人事の問題を考える(週休3日の落とし穴)

■きっかけの記事

〇日立、週休3日可能に 最低勤務時間を撤廃
2022/4/11

日立製作所は11日、勤務日の最低勤務時間を撤廃し、週休3日も可能にする制度を導入することを明らかにした。柔軟な働き方を認めることで多様な人材の確保や業務効率の向上につなげたい考え。給与は変わらない。今年の春闘で労組と合意しており、導入時期や制度の詳細を今後詰める。

日立の従業員約1万5千人が対象となる。これまで週5、6日の勤務日は、1日最低30分は働く必要があった。新制度では1カ月の勤務時間を満たせば、自身の判断で1日当たりの勤務時間を増やし、有給休暇とは別に追加で休みを確保することができるようになる。

育児や介護、趣味などに取り組みながら仕事に集中できるメリットがあるという。

https://www.sankei.com/article/20220411-2KJ63EZWHBIJZE3LAPNJKWKYPA/?ownedutm_source=owned%20site&ownedutm_medium=referral&ownedutm_campaign=ranking&ownedutm_content=%E6%97%A5%E7%AB%8B%E3%80%81%E9%80%B1%E4%BC%91%EF%BC%93%E6%97%A5%E5%8F%AF%E8%83%BD%E3%81%AB%20%E6%9C%80%E4%BD%8E%E5%8B%A4%E5%8B%99%E6%99%82%E9%96%93%E3%82%92%E6%92%A4%E5%BB%83 より引用

働く時間のコントロールを柔軟にすることで多くのメリットがあると判断したのだろう。
同様の動きは他社でもあり、その背景としては下記のようなものがある。

〇日立やNECが導入へ 「週休3日」は人材獲得の切り札
2022.4.20

日立製作所は2022年度中にも週休3日を可能にする新たな勤務制度を導入する。NECやパナソニックホールディングス(HD)も検討中だ。電機・IT(情報技術)業界で「週休3日」導入が広がる背景には、人材の激しい獲得競争がある。

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22年は英国でも多数の企業が週休3日制の試験導入を始める。働き手の使い勝手がよく、企業側も生産性を引き上げられるような成功事例が増えれば、日本企業が欧米企業に比べて大きく出遅れているグローバル市場での人材獲得競争で存在感を発揮する一助となりそうだ。

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/01412/  より引用

〇日立もパナも 企業に広がる「週休3日」 多様な働き手確保
2022/5/

週休3日の勤務が可能となる制度の導入が日本企業に広がってきた。日立製作所は業務の繁閑に合わせて個人の裁量で週休3日も選べる制度を導入する。働き方を柔軟化し、多様な働き手を確保する狙いだ。政府も昨年6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」で「選択的週休3日制」の導入促進を盛り込んでおり、大手が牽引(けんいん)する形で、週休3日制が急速に広がる可能性がある。

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日本トレンドリサーチが週休3日制未導入の職場で働く男女524人に週休3日制を利用してみたいか聞いたところ、約65%が「利用したい」と回答。「休みが多い方がパフォーマンスが上がる」(20代男性)などの声が寄せられた。

https://www.sankei.com/article/20220502-LF5BCG356FLJVELXHILGMY5WK4/ より引用

一番大きな理由は人材の確保だろう。
高度人材ばかりではない、基本的な業務を行うマンパワーですら確保できない危機感があると考えられる。会社への拘束時間をコントロールできるなら、ワークライフバランスも現実味を帯びる。育児や介護で離職されるリスクを減らせる。

人材確保という面では、グローバル化への対応も欠かせない。海外では週休三日が定着しているのに日本ではまだですという状況では優秀な海外人材などは確保できない。

まだ実証できていないだろうが、集中的に仕事をすることで生産性が上がるという話も聞く。企業にとっては魅力的だろう。

■労働時間

しかし、事はそう単純ではないだろう。
 いままで5日で行っていた業務を4日で行うには、能率を20%以上上げないといけない。そうしないと、一日の労働時間を20%増やすことになる。

労働基準法に注意しなくてはいけないし、時間外の勤務が増えて労務コストが増えるのであれば本末転倒になる。

〇法定の労働時間、休憩、休日

・使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
・使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
・使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html

報道などを見ると、総労働時間は変えないという話も聞く。単に休みのシフトを変えるということだけにとどまるなら、生産性の向上につながらないだろうし、サービス残業が増えるということであればコンプライアンス上問題だ。

■能力開発は誰の責務なのか

記事の中に、学習の時間を確保できるというメリットを出している企業もあるという。そもそも学習は会社の指示であるなら、それは勤務時間なる。よく、就業時間の後で、社員が勉強会を開くという話もあるが、それを暗黙的に強制するなら問題であるし、そもそも残業もしていない中で会議室やパソコンを貸し出すというなら会社がこれを支援していることになる。

これもコンプライアンス上問題になる。

〇eラーニングは業務時間になる? 結果次第で上司から注意、休日をつぶして勉強するハメに
2022年04月25日

社員がeラーニングを受講するパターンとしては、(1)勤務時間外に社員が完全に自発的に受講する、(2)勤務時間内に会社の指示で受講する、(3)勤務時間外に会社の指示で受講する、という3つのパターンにおおむね整理できるでしょう。

(1)の場合は、あくまで個人の意思によるものなので賃金の支払いはありません。(2)および(3)については会社の指示に基づくものであるため賃金の支払い対象になります。

現実的に問題になるのは、(3)の場合に会社の「明確な」指示がないケースです。

こういった会社からの指示の有無は、形式的にではなく、周辺の事情も加味して実質的に判断されるべきものでしょう。「明確な指示がないから労働にはならない」という形式論では終わらないということです。

https://www.bengo4.com/c_5/n_14406/ より引用

■結局のところ

まずは、法令上問題が出ないような運営管理ができるかだろう。有給休暇の取得すら上司に遠慮して出せない職場では、自由に週休3日などできない。残業が増えるか、パワハラが増えるかになりかねない。

かっこいいからと言って導入する社長に振り回されないようにしないといけない。
目的性がなく、うまくいったかどうかを測る指標を作れないなら真似すべきではない。

<閑話休題>

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