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戦略人事:賃金を公開せよという世界の潮流を知るべきである(人的資源開示に向けて)

■男女間の賃金格差のまやかし

○男女の賃金格差がなかなか解消されない2つの理由 開示義務で風向きは変わるか?
2023年03月29日

 2022年7月に女性活躍推進法の厚生労働省令が改正され、労働者301人以上の企業に対して、男女の賃金差異の公表が新たに義務付けられました。

差は存在します。そう聞くと、扶養内で働く人や派遣・パートなどの非正規社員が多いという理由を挙げる人がいます。しかし正社員の平均年収で比較しても、男性348万8000円に対して、女性270万6000円と差があるのは事実です。

 厚生労働省は、男女の賃金格差が解消されない最大の要因として「役職の違い(管理職比率)」を挙げており、次いで「勤続年数の違い」となっています。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2303/29/news031.html

と言う記事があるが、これを顕彰するためのデータが公開されていないので、企業側が都合の良い数字を出している恐れがある。まずはこれを解決しなければならないと感じていたが、思わぬ援護が来そうである。

■人的資源開示
 2023年3月期決算から、上場企業なをを対象に人的資本開示が義務化される。
 これは、プライム市場からの要請であり、したがって対象企業は、金融商品取引法第24条における「有価証券報告書」を発行する約4,000社の大手企業になる。
 対象企業ではないと侮らない方が良い。何らかの資金調達を外部から調達する場合には、この情報開示が必須になることを想定した方が良い。

 すでに、化石化燃料を使用する起業に対しては金融機関からの資金調達が制約されるなど、経営資源としてのヒトモノカネがスムーズに流れない恐れが出てくる。

○3月期決算から義務化!「人的資本の情報開示」のメリットと課題
2023.2.16
https://diamond.jp/articles/-/317603

■軽視してはいけない世界の潮流

 こうした、プライム市場に影響を及ぼす動きは事前に察知して準備しておく必要がある。
 特に、人的資本に関わる下記の様な記事には準備を早くしたほうが良い。

○EU賃金透明性指令案が可決 同一労働の賃金水準も開示へ
2023年4月18日

欧州議会は3月30日、賃金の透明性に関する指令案を可決した。雇用主に男女間賃金格差の公開や採用時の賃金情報提供を義務付けるほか、労働者が同等の仕事をしている他の労働者の平均賃金レベルの情報を得る権利、賃金格差の分析と是正を進める「共同賃金評価」規定、賃金差別被害者の司法アクセスなどを定めた内容。EU加盟国は3年以内に国内法を整備する見込みだ。

可決されたEU賃金透明性指令では、250人以上雇用する企業は毎年、100~249人雇用する企業は3年に一度、基本給と変動的部分ごとの男女間賃金格差を公開する義務を負い、労働者は、自身と同一労働又は同一価値労働に従事する労働者範疇について、男女別の平均賃金水準に関する情報の提供を求め入手する情報入手権を持つ。

https://roukijp.jp/?p=5204

こうした流れはいずれ本流となって日本への圧力を生み出す。

■変わるべき人事施策

これまでは、自社の賃金水準を公開するなどということはなく、なんとなく秘密のベールに隠されてきた。これにより、働く人の疑心暗鬼を生み出し、離職を防いでいたと安穏としていた企業もあるのではないか。

現在、人材不足であることから賃金アップを記すような形で行なっている。
これが、「同一労働」の場合に賃金水準が公開されれば、低い賃金しか出せない会社には人が集まらず、すでにいる人たちは転職の動機付けが強くなる。

人材を集めるためには賃金水準は当然のこととして、より魅力のある仕事の提供の仕方を考えなければならなくなるだろう。

漫然と仕事をしている人事部に明日はない。

<合掌>

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