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未完成なものに惹かれる

先月のこと、用事があり京都に行ってきました。
用を済ませて時間があったのはいいけれど、街中はG Wで祭りの様にすごい人でした。
そこで 、喧騒を離れて少し外れにある気になっていた古家具屋さんに行くことにしました。
 
店内はヨーロッパやインドの古い家具が所狭しと並び、
家具に挟まれ体を横にしたりしながら、店内を周りました。
 
店の隅の方で見つけたのは、オランダの家具メーカーが試作で作った椅子。
恐らく本来は座面や背もたれに布を当てるデザインで、この椅子は布張りする前の状態です。
 
一見簡素に見えるのですが、作りはしっかりしているし、材料も悪くない。試作なので、材料をカットする印の墨が残っていたりして、職人さんが苦労しながら作ったのが伝わってきます。
 
実は、前にも同じ様な理由で心惹かれた椅子がありました。
 
家を引っ越したときにソファを探していて、北欧の古家具を扱うお店に行きました。
 
探していたのは、夫や愛犬と一緒に座れる大きめのソファ。
けれど、わたしが気になったのは一人がけのソファでした。
あまり見かけない無骨なデザインだけど、なぜか心が惹かれる、、
気になり始めたら、他の椅子は目に入りません。
椅子の下を覗き込んだりして見ていると、
 
店主の方が家具の刻印や年代から、北欧家具のデザイナーハンスウェグナーの椅子で、有名になる前のデザインもので数も少ないと教えてくれました。
 
色々と家具を調べていたときに、ウェグナーの名前は何度も目にしました。
Yチェア素敵だな〜、いつかこんな家具を置けたらなぁと、ウェグナーの家具は憧れでした。
そのウェグナーにも、有名になる前の時代があり、素敵な家具が出来るまでにいくつも家具を作ってきたことを知りました。
 
 
どうやら私は椅子を選ぶときに、座り心地よりもその後ろにあるストーリーに惹かれる様です。
完璧でなくても、美しくなくても、そうなろうとしているものに心が奪われる。もしかしたら、今の自分と重ねているのかもしれません。
 
家具を作るとき、作り手の方が求める理想の形や座り心地がどこにあるのか探し続けた積み重ねの先に、いい座り心地やいいデザインのバランスが見つかるのではないかと想像します。
「いい座り心地やいいバランス」は作り手の感覚なので、途中の自分の中にある感覚を探し出す作業は結構孤独なのでは思うのです。
 
そのことが、漠然と自分の中に描く名もなき理想の心地いい生活を求めるわたしの日々と重なるなぁと感じるのです。
 
人に一言で説明できないけれど、確実に自分の中にある追い求めるもの。その答えは私にしか出すことができない。
そんな孤独を感じるからこそ、未完成の椅子もなんだか仲間の様に感じてしまいます。
 
私も追い求める理想の心地いい生活がいつか形になる日を夢見て、今日も仲間に囲まれて生活をしていきたいと思います。


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