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金融商品販売における顧客保護の欠陥

 6月9日および10日の朝刊各紙は、証券取引等監視委員会が調査に基づき、いわゆる「仕組み債」の販売をめぐって、千葉銀行とちばぎん証券、武蔵野銀行に対する行政処分の勧告した旨を大きく取り上げている。
 銀行に対しては、主として、顧客属性を確認しないまま、顧客を仕組債購入へ誘引している状況が問題にされ、証券に対しては、「契約締結前交付書面の交付に関し、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明をすることなく、金融商品取引契約を締結する行為」(金融商品取引業等に関する内閣府令117条1項1号)と、「顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており、又は欠けることとなるおそれがあること」(金融商品取引法40条1号)が問題にされた。
■ちばぎん証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2023/2023/20230609-1.html
■株式会社千葉銀行に対する検査結果に基づく勧告について
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2023/2023/20230609-2.html
■株式会社武蔵野銀行に対する検査結果に基づく勧告について
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2023/2023/20230609-3.html

 千葉銀行は、地銀のうちでも大手行であり、ガバナンスもそれなりにしっかりしているものと思われていただけに、金融商品販売にかかる基礎的なコンプライアンス対応に欠陥が指摘された影響は少なくない。
 金融商品販売においては、法令上の規制にとどまらず、ソフトローとして、「顧客本位に業務運営に関する原則」が2017年に定められ、顧客保護を本格的に考える業務運営がそれなりに定着してきたものと考えられてきただけに残念というほかない。
 証券取引等監視委員会の公表資料でも、千葉銀行主導で、不適切な誘引・勧誘が行われていたようで、「同行する銀行員が年上の方だと、リスクの説明を強調して話すと睨まれることがあり、後で指摘されることもあった」(証券営業員へのヒアリング結果等)など、コンプライアンス無視の営業が、なぜ、あれだけの銀行でまかりとおったか、当事者の弁明も聞きたいものである。
 営業現場では、顧客にも銀行にも利益になる商品を勧めようとしたものであり(ところが、環境が変わって意図したとおりにいかなかったという)、この限りで適合性原則等に優先する価値基準になったという逆転現象が生じたものと想像するが、これを是正するのが、組織体としてのコンプライアンス態勢であることは強調しておきたい。