ジョブ型雇用人事制度のために(キャッチアップの必要性)

■経営資源としての人

一般的に経営資源は「ヒトモノカネ」と言われる。
経営活動は、この経営資源を投入して利益を出し、再度経営資源の増大を図る活動である。
そのため、利益に目が行き価値であり、バブルの時にはそれが顕著だった。
お金がお金を生む構図に目がくらみ、企業がこぞって財テクに走ったことはまだ記憶している。

しかし、活動を支えているのは人であり、仮に最先端の設備を入れても運用力がなければ組織能力は上がらない。

富を生み出す源泉が「人」、それも労働力ではなく「知的活動ができる人」の重要性に企業も気がついたのかもしれない。

下記の記事に企業側の焦りが垣間見えるのは私だけだろうか。

○4000人の社員をDX人材へ - サッポロHDが進めるDXのねらいとは?
2022/05/13

「世の中で話題になるDX・IT人材不足について、少し前までは正直なところ実感が無かったが、社内のDX案件がこの1年で倍増した。高度なデータ分析を必要としたものなど、案件そのものの複雑さや難易度も上がり、DXプロジェクトが回らない事態に直面するようになった。専門家のシミュレーションにより、当社が構想しているようなDXを実現するためには、今後2~3年で100~200人のDX・IT人材が必要と指摘され、新たな人材育成計画が急務と感じた」(安西氏)。

https://news.mynavi.jp/techplus/article/20220513-2344127/

■人材で買い負けている

さて、上記のように最近の話題として「DX人材」があり、そのための布石として「ジョブ型雇用」が議論される。グローバル化が進む中で、優秀な人材がいなければ企業が成り立たなくなり、世界標準に合わせると云うことが進んでいる。さまないと、わざわざ日本企業に参画する意味などないからだ。

日本企業に就職しても他国の給与水準より低ければ、そこに向かう。高度技術者がアマゾンなどに集中する理由を考えてみよう。

■キャッチアップ

キャッチアップというのは、一般的には技術領域で語られるが、給与水準でも語られる。新興の企業は十分な報酬が出せないことがあり、業界水準、できればもう少し上の水準につかづけないと、人材が集まらないという課題があり、こうしたベースアップを進めることをキャッチアップという言葉を使うことがある。

ジョブ型雇用は、ジョブに報酬を紐付ける枠組みを含むが、そもそもの全体水準が低いと、社員のジョブ選択に偏りが出る。これを防ぐためにはキャッチアップが必要だ。

下記の取り組みもそうした意図で見る必要がある。

○大手銀、「人への投資」強化 賃上げ3~4%、教育も充実―22年度
2022年05月18日

大手銀行が「人への投資」を強化している。三菱UFJ銀行など3メガバンクは2022年度に賃金を前年度比3~4%程度引き上げるほか、教育関連投資も充実させる。企業間の人材獲得競争が激化する中、物価上昇にも配慮して人的資本への投資を増やし、企業価値向上につなげたい考えだ。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2022051700794&g=eco

○三井住友信託銀が平均4.5%程度賃上げへ、国内物価上昇踏まえ-報道
2022年5月11日

三井住友信託銀行は今年度の賃金について、ベースアップ含め平均で4.5%程度の賃上げを実施する方向で労働組合と最終調整していると、NHKが11日、関係者への取材を基に報じた。国内の物価上昇を踏まえたもので、ベアは7年ぶりという。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-05-10/RBOVGSDWX2PS01

■単純に喜んではいけない

給与が上がると云うことは歓迎するとしても、単純に喜んではいけない。なぜなら、給与を上げた見返りがなければ、何らかの理由を付けて報酬を節約するだろうから。最悪、条件の悪い職場への異動もあり得る。

○「獺祭」新卒30万、給与は倍増? 現場主義トップの絵空ごと
2022.3.1

旭酒造は機械にできることは機械に任せる一方で、「人」にしかできないことは「人」に任せている。私が見てきたいい現場は、例外なくそういった「人」の可能性を信じる現場だった。人に投資するためにイノベーションを行なっていた。

今回の大幅な賃金アップは、いわば「あなたは我が社にとって大切な人」というトップからのメッセージだ。

旭酒造は「経営とは人の可能性を信じること」という当たり前と、人に投資し続けるにはイノベーションが必要不可欠という「経営の基本」を実践し続けているにすぎない。

https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00179/

組織で働く人は、会社からのメッセージを読み間違えてはいけない。
かつてオーケストラを指揮する人が言った言葉を覚えている。

「皆さんにふさわしい楽器を用意しましょう」
そして
「楽器にふさわしい人に使ってもらいましょう」

さてどう感じるかな。

<閑話休題>

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