【彼らが本気で編むときは、】
見てきました、この映画。
公開前から絶対に見ようと決めていた作品の一つで、
予想も期待も裏切られて最高でした…!
※以下ネタバレです、、、
多分こういうラスト、嫌いな人が多い、というか、
こういう現実がある、ということをちゃんと自分に置き換えられずに見ると、
納得できない終わりなんだろうなあと想ったり…。
答えのないテーマには、無理矢理にでもハッピーエンドをくっつけたがるときがあるじゃないですか。
私はそれがすごく苦手だし、目に見えてわかるハッピーエンドではなかったけれど、
それはリンコとマキオからの視点の話であって、だし。
ただそれは見たこちらがそう思ってるだけで、
本当はそれすらハッピーエンドかも知れないけれど、も。
誰も彼もがもがいている姿で終わるのは、これからまたはじまっていく日々への一歩だなあと、想えるラストでした、私的には。
そして、ともがお母さんを選んだことも、
かいがラブレターを破かれてODをして生き残ったことも、
ともを引き止めなかったリンコもマキオも、
ともを取り戻したお母さんも、
みんな、何も解決していなくて、事態は何も好転していなくて、
でもそのそれぞれが拠り所にして、縋って、
見守ってくれていると信じているのが、
それぞれ形や想いや向いている方向は違えど「母性」なんだなあと。
作中、おっぱい、という言葉や表現が多用されていたけど、
確かにそれほどわかりやすい表現はないな、と想って。
「手術」をしたから、「供養」をしたから、といって、
「女性」になれるわけではなくて。
戸籍を変えても、目に入るその骨格や手は男性だった頃のそれなわけで…
そしてその姿を「異常」だと決めつけられることは、必ずあるわけで。
それでも、「おっぱい」という女性特有のもので、
何を与えられるか?といったら、
トランスジェンダーだったリンコには、「女性」としての体への自信を、
リンコにそれを与えたフミコは、「母として」の優しさや愛を、
ともにとってリンコのそれは、「安心」を、というように、
足りないものをそれぞれ補う為のキーワードなのかなあと想って見てて。
私も、学生の頃にトランスジェンダー(当時はGIDという表現をしていた気がするけど)の知り合いが多かったし、
なんだか、それも思い出して泣けてきてしまって。
きっとトランスジェンダーの方がみたら、また感想は違うのかも知れないけど、
私は、それでもやっぱり、こういうテーマで映画という表現で、
扱ってもらえるのは素敵だなあと想う。
これで理解ある人が増えれば、というと、
もしかしたらトランスジェンダーの方からしてみれば、
「理解なんて言っている時点で差別している!」とか、
そういうことになるのかも知れないなあと想ったりもするのだけど、
分からない、知らないことに対して、まずそれが「どういうことなのか」っていう疑問や、
ある種の畏怖心、興味、を持つキッカケや感情は多い方がいいと想う。
その為の入口として、映画はいい対象なんじゃないかなと、ね。
でも、そうは言いながらも、
すごく残念だったのが、「ここ笑うところ?」ってところで、
結構な人が声に出して笑っていたのが、私は気持ちが悪くなってしまって。
感想は人それぞれ千差万別だから、
面白い、と笑う人もいれば、
泣ける人もいて当たり前なんだけど、
私はもう全然何一つ笑えなくてね、ひとつひとつに意味があって、
言葉の選び方に温度があって、だから、もう全然切なくて、ってなってたから、
なんかもうすごい嫌だったな…。
あ、あと、
一緒に住んでいるとはいえ、本来なら夫婦にも、
その間にできる存在(とも)でもない、というと語弊を産みそうだけど…
でもその3人が、同じことをする、というのが、
言葉を使わない「家族」の表現としてあっていいなと想った。
編み物を、リンコからともへ、ともからマキオへ、とか、
(しかもマキオのお母様がリンコの煩悩を編んだシーンもあり、)
リンコが使った表現をマキオが使っていたりとか、
特に、ともがマキオのパンツをダサいパンツ!と言ったときなんて、
私めちゃくちゃ泣いたもの…
なんだか、約2時間じゃ足りなくて、
もういっそ3~4時間の作品にして、
リンコが入院したくだりとか、して欲しいなあとは思ったけど…
でも多分言葉や態度の表現ひとつひとつを丁寧に見たりしてるだけで、全く飽きない作品でした。
最後にリンコが編み物しているときの、毛糸が毛糸玉からハラハラと1本ずつほどけていくのとか、
リンコがともと過ごした時間や思い出や感情を、
寂しくなるからほどいて、でもまた結んで編んで形にしてるのか、と想ったり…(完全に私の深読みで妄想)
長々と語ってしまったけど(しかも自分のFacebookから少し引用)
とてもいい作品でした。
一度見て、理解や偏見、面白くなかった、ということがあるとしても、
何かしらの知識と視野の広がりにはなると想うし、
ぜひ、見て欲しい作品です。
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