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必勝定石とその解析〜必勝(勝てるとは言ってない)とはどういうことか〜

お題対局で必勝局面を扱ったので、少し連珠の必勝周りの事情について書いておきたい。
ご存知の方は多いと思うが、連珠は互いが何の着手制限もなく打つと先手に必勝が存在する。これを回避するために初期の打ち方に制限をかけたのがいわゆる開局規定と呼ばれるもの。ソーソロフ8はこれの最新版にあたる。やってみるとわかるがこのルールはそこそこ複雑である。どうしてこうなったのかというと、それは必勝を消すという目的よりは局面の可能性をより広げようという意図がある。必勝を消すだけなら珠型交替打ちという簡易的な手続きだけでよいのだが、それでは局面のバリエーションが少なくなりすぎるということだ。囲碁で例えると、9路から19路に拡張した感じだ。

ここで難解必勝という概念が登場する。文字通り難しい必勝ということだ。ソフト研究が本格化する10年以上前は完全手動の総当り研究だった。そのため、そもそも研究自体に間違いがあることが少なくなかったのと、何よりも一定以上の複雑さを持った局面に手を出すことができなかった。一部非常に難しいものもあったがそれは数としては少なく、多くは自然な手を100%の精度で打ち続ければ勝てるものだったり、人間でもゴリ押しで読み切れるぐらいのものだった。それがソフト研究、特にrenjusolverというソフトが08年に普及してから状況が激変する。このソフトは局面の総当り解析、それも詰み周辺に特化して強いものだ。このソフトの登場によってそれまで研究に数カ月から数年を要した局面が数日や数時間で結論が出されるようになる。革命的な出来事だった。このころに解析家という概念を耳にするようになる。実戦は全く、あるいはほとんどと言っていいほどやらず、ソフトを使用した局面研究に特化した人たちで、現在に至っても最新ソフトでは研究しきれないような難解局面はこの人たちを中心にして研究されているようだ。その技術は極めて専門性が高く、現代の最新ソフトをサーバーを使用して研究している人に旧式のソフトと一般の家庭用パソコンで勝つ人を目にしたことがあるので凄まじい。

さて、renjusolverが普及して10年以上経つ現在において、ソフトの進歩は著しい。かなりの難解局面でもソフトを一晩か二晩放置しているだけで結論が得られることも少なくない。すると何が起きるか。理論的な結論は既に判明しているのだが、人間ではとても難しすぎて手が出せない、あるいは勝ち切れないので大会でも頻繁に採用されるという事態が発生する。特にサムネにした画像は、最新ソフトでもあまり研究が進んでいなかったのを高名な解析家が数カ月かけて結論を出したらしい超難解局面である。出回っている五珠指南書については私もかなりの検証研究をしたが、大部分は本当に勝っている。しかし大会で実際に勝てるかは全く別の話だ。多分ほとんど勝てないだろう。こういうわけなので、必勝(勝てるとは言ってない)と言われるようになった。ソフトの進化がすごくても人間がそれに合わせて強くなるわけではない。必勝が勝てない時代はしばらく続くと思われる。

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