろうか。より厚遇のところに集中しているのだろうか。だとしたら、そもそもトータルの人材が足りないと言うことになる。

一方で、かつて「企業内失業者」という言葉に代表されるように生産に寄与できない人々が話題になったことを思い出す。彼らには、活躍できる場を用意しなくてはならず、それができない企業は三流だと思っている。

とはいえ、下記の記事に素直にイエスとも言えない。

○有効求人倍率7ヵ月連続上昇、労働移動停滞で人手不足が急速に進む
2022.09.02

日本の場合、景気変動の中で本来は淘汰されるべき企業に雇用が張り付き、ポストコロナ時代に大きく成長しているIT産業などで、猛烈な人手不足が生じている。同じ国内に人員余剰と人手不足が混在している不思議な状態に陥っている。「助成金」という政府のお金が労働市場を歪めていると言っていいだろう。

https://gendai.media/articles/-/99358

黙って放り出せと言っているのではない。職を失った人たちへの支援は必要だが、企業がか箇条に抱えれば人材の流動化が進まず、社会としての適材適所ができなくなる。

■リーマンショックの時の教訓はないのか

経営者が、今は仕事がないので雇用調整のために解雇するなどと言う安易な考え方にたどり着くために、体のいいリストラや、雇用調整助成金などに頼ってしまう。経営者としていかがなものかと自問してほしい。

どこの記事にあったのかが思い出せないが、リーマンショック後に急激に業績回復した企業は、仕事がないときに

①社員の能力開発を集中して行なった
②後回しになっていた生産設備のメンテナンスをしっかり行なった
③受注に関わりなくお客様と連絡を取り合った

など、再スタートのための準備をしていた。無用な「休業」を社員に求めていない。
もちろんこうしたことができるのは、その前の段階で準備をしていたからだ。

人事部門は今どんな準備をしているんだろうか。何も準備をしておらず、「人が集まらないなぁ」と嘆いているなら、「無能」呼ばわりされても仕方ない。

<閑話休題>

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