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世間に転がる意味不明:下請けハラスメントはなくなるのだろうか(公取委、日産の対応)

世間に転がる意味不明:下請けハラスメントはなくなるのだろうか(公取委、日産の対応)

■取りやすいところから取る風潮

 企業は収益を上げなければ存続できない。そのため、利益の創出に直接関わる営業部門には常にプレッシャーがかかる。というのは理解できる。しかし、安易に利益を出そうとすると弱者(この場合には下請け業者)から搾取しようとする。

 それは容易に改善されることはない。

○日産が不適切取引継続か…下請け企業に不当な支払い 調査中と明らかに
2024年5月23日

日産はことし3月、自動車部品を製造する下請け企業36社に対し、支払う代金を不当に減らしていたとして、公正取引委員会から再発防止の勧告を受けました。

しかし日産の内田誠社長は23日、勧告を受けた後も代金を減らす取引が続いていた可能性があるとして、外部の弁護士などによる調査を進めていると明らかにしました。

https://news.ntv.co.jp/category/economy/ad641cdb731544229b838f08efcf74d2

 ただし、下請けに対する適正な対応が必要であることの認識は業界全体でも取り組むべき課題だとの認識があるのは悪くはないのだろうと思う。実際に出来るかどうかは別として。

○日産・内田社長「1週間をメドに調査結果を公表」下請け不当減額を継続の可能性で調査
2024年5月23日

日産自動車は今年3月に公正取引委員会から部品メーカー36社に支払代金を一方的に引き下げていたとして、下請法違反で勧告を受けていて、取引先に対しておよそ30億円を返金しています。

自動車メーカーの業界団体「日本自動車工業会」はきょう、適正取引に関する新たな方針を発表し、▼原材料費やエネルギー費の上昇分について全額転嫁を目指し、▼労務費についても適正な価格転嫁を進めるとしています。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1187725?display=1

■中小企業への政策の焦点化

 今年の春闘の話題は賃上げであったが、多くの中小企業は取り残されているのが実情であろう。貧富の格差や貧困層の拡大による不景気の長期化は政権へのリスクになることの自覚であろうか、いくつもの政策が進行しているように見かける。見せかけだけの政策(定額減税)などもあるが、潮流になりそうな兆しもある。その代表は「下請け(=中小企業)」への配慮だろうか。

○公取委、下請法の基準改正 据え置きも「買いたたき」
2024/05/27

 公正取引委員会は27日、人件費や原材料費が高騰する中、中小企業などが価格転嫁しやすくするため、下請法の運用基準を改正した。大企業などがコストが上がっていることを把握しながら取引価格を据え置く行為を「買いたたき」と明記。違反行為には指導や勧告など強い姿勢で臨み、取引慣行の改善を目指す。

 下請法では買いたたき行為を「通常支払われる対価に比べ著しく低い下請け代金の額を不当に定めること」と定義している。改正では「コストの著しい上昇を把握することができる場合において、据え置かれた下請け代金」も買いたたきに該当すると追記した。

https://nordot.app/1167735389993878510

同じく朝日新聞では下記の様に解説されている。

○コスト上昇で価格据え置きは「買いたたき」 下請法の基準改正
2024年5月27日

 従来の基準では、買いたたきを「著しく低い下請け代金の額を不当に定めること」としていた。ただ物価が上がっているにもかかわらず、取引価格を引き上げない場合も「事実上の買いたたき」にあたるおそれがある。新しい基準では、ガソリン価格や労務費などの著しい上昇が公表資料で把握できるのに、下請け代金を据え置いた場合も、買いたたきの要件に該当すると明記した。

https://www.asahi.com/articles/ASS5W2R4RS5WULFA014M.html

「労務費」をむやみに計上できないとしても、これを理由に値上げ交渉が出来る道筋が出来る。下請けを安い労働力としか見ていない発注者側への牽制になってくれるとありがたい。

■メッセージを出し続ける事の重要性

企業業績が好調な理由の一つとして上げられるのは、それまでの正規社員の半分近くを非正規として労務コストを引き下げたことに起因することは否定できないだろう。多くの企業は、本来その企業が負うべきリスクを他者に押しつけることで果実を享受しているかもしれないことに気がつくべきである。

そのためには、「これが問題である」と発進し続けることが重要であろう。メディアの責任もそこにあり、下記の様な報道が根気よく流れることを願う。

○トラック運転手、残業規制でも「荷待ち時間変わらない」…「荷主の立場強い」改善申し出困難
2024/04/16

男性は普段、群馬県桐生市の営業所を午前4時に出て、首都圏の工場などに建設資材や鉄鋼部品などを運送している。運転時間より荷待ちのほうが長い日もあり、4月になってからも、1か所で1時間近く待たされることがざらにあるという。帰宅が夜になることもあって、「年齢的に疲れがとれにくくなった」と話す。

「荷主の立場が強い状況は今も昔も変わらない」という男性。「運転手の働く環境が改善されなければ、将来、なり手がいなくなってしまう」と案じる。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20240415-OYT1T50243

こうした声が最初の下請法の改正につながった可能性もある。

○トラック業界に蔓延する「買い叩き」 下請法運用基準の見直しより、もはや「高額罰金」しかないのか?
2024.5.25

公正取引委員会は4月1日、下請法の運用基準改正(案)を公表した。人件費や燃料費の高騰を適切に転嫁するためのルールを明確化するのが改正の目的だ。物流業界では価格転嫁が進んでおらず、制裁金など厳しい対応が必要との指摘もある。

https://merkmal-biz.jp/post/66143

こうした声を上げる方法の一つに「訴訟」という手段で公にすることも考えなければならない。

○個人ドライバーに残業代を 「実態は労働者」と提訴
2024/05/24

アマゾンジャパンの商品配送を個人事業主(フリーランス)として請け負うドライバーら16人が24日、契約する同社の下請け運送会社などに計約1億1680万円の残業代を支払うよう求め、横浜地裁に提訴した。個人事業主には労働基準法が適用されず、本来は残業代を請求できないが、ドライバーらは会社の指揮命令を受けており、実態は雇用された労働者だと主張。労基法に基づく割増賃金を受け取れるとしている。

https://nordot.app/1166659930160791847

その実体は下記の報道から、その一端を見ることが出来る。

○「定額配らせたい放題」アマゾン配達員ら16人 残業代1億円以上を求めアマゾンの下請け会社など提訴 
2024年5月24日

配達員らは運ぶ荷物の量が多く、1日12時間ほど働くことが多いにもかかわらず、日当は1万8000円と決まっていて、働いた時間によって賃金は変わらないということです。

配達員らは個人事業主ですが、実際にはアマゾンのアプリで業務を管理されるなど労働基準法上の労働者にあたり、残業代が支払われるべきだと主張しています。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1189878?display=1

社会正義を振りかざせと言っているのではない。
搾取を前提としたビジネスモデルは健全では無いと言っているのだ。
いずれそれは自分自身を滅ぼす。

2024/05/29

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