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一時代の終わり

今日、私のところに大きなニュースが舞い込んできた。名月ニ題と残月ニ題に黒必勝の結論が出たという。具体的には以下の二図。

現在は主要手順が整理されて検証研究の段階に入っているとのこと。これは連珠としては歴史的な出来事だ。例えるのが難しいが、将棋でいうとB級戦法の一つに完全な結論が出た、というくらいだろうか。この二つはかつては主流として打たれていた時期もあったということなので、もう少し大きなインパクトかも。自由打ち黒必勝であるとかなにかと局面の結論が騒がれやすい連珠だが、実は主流級で打たれたことのある変化が丸々終わるということは珍しい。多くの場合、局面の結論そのものは出ないものの実戦で使用するには形勢が離れすぎているというわけで消えていく。こういうところは他のゲームでも似ているだろう。上図に関しては、私が連珠を本格的に始めた10年以上前の段階で近いうちに完全な結論が出るだろうと言われてきた。それから今になってようやくだ。当時から黒有利は確立していたが、深いところに踏み入るには局面が複雑すぎたということらしい。研究していたうちの一人はembryoさまさまだと言っていた。
このうち残月については、私もざっと手順を確認してみた。古くから黒有利が確立していた手順とは異なるアプローチで必勝を導いている。ずっと打たれてきたものが正しいというのは先入観なんだと実感する。もう一つ驚いたのは、この形といえば実戦で打たれるのは基本的に一つの主要進行のみだが、他の変化も非常に複雑だった。打たれないからといって悪いわけでもないらしい。なお、この形だけを何年も打ち続ければ覚えることは不可能ではないかもしれないけれども、普通は丸暗記を放棄する変化量がある。
連珠は新たな時代に突入しつつあると思う。今の段階ではいわゆる情報戦が全盛で、いかに急所の変化に速くたどり着いておくかという面が強い。ソフトで上図のような、明らかに有利だが結論を出すには至らなかった形にどんどん決着がついていく。1、2年はそれが続くと思う。さらに数年経つと、少なくとも情報を得ようとしている人たちの間では大きな差がなくなり、各々の思考力でいかに良い手を打つかという時代になってくるだろう。今の段階でも人間の記憶容量をはるかに超えているのでもはや必勝がどうとかはあまり関係ない。そうなってからが本当の人間の表現の場であり、勝負。現代のアブストラクトゲームのあり方という感じがする。

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