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RenjuMindMaster最終戦の反省など

局面は私の白番で以下。いわゆる瑞星満局定石。

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白32での定石は通常33だが、この34までの進行も面白そうだなと感じてずいぶん前から目をつけていた。ただ今の時代にこれをやろうという人は非常に少なく、一生打つことはないだろうとも思っていた。記憶が飛びかけていた今日の日にこの局面にお目にかかるとは、いささか不思議な気分だ。大会としてはこの時点で勝利したほうの優勝、ブレークも私のほうがよかったので普通ならよく知られた定石進行にするところだが、もうしばらくこの局面を見ないかもしれないと考えると好奇心が優った。私は何かしら選択を迫られたときに「面白そうだから」という理由が最終的な決定打となることが多く、それゆえ連珠では多くの星を落としてきた。本局もそうなってしまったが、この点についてはこれからも続けていこうと考えている。もちろん勝負において、この一局だけは絶対に落としてはならないというタイミングは存在する。ただ、勝ちに徹して自分の慣れ親しんだやり方をずっと続けてしまうと、何か抜本的な変革を求められたときに全く対応できなくなってしまう気がするのだ。連珠では最も大きなものとして開局規定の変更が挙げられるが、ほかにもあるだろう。では、そういうことがしたいならもっと別の、練習対局でやればいいではないかという話もある。それだと私の場合は本気で考えることができない。よって、「勝たなければ死ぬというわけでもないが、負けると実際的なダメージがそこそこある」くらいの重要な場面が変化をつけるのにちょうどいいと思っている。

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本題に移る。図は問題の局面。後で聞いた話によるとこれはこれで確立した定石だそうで、39までは最善進行と古くから考えられているらしい。相手は恐らく覚えていたのではないかということだった。39はなんとなくここに打たれるような気がしていて、良い手っぽいから来ないといいなと思っていた。ポンッとvinteeの着手音が響き小さくため息。これはめんどくさい局面になった。

白40での第一感はAで、ソフト最善はCだった。厳密な善悪は微妙なところだが、つまるところ上辺は部分的に受からないので左側から先手で処理しようということだ。

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上図は当時の私の頭の中。現在黒にミセ手があるが、これをAで受けられるのか、あるいはBとトビ四を打ってからCなど改めて受けにいくべきかになるだろうという判断をした。残り時間は15分とか10分だと思われる。(フィッシャー2秒なので感覚は切れ負けに近い)このときにまた、ここからさらに詰みの有無を探るのはめんどくさいと思った。先ほどからめんどくさいめんどくさいと書いているが、これが判断を誤らせた元凶だった。さらに残り時間が切迫して冷静に考え直さなかったのが悪かった。実は上図は白Aで黒の詰みを受けきっている。ここで私がすべきだった思考は「この局面(ひとつ前の図)を黒の詰みたらしめているものは何か」という条件を探索する方向にいくことだったが、当時の私は「何もしないで単にCで受かるなら、それが一番シンプルでいいな」と考えてしまった。この局面においては、黒Dの四ノビが白Eの四に一度当たる。これが詰みを消滅させる上で最重要要素で、白Cなど直接的に右上に手を加えなくても受かるようにできている。当時は「剣先を消しながらも最後はCなどと直接受けにいかなければいけないのだろう」という非常に漠然とした先入観を持っていて、その前提を疑わなかった。そういった微妙な思考過程の末明確な結論を出せず、受けにいかなければいけないのだろうのところだけ頭に残ったのか最終的に本譜の順(ひとつ前の図のB)を選んで頓死してしまった。

上述した通り私のファーストインプレッションは一つ前の図の白Aだ。これは最善ではないかもしれないにせよ、少なくとも方向性は正しく負けるような手ではなかった。これが持ち時間1分の連珠で、わけもわからずフィーリングで打っていればその通りに打ち、よくわからないうちに乗り切れただろう。あるいはもう30分余分にあれば、上述したように論理的にも正しい判断ができたように思う。持ち時間30分というどっちつかずな時間の中で半端な思考をして致命的な悪手を打ってしまった。このあたりは長年の課題なので難しいところだ。私の場合一回の長考の単位が30分であることが多いので、それ以下の時間では明確な結論が見えない限り全て第一感を採用するというのがいいのかもしれない。実戦で時間を余して負けるとショックが大きいので、どう釣り合いを持たせるかを模索していきながらになりそうだ。今回の大会はいろいろ思うところが多かったが、公式戦はたとえオンラインであっても大きな気づきを得るうえで大事なのだと再認識した。



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