自分の「苦手」は役に立つ

9月〜12月、青山学院大学社会情報学部 ワークショップデザイナー育成プログラム(通称 WSD)に参加してきました。

とても学びの多い3ヶ月でしたが、そのなかでも1番「行ってよかったな!!」と思ったことをまとめておこうと思います。

私は子どもが苦手です

苦手すぎて、親戚の子どもに話しかけられて

あ〜はいはいはい…

って答えたくらい苦手です。子どもに罪はないのですが、私が一方的に子どもと接するのが苦手なんです。

ただ、プログラムのなかには、子ども向けのワークショップの実践が入っていたわけです。

実践当日まで、チームで企画を進めていくわけですが、メンバーには何度も「私マジで子ども苦手なんで…」「当日も助けてもらうと思いますが…」とずっと言っていました。まあまあウザかったと思いますが仕方ありません。

苦手とはいえ、プログラムに入っているので逃げるわけにはいきません。
この機会に克服したい!!と思いました。

そして、そもそも私はなんで子どもが苦手なんだろう、というところから考えはじめました。

今年の春に読んだ漫画にヒントがありました。

現在も連載中の漫画『ミステリと言う勿れ』3巻の台詞を引用します。(『7SEEDS』の田村由美先生の最新作です。読んで!!)

遺産相続のための争いで、子供の口から秘密を言わせようとする男を主人公が止めるんですよね。でもそれを「子供だから」どうせわからない、みたいなことを言われた主人公が返した言葉がこれです。

子どもは馬鹿じゃないです
自分が子供の頃バカでしたか?

全くその通りなんですよ。

この漫画では、子供の心を「乾く前のセメント」という言葉(児童心理学者の言葉らしい)で表す場面が何度かあって、子供の傷に対して主人公がずっと敏感なのが特徴です。

話を戻しまして、私は子どもの頃、大人の不用意な言葉で何度も腹が立ったことがあります。

女の子やからピンクとか選んだら〜?
セーラームーンとか見ないの〜?
スカート履かないの〜?

みたいな、性別に関することは、恐竜の種類を100匹覚えることとドンキーコング2の攻略本に夢中な私からすれば余計なお世話でしたし、

将来の夢は〜?
学校楽しい〜?

みたいな質問も、将来の夢がなく、学校で友達が少なかった私には答えづらいものでした。

いま思えば、その大人たちは特別悪い人たちではなく、悪気もなかったと思います。

悪気がなくても、子どもの私はそういう大人が放つ些細な言葉に傷ついてきたんです。だから私は大人になりたくないと思って生きてきたんだと最近気づきました。

なんで自分は子どもが苦手なんだろう、の答えは
加害者になりたくない」からでした。

余計なことを言って傷つけたりしないために、距離を取っていたんだと思います。

でも、「そんなナベちゃんやからこそできるワークショップがあるかもね」というようなことを言ってもらえました。

たしかに、大人の些細な言葉に傷ついてきた私だからこそ、
これは言わないでおこう、とか、
こういう企画は苦手な子もいるだろうからハードルを下げてみよう…
と、当時「苦手だらけだった子どものころの私」の目線でプログラムを考えることができます。

(逆にやんちゃな子どもではなかったので、そういう真逆のタイプの人とプログラムを組むと、さらにいろんな子どもに対応しやすくなる気がします)

私がワークショップで伝えたいことは、本当は子どもにも知って欲しいこととでした。

私がやっている「短歌」は、31文字で自分の思いを伝える手段です。

短歌はモヤモヤやイライラを表現に変えられる魔法で、この世界で生き延びるための武器です。

お金がなくてもできるし、友達がいなくてもできるし、集中力がなくてもできる「表現」です。

短歌の世界は、世の中と真逆の価値観が受け入れられる場所です。

小さい、
しょーもない、
どーでもいい、
金がない、
友達がいない、
仕事ができない

そんなことが短歌のなかでは輝きやすいのです。
仕事ができなくても、友達がいなくても、短歌はそのままでいることを許してくれる場所です。

仕事や家庭では、自分を押し殺す必要があったり、少し無理をして前を向く必要があっても、短歌は弱い自分をさらけ出して良い場所です。

HIP HOPも短歌とは違う意味で世界と真逆の価値観でまわっているように思います。人によっては短歌よりもHIP HOPのほうが向いているかもしれません。

異論はあるでしょうが、
苦しい世界を引っくり返せるのは短歌かHIP HOPだと私は思っているわけです。

子どものときに、そんな世界があることを知りたかった、とずっと思ってきました。
だから、ずっと子ども向けに短歌のワークショップをしたかったのに、自分は子どもが苦手だからできない。

そんな呪いと授業を通してちゃんと向き合えたことはとてもよかったです。

ワークショップを企画するうえで、自分の苦手は重要です。

自分が苦手なように、他の人も苦手かも、と想像することで、誰にでも安心・安全なプログラムを考えることができます。

ワークショップデザイナーとして、自分の苦手は役に立つのです。

また、自分の得意ももちろん役に立ちました。

私は大学最初の授業で、「どんな名作にも欠点を、どんな駄作にも美点を見つけられるようになってほしい」と言われました。
だから私は読書記録や映画鑑賞記録で、必ず「いいところとわるいところを最低ひとつずつは書く」ようにしていました。真面目ですね〜。

そのおかげで、短歌のワークショップでは、どんな作品でも必ず褒めることができます。
短歌でできるんだから、子ども相手にいいところを見つけられないわけはありません
子どものいいところを見つけて褒められるならば、それが私の強みになるはずです。

実際、授業のなかで子どもを相手にしたときは、正直それどころじゃなかった(察してください)ので、早々にリベンジをはかりました。
 
卒業後、子ども向けのクリスマス会で短歌のワークショップをやりました。
やんちゃな子が多いと聞いていてビビり散らかしていましたが、最終的にはカードゲームを使ってほぼ全員短歌を完成させることができました。

まだ子ども相手のワークは慣れてはいませんが、徐々に成功体験を積んでいこうと思います。

自分が苦手だと思ったことは、これからも大切にしていきたいですね。

*子ども向け短歌ワークショップのくわしい内容はこちらにUPしました。

*子ども時代からを振り返って作った短歌も今年作りました。これも読んでください。


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