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期待

自分が何に混乱してるのかわからなかった。辛いのは確かなんだけど、その理由がなんなのか考えてもわからない。仕方がなく、考えるのをやめてひたすら泣いた。泣く毎に、だんだんと泣くのが上手くなっていった。

私はいつも思考で感情を抑制する癖がある。だから辛い時ほど頭を動かすし、それを吐き出すためにお喋りになる。でも今回は黙って、ただ感情に身を委ねて、子どもみたいにわんわん泣いた。

その泣き方が板についてきた頃、自分が何に悩んでるのかが見えてきた。考えてないのにわかるなんて、不思議だけど。(でも昔から、下手に頭を働かせた方がばかになって、直感や感覚に任せた方が鋭いところがある。)

混乱や辛さの理由は、かんたんに言うと価値の喪失やった。昔恋人だと思っていた人から、尊重されず、蔑ろに扱われ、そしてそれを受け入れてしまった経験。自分はそんなものなんだと思わされた時期があった。

もちろん「そんなもん」ではないんやけど、その時はそれを認めるしかないくらい孤独やった。私のことを好きだと求めてくる数少ない人なんだから、それなりに信頼できる態度や言葉なんだろうと信じてた。

でも全然ちがったな。大人になるほどそれがわかってきて、わかるほどに「侮辱された過去」に解釈が変わっていくのが辛かったみたいや。あの時失われたプライドが、自身の価値の揺らぎとして今になって表面化してきたのだと思う。

それがわかると涙は止まって、私の心は平常に戻った。今回の経験から、ひとつわかったことがある。人は、「愛だと思ってたことが愛じゃなかった」と知る直前が、いちばん怖い。それを知ると、過去の解釈がオセロをひっくり返すみたいに全部変わってしまう。

そしてもうひとつ、私は他人の期待に応えたい人間だということもよくわかった。それが屈辱的な要求でも、一旦は受け入れてしまう。(これは境界線が甘いからだと思う。)だから、誰と一緒にいるかが私にとってとても大切なんだ。

誰といる時の自分が好きなのか、その基準をお守りにして生きたい。

不在

生きる糧にします