悪の組織格付けチェック『るろうに剣心』十本刀編
こんにちは、悪の組織愛好家のなべはるです。
今日は、悪の組織格付けチェック第2弾『るろうに剣心』十本刀編をやってみます。
ちなみに格付けチェック第1弾では、『ダイの大冒険』大魔王軍を格付けして、15点満点中13点を記録しています。
志々雄真実率いる十本刀を、「組織力・チームワーク」「トップの魅力」「採用力」の3つの視点でそれぞれ星5つを満点にして評価します。なお、志々雄真実編のネタバレありまくりなので原作未読者はご注意を。
組織力・チームワーク ★★★★☆
まずは組織力・チームワークです。いかに組織として成果を出す仕組みになっているか?がポイントです。
◎ ミッションとバリューが明確
志々雄真実率いる十本刀の一番の特徴は、ミッションとバリューが明確なことです。
ミッションは組織が目指すもの。なぜ十本刀が存在するか?の問いに対して、「軟弱な明治政府に代わり、西欧列強にも対抗できる強い国を作るため」という明確な答えがあります。
そして、組織として大事にしているバリュー・価値観にあたるのがあの有名なセリフ、「所詮この世は弱肉強食。強ければ生き、弱ければ死ぬ」ですね。志々雄様はこのバリューを行動原理として生き、組織を運営しています。
弱肉強食を語る志々雄様
(るろうに剣心 和月 伸宏)
さらに、これらのミッション・バリューは、創業者である志々雄真実が明治政府に裏切られたという原体験から生まれたものです。良いミッションとバリューにはストーリーがあると言われますが、十本刀のミッションとバリューは志々雄真実の原体験から1つの線でつながったきれいなストーリーがあります。
他作品の多くの悪の組織では、組織の目的が不明瞭だったり、あっても「世界を征服する」というふわっとしたものであることが多いなかで、十本刀のミッション・バリューは明確かつ強烈なメッセージで文句のつけどころがありません。
【十本刀のミッションとバリュー】
ミッション:軟弱な明治政府に代わり、西欧列強にも対抗できる強い国を作る
バリュー:この世はしょせん弱肉強食。強ければ生き、弱ければ死ぬ
× 個の力に頼るばかりで連携しない
このようにミッションとバリューが一貫している十本刀ですが、弱点が1つあります。
それは、個の力に頼るばかりで連携したり協力することがほぼないということ。これはバリュー「弱肉強食」の悪いところが出てしまっていますね。
特に葵屋襲撃においては、十本刀どうしが連携・協力していればあそこまで負けることはなかったと思います。
葵屋を襲撃する十本刀。戦力差は圧倒的だった
(るろうに剣心 和月 伸宏)
比古清十郎が到着するまでは十本刀側が戦力では圧倒的に勝っていたにも関わらず、”飛翔”の蝙也・”大鎌”の鎌足が敗れて”丸鬼”の夷腕坊が逃走に追い込まれてしまったのは、十本刀側が個の実力を過信して協力しなかったことにあります。
葵屋側は、鎌足に操・薫コンビをあてたり、夷腕坊を御庭番衆4人組が足止めするなどのチームワークを見せているのに対して、十本刀側は何の工夫もなく挑まれた戦闘にただ応じるだけ。
取り巻きの兵隊で葵屋の戦力を何人かを足止めして、その間に蝙也・鎌足・夷腕坊が手を組んで各個撃破していけば負けようがなかったと思います(比古清十郎が到着するまでは)。
【組織力・チームワーク評価:★★★★☆】
・創業者の原体験に基づいたミッションとバリューが制定されているのが見事
・個の力に頼るばかりで、連携・協力して戦うことがない。葵屋襲撃では戦力で圧倒的に勝っていたにも関わらず、連携しないために惨敗した
トップの魅力 ★★★★★
つづいて、組織トップの志々雄様の魅力についてです。
◎ 志々雄様のカリスマと統率力
十本刀の構成員は非常に個性豊かで、目的も思惑もそれぞれです。
これだけ個性的なメンツをまがりなりにも命令にしたがわせているのは、志々雄様のカリスマあってこそでしょう。
十本刀勢ぞろい。なお張は…
(るろうに剣心 和月 伸宏)
部下からの信頼に篤い志々雄様。悪の組織にはありがちな、「命令違反」「裏切りイベント」が発生しないのは大きな評価ポイントです。
(補足)
”盲剣”の宇水が勝手に行動するのは志々雄も織り込み済で命令違反とまでは言えない
”刀狩り”の張が警察側につくのは、志々雄編終了後なので裏切りではない
◎ 部下の進言を受け入れるトップの度量
十本刀の組織力を表すエピソードとして外せないエピソードが、十本刀の運用方法をめぐる志々雄様と方治の意見対立です。
剣心たちとの決闘に真正面からぶつかろうとるする志々雄様に対して、方治は裏をかいて葵屋を襲撃しようと進言します。
方治の進言に対して志々雄様は、「いつから俺に意見する程偉くなった」とすごみます。決闘に対して裏をかくというのが剣客のプライドとして許せなかったのでしょう。
方治の進言にすごむ志々雄様。こわい…。
(るろうに剣心 和月 伸宏)
このこわーい志々雄様のすごみに対する方治の発言が下記。るろうに剣心のなかで、筆者が一番好きなコマです。かっこいい…。
(るろうに剣心 和月 伸宏)
誰から嫌われようとも、ただただ志々雄様のためにという方治の覚悟が感じられます。
この後なんやかんやあって(七爪の罰も見どころ)、志々雄様は方治の進言を受け入れて作戦を変更します。部下からの進言を受け入れ、前言を撤回できる悪の組織のトップというのはかなり珍しいです。部下の覚悟を汲んで進言を受け入れられる志々雄様。ワンマンで恐怖政治だけじゃない、良い上司の片りんが伺えますね。
【トップの魅力評価:★★★★★】
・個制定なメンバーを圧倒的なカリスマでまとめあげ、悪の組織にありがちな命令違反や裏切りを発生させなかった
・部下の進言を受け入れる度量の大きさも高ポイント
採用力 ★★★★★
最後に人材採用について。良い組織は優秀な人材を採用する力があるものです。
◎ ミッション採用で多種多様な人材の獲得に成功
上述のとおり、十本刀は個性的で多様な人材を採用しています。
各メンバーの採用経緯は本編では明かされていませんが(”天剣”の宗次郎除く)、これだけ多様な人材を採用できているのは明確な理由があります。
それは、前述したミッションとバリューが明確かつ魅力的であるためです。
【十本刀のミッションとバリュー】
ミッション:軟弱な明治政府に代わり、西欧列強にも対抗できる強い国を作る
バリュー:この世はしょせん弱肉強食。強ければ生き、弱ければ死ぬ
性格も目的もバラバラである十本刀のメンバーが志々雄の下で働いているのは、このミッションとバリューいずれか(または両方)に共感しているためです。まさか、明治時代にミッション採用を行っている組織があったとは…十本刀おそるべし。
ちなみに、志々雄様は自身の剣術にもバリューである弱肉強食を取り入れています。トップ自らがバリューを体現し、発言と行動が一貫している!理想のトップですね。
斬った人の脂で炎を生み出す、志々雄の弱肉強食剣術
(るろうに剣心 和月 伸宏)
その結果、下記のとおり多くのメンバーがミッションまたはバリューに惹かれて志々雄の下で働いています。
【十本刀メンバー別 志々雄の下で働いている理由】
◆宗次郎・鎌足・・・志々雄個人を心から慕っている。志々雄の望みを叶えたい
◆安慈・方治・・・明治政府に失望している。ミッションに共感
◆宇水・蝙也・才槌(+不二)・・・おそらく目的はあまりなく、ただ自分の力を示したい、最強だと証明したい。バリューに共感
◆張・・・作中で明言されていないが、おそらく1つ上と同じでバリューに共感したものと思われる。刀剣集めをするのには志々雄と行動するのが都合が良かったからか?
◆夷腕坊・・・唯一の例外で、ミッションにもバリューにもおそらく興味ない
良い採用をするためには、ミッションとバリューが重要であるということを改めて思い出させてくれます。
また、ときには採用のために交換条件を持ちかける柔軟さも見せています。
元僧侶として無益な殺生をしたくない安慈には「生殺与奪」の権利を。最強の座を(ポーズとはいえ)自分のものにしたい宇水には「隙あらば志々雄を殺していい」権利を与えているのです。
安慈は敵方の生き死にを自由にできる権限を与えられている
(るろうに剣心 和月 伸宏)
優秀な人材を採用するためには、その人に合わせた働く環境を提示することも大事ですよね。そんな柔軟さも持ち合わせている志々雄様は流石です。実際、そのおかげで宗次郎に次ぐ実力者2人を採用できています。
【採用力評価:★★★★★】
・ミッション採用、バリュー採用で個性豊かなメンバーを採用
・安慈や宇水のようにクセのあるメンバーも、それぞれに合わせた条件を提示することで仲間に引き込む採用力
総評
以上、志々雄様率いる十本刀を格付け評価してみました。
やはりというかさすがというか、最初から最後までほぼずっと志々雄様について書いてきました。十本刀は良くも悪くも志々雄様しだいの組織ですね。
志々雄様は一見するとワンマン社長で恐怖政治をしいていそうですが、考察してみるとミッション・バリューを明確にしていたり部下の進言を聞き入れる度量を持っていたりと、意外とスキのない組織運営をしています。
特にミッションとバリューは優秀過ぎて、採用にも社員のリテンションにもきいています。
ただ、「弱肉強食」というバリューはメッセージが強烈な分だけ諸刃の剣でしたね。個の力に頼るばかりで仲間どうしの連携・協力がなく大事な戦いに(戦力では圧倒的に勝っているのに)大敗してしまった点が唯一のマイナスポイントです。
【志々雄様率いる十本刀の格付けチェックまとめ】
組織力・チームワーク ★★★★☆
・創業者の原体験に基づいたミッションとバリューが制定されているのが見事
・個の力に頼るばかりで、連携・協力して戦うことがない。葵屋襲撃では戦力で圧倒的に勝っていたにも関わらず、連携しないために大敗した
トップの魅力 ★★★★★
・個制定なメンバーを圧倒的なカリスマでまとめあげ、命令違反も裏切りも発生させなかった
・部下の進言を受け入れる度量の深さも高ポイント
採用力 ★★★★★
・明治時代からミッション採用を行う先見性
・安慈や宇水のようにクセのあるメンバーも、交換条件を提示することで仲間に引き込む採用力
合計 14/15点
なんと、バーン様の大魔王軍よりも高得点でした。これはすごい!
考察は以上です。読んでいただきありがとうございました。
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