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事業戦略における特許の役割

 こんにちは!元中小企業弁理士のnabです。本日は、「事業戦略における特許の役割」というテーマでお話していきます。

 著書「良い戦略・悪い戦略」で特許について語られている部分を要約してみました。

 著者は、リチャード・P・ルトメルト氏。エコノミスト誌が選ぶ「マネジメント・コンセプトと企業プラクティスに対して最も影響力のある25人」に選ばれている人物です。本著は、メリカリのCEOである山田進太郎氏も推薦しています。

  表紙画像は、みんなのフォトギャラリーよりいただきました。稲垣純也さんありがとうございます。

(1)特許は隔離メカニズムの手段

 投資の神様・ウォーレンバフェットは、「持続可能な競争優位」を基準に企業を評価するそうです。本著では、競争優位のあるときを、「競争相手よりも低いコストで生産できるとき」「競争相手よりも高い価値を提供できるとき」と定義しています。

 また、競争優位を「持続可能」とすることが必要であると著者は強調しています。競争優位を持続可能とする為、競争相手に容易にまねされないための「隔離メカニズム」を持つことが必要で、その隔離メカニズムの最もわかりやすい例として「特許」を挙げています。

 隔離メカニズムは、特許の他に、評判、取引先や人脈、ネットワーク効果、規模の経済、暗黙知や熟練技能などがあるそうです。

 例えば、アップルのiphon事業は、ブランド力、評判、iTunesの補完的なサービス、専用アプリによるネットワーク効果などの隔離メカニズムの組み合わせによって守られているようです。

(2)ゼロックスコピー機と特許

 本著では、強力な特許で利益を挙げた事例として、ゼロックスのコピー機を挙げています。同社は、乾式普通紙コピーの技術を開発し、特許取得で、競争優位を生み出しました。

 その特許は強力で、1950年代半ばには、原価700ドルほどのコピー機が3000ドル以上の価値で飛ぶように売れたそうです。

 しかし、ゼロックスは、既存の強力なリソースにこだわり、コピー機の販売網を強化することに注力してしまったそうです。一方、ライバル会社のキヤノンは、大型の高速コピー機でなく家庭用コピー機にリソースを投下して、ゼロックスの特許に対抗し、コピー機のシェアを奪ったそうです。

 以下は、ゼロックスとキヤノンの出願動向のイメージ図です。丸の大きさは、特許網の大きさを示しています。

パテントマップイメージ

 著者は、強力なリソースを得た時の代償として、その環境に安住し、その後の戦略がおろそかになる危険性を指摘しています。

(3)まとめ

 本著は、良い戦略の基本構造に、①診断・②基本方針・③行動を挙げています。

  なお、特許分野において、①診断を行う手法に、出願動向調査があります。出願動向調査とは、分野・年代・課題等のカテゴリーごとの企業の出願件数を調査する手法です。出願動向調査によって、上で示したようなパテントマップを作成でき、分野・年代・課題別の特許網を可視化できます。

 特許に関しては、出願動向調査のような分析ツールを活用し、良い戦略の第1ステップである①診断を適切に行うことが必要かと思われます。是非、ご活用ください。

 最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。

 

 

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