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戦略人事の落とし穴(機密情報のポータビリティ)

■カッパ・クリエイトが他人事ではない理由

〇転職前に情報複製、持ち出し共有か 「かっぱ寿司」社長
2022年10月1日

「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト社長、田辺公己容疑者(46)ら3人が逮捕された不正競争防止法違反事件で、田辺社長が転職前に「はま寿司」の内部データを複製し、カッパ社に移ってから同社の商品部門で複数の同僚に共有された疑いがあることが分かった。データはかっぱ寿司の運営上も有用な情報だったとされ、警視庁は法人としてのカッパ社も書類送検する方針で全容解明を進める。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE29E9Z0Z20C22A9000000/

こうした、機密情報持ち出しは係争のもとになるのは当然のことで、以前は同業他社への転職も制限されていた時代があった。にもかかわらず、引き抜きと情報の持ち出しが発生することが企業間の訴訟に発展することがある。

〇ソフトバンク元社員、無罪主張 「営業秘密と認識せず」―5G技術不正持ち出し・東京地裁
2021年12月07日

携帯電話大手ソフトバンクが持つ超高速・大容量通信規格「5G」の技術情報などを転職先の楽天モバイルに不正に持ち出したとして、不正競争防止法違反罪に問われた元社員合場邦章被告(46)の初公判が7日、東京地裁(野沢晃一裁判長)であった。同被告は「持ち出した情報は営業秘密と認識していなかった」と述べ、無罪を主張した。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021120700922&g=soc

無知と言わざるを得ない。こうしたことに対して、企業が対策をしているのかと言えばあいまいな企業が多いということが報じられている。

〇秘密保持契約、企業の4割結ばず
2022年10月1日

終身雇用のシステムが長く続いた日本では、営業秘密に当たる情報の範囲が曖昧な企業も多く、企業側の危機意識は十分とはいえない。IPAの2020年の調査で、漏洩対策として従業員と秘密保持契約を結んでいる企業は56.6%どまり。前回調査(46.1%)からは増えたものの、37.4%がなお「締結していない」と答えた。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO64798170R01C22A0EA2000/

社員と言えども、善意という漠然としたもので頼るのではなく明確な機密保持契約を結ぶべきである。

■幼稚な人間を「プロ経営者」と呼んではならない

彼の人物は、前職がはま寿司の取締役であり、当然営業情報にアクセスでき、事業活動を詳細に知っていた人物であろう。こうした人物の頭の中には、いろいろなノウハウが詰まっており、それを欲する企業があるのはわかる。しかし、データの持ち出しはアウトということぐらいがわからない、常識的な言動ができない人物を「プロフェッショナル」と持ち上げてはならない。

同様な事例は最近起きたばかりである。

〇吉野家発言に潜む「男性中心社会」 「受け狙い」で人権意識欠落
2022/4/23

牛丼チェーン大手「吉野家」の元常務取締役(18日付で解任)が大学の社会人向け講座で、若い女性に牛丼を好きになってもらう方法について「生娘をシャブ漬け戦略」などと表現した問題が波紋を広げている。

https://mainichi.jp/articles/20220422/k00/00m/040/286000c

■ジョブ型雇用

経営戦略の中には人材戦略があり、戦略的に人材マネジメントを進める上での概念として「戦略人事」がある。戦略人事の実現手段の一つにジョブ型雇用がある。ジョブとは何かという定義はおいておいても、高度な人材を内外から調達したいという思いが背景にある。しかし、外部から調達するときには注意が必要になる。

そのジョブを遂行する能力はどうやって身に着けたのだろうか。多くは、前職での経験や受けた教育訓練の成果である。それは誰の持ち物なのか。前職の会社も本人も納得していればいいのだが、前職で「機密保持契約」を結ばされているのであれば、それを確認しないといけない。

安易に「有能」だからと言って調達してはならない。

<閑話休題>

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