MASKMEN PROJECTがどーにも終わりそうなのでその話をする

MASKMEN PROJECTって知ってます?って聞いても、まあ「知らない」って答える人がほとんどな気がします。

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『MASKMEN PROJECT』はサイコミで今年初めに開始された三つのシェアード・ワールド作品。超能力者が一般的になった世界でアメコミとか特撮のそれっぽいヒーローが活躍するよ〜という、言ってはなんですがすっごいよくある世界観を共有した作品を同時進行で連載し、それぞれのキャラクターと物語が別作品の物語にも絡み合うよ!という昨今では珍しい作品でした。作品は以下三つ。

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 サイコミ側としてもキモ入りの企画だったらしく、かなりしっかりした公式サイト浪川大輔小松未可子中村悠一といったかなり豪華なキャストを使ったボイスコミックが作られたりしてました。さすがサイゲームスくん、金がある。
 オリジナルMASKMENの募集とかいう某超人漫画っぽい企画をしたり、手の込んだツイッターアカウントを作ったりしてPRにもそこそこ力を入れてま した。オリジナル作品で目立ったヒット作が現状マジでないサイコミとしては本気でプッシュした作品群だったみたいです。

 多分このままもう1作品の連載が終わるとひっそり忘れ去られていくコンテンツだとは思うのですが、企画自体は(あまりにも使い古されてて逆に新鮮味すら覚えるテンプレすぎる世界観を除けば)割とチャレンジ精神に溢れた面白いものでした。
 
 例えば漫画のフォーマット。このプロジェクトの3作品は共通して縦読み形式、なおかつフルカラーという形で描かれてます。白黒で、横に読むのがデフォルトの日本ではあんまり採用されないフォーマットですね。
 実はこのフォーマット、ウェブトゥーンと呼ばれる韓国初の漫画フォーマットで、世界的に見ると結構な人気があります。
 LINEマンガの『女神降臨』とか、NETFLIXでドラマになったピッコマの『梨秦院クラス』とか読んだこと、もしくは広告で見たことある人はそこそこいるんじゃないでしょうか。

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 このフォーマット、スマホで読むときには中々快適です。その反面、書籍化がまるっきり向いてません。紙書籍はもちろん、電子書籍にするのも難しいので、単行本化はなかなかに絶望的になります。実際、MASKMENシリーズも一つとして電子書籍としてすら単行本を展開してません。他にも利点や欠点は色々あったりしますが、まあ既存のフォーマットも一長一短なので、そんなに悪いフォーマットでも無いかなあとは個人的に思っています。
 ただ、MASKMENシリーズに関してはこのフォーマットの採用はぶっちゃけ失敗だったかな〜という気がします。その理由に関してはっきり言っちゃうと、このフォーマット、バトル漫画に向いてない気がするんですよね。見開き描写の様な横を広く使う表現がどうしてもできなくなるので、決めゴマの迫力なんかがぶっちゃけ既存の漫画に劣ります。そんでまあ決めゴマってのはどーしてもバトル漫画だとガッツリ重視される部分ですから、そこの迫力がいまいち出ないとそれだけでかなり物足りない感じになります。あとまあスマホで読みやすい故にアクションが多くてセリフがそこまでおおくない回があまりにもサクッと読めてしまうので、なんとも言えない物足りなさを感じる時があります。真っ白なブリーチを読んだ時のアレって言えば結構伝わりますかね。こう言った事情があるので、MASKMENを読んでる時に「アクションがイマイチ映えないんだよなあ……」ってのを感じた時は多かったです。

 それ以外にも新連載の漫画に金をかけたしっかりとしたプロモーションをかける、というのもなかなか珍しいことです。昨年「サムライ8」でジャンプ編集部が盛大に金をかけてやらかしてますが、あれはNARUTOの作者の次回作という肩書きがあったからこそ。言っては悪いですがMASKMENの作家陣の名前はあんまり有名なそれではないです。作品のアニメ化経験があるのはシャドウニュート作画の大寺先生だけで、アニメ化された作品も完全オリジナルではなく『マギ』のスピンオフ。原作者の方は界隈では有名なあの漫画の作者ですが、それ以外のメンバーも含めて漫画家としてビッグネームかと言われると首を縦には触れない感じです。
 そういった作家陣の漫画にここまで金を出してプロモーションをかける、というのは珍しいなあという気がします。これが特に顕著なのがボイスコミックのキャストですね。新連載なのにここまで豪華な声優陣を起用するボイスコミックはあんまり多くはないです。
 11月以降、ジャンプの公式チャンネルで連載中の『僕とロボ子』、『破壊神マグちゃん』等をはじめとしたいくつかの読み切り・新規連載作品のボイスコミックが公開されてます。しかし、こちらのキャストは大半が無名声優です。キャストの名前という意味ではMASKMENのが何倍も強力な布陣を敷いています。
 ボイスコミックとしての連載をしていたMASKMEN(どれも10話前後まで更新されている)と、プロモーションオンリーの目的のための一回きりのボイスコミック化のジャンプ作品を一緒に考えていいのか、というあれは残りますが、それを踏まえた上でも力の入れ方は段違いです。まあ、そうした強力なプロモーション体制を敷いた上でズッコケたのですが……

 作品の内容どうこうに関しては今回は割愛。正直面白いか?と言われると断言できるのは怪しいのですが、総合して終わった二作品はそこまで悪くないような漫画だったとも思います。シャドウニュートとかタカヤの作者が原作やってるっていうのは信じられないくらい面白い時もあったし。
 ただ、コケた要因の一つとして世界観があるのはぶっちゃけ否めないかなぁという気もします。異能力社会+ヒーロー物って今は金字塔として『僕のヒーローアカデミア』とかがありますし、10年近く前のアニメだけど『TIGER&BUNNY』の影響力もいまだに根強い。シェアード・ワールドのヒーロー物という点ではそれこそアメコミ大手のDCとかMARVELとモロ被りしちゃってますしね。企業主体ってとこも合わせてサイコミ側としてはDCとかMARVELのそれを目指したんだとは思うのですが、あえなく撃沈といったところでしょうか。試み自体は結構興味深い企画だとは思ったのでサイコミではまたなんかこういうことをしてほしいなあと思ってます。どーせ親会社に金は腐るほどあるだろうし
 最後に、シャドウニュートの坂本先生と大寺先生、ジャックフォックスのASIWIN先生は約1年間お疲れ様でした。シャーリーのほろば先生は、今後も面白い作品を描かれることを応援しています。

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