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ISO9001と経営:再発防止策の三大無策(トップバリュの回収問題と富士通問題)

■気になる記事

きっかけの記事は、冷凍食品の回収の記事だった。

○イオンが冷凍食品「香味チャーハン」を3万食回収、樹脂片混入か…「口を切った」など苦情
2023/05/17

 回収するのは、「トップバリュベストプライス 2種類のにんにく油とねぎ油 香味チャーハン」(600グラム入り)。商品裏面記載の賞味期限が2024年2月25日で、製造所が「ニチレイフーズ船橋工場」の商品が対象となる。

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230517-OYT1T50209/?from=smtnews

不思議な記事である。もちろん異物混入はあり得る話ではあるが、口を切るほどのものは珍しいのではないのか。しかし、時々この手の話は聞く。検査装置の精度は良くないのだろうか。
また、製造日が特定の日、しかも3ヶ月近く前であることも不思議である。これは何を意味しているのだろう?

まずは、「 購入者から「異物が入っている」「口を切った」といった苦情が5件寄せられ、判明した。」とあることから、出荷後のサンプリングの定期検査はしていないことが分かる。また、異物混入の検査が十分でないこと、製造ラインの適性検査に不備があることなどが分かる。

しかしと思う。イオンのトップバリューのサイトを見ると、商品の回収は何度か起きている。https://www.topvalu.net/important-news/

2023.05.17 「トップバリュベストプライス 2種類のにんにく油とねぎ油 香味チャーハン」
2023.04.12 オーガニック トマト&バジルスプレッド
2023.03.03 「トップバリュ 清酒 カップ」
2022.12.09 「トップバリュベストプライス つぶ入りコーンクリーム」
2022.07.05 「トップバリュ たこ焼(7個入)」

必ずしも異物混入だけではないが、やはり事故はつきものなのだろうかと思う。

しかし、これらのサイトを見ても「再発防止策」がとられているかを確認できない。

■再発防止策の難しさ

安易な議論は差し控えなければならないのだが、こうした事故の再発防止策は「個別論」と「全体論」で考えなければならない。

問題が広範囲に及ぶものや組織全体の話になるとどうしても再発防止策は、(再)教育、周知徹底、管理強化に向かってしまう。

○富士通、相次ぐコンビニ交付サービス不具合に謝罪 「行政サービスへの信頼損ねた」 再発防止策を開示
2023年05月19日

まず同社では新たに、最高品質責任者(CQO)の役職を設け、同社のリスク・コンプライアンス委員会にCQOを加える。CQOと最高情報セキュリティ責任者(CISO)にはこれまでよりも強い権限を与え、情報セキュリティやシステム品質への具体策を策定。同委員会を毎月開催することで、迅速に実行する体制を作るという。

システム品質については、各ビジネス領域や組織に依存していた従来の品質保証体制から、全社で品質基準を統制し、権限集中化を進めていたという。富士通Japanに対しては23年度中にこれを展開する計画だったが、直近で起きた問題を踏まえて「結果的には対応が間に合っておらず、特に行政サービスでは、品質統制が不十分なプロジェクトがあった」と認めた。

 改善策として、富士通Japanに対して品質統制の権限集中化を即時行う。具体的には「標準化されたプロジェクトマネジメント」「品質管理」「リスクモニタリングによる予兆検知」「現物確認」に取り組む。

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2305/19/news202.html

あたかも、これまで内部統制をしてこなかったような言い草であるがそんなはずはない。
しかし、対外的にはこうした意見表明しかできないところに組織の不全がある。

■個別対応の原則

こうした人的施策や管理強化に向かうことを「個別論」の中でも行なってしまうと再発防止はできない。「ルール」に着目した再発防止策の原則は以下のとおりである。

(1)事故を起こさせないための有効なルールがない
 まずはルールの作成と社内への展開である。
 ルールは「手順」である必要がある、ヒトによる判断のばらつきが出るものはルールではない。{○○を適正に行なうこと」はルールではない。

(2)ルールを知らない
 ルールに容易にアクセスできる環境を整備すること。
 机の中にしまい込んだマニュアルは使われることはない。
 作業場所の横に保管するのは最低限であろう。要点だけを大きくして張り出すなどと言うことを実施している工場も数多くある。
 工場の入り口にゴミを取り除くことを求めているときには写真入りで解説しているだろう。「分からないことや曖昧なことは○○」を確認することなどの張り紙も有効かもしれない。

(3)ルールを守っていない
 ルールを守らせるは正解ではない。
 ルールあるいは手順を踏襲しなければ次のステップに進めないようにすることが必要である。お金を扱う業務は、手順を省略して扱うことはできない。これと同じである。
 しかし、人の手が介在する業務であるとヒューマンエラーが起きる。したがって、AIやITで自動化を進めることが必要である。測定器から自動的にデータを送り、次の工程に制御を渡すなどである。

(4)ルールを守っているが事故が起きる
 これは、手順の問題ではない。
 事故が起きないようなハードウエアやソフトウエアの整備が必要である。
 間違った動作ができないような機械などはその代表であろう。

■心の弱さ

こうした再発防止策の発案は、とても労力のいる取り組みの結果で生み出される。
多くの企業は、とことん話し合うと言うことに労力をかけているのだろうか?
おそらくは、限られている時間の中で、できることを探そうとする。

人の気持ちは弱いものである。脳は怠けることになれている。それらが相乗効果を生み出す。自分たちが変わろうとするメンタリティがなければ、三大無策に向かってしまう。

かくして同じような事故は再発する。

イオンの回収騒ぎや富士通のシステムトラブルはきっと再発する。なぜなら自分たちは正しいと思っているからだ。

<閑話休題>

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