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キーボードを替えた話

 スマートフォンやタブレットの普及でタッチパネルによる文字入力がすっかりポピュラーなものになったが、自分は相変わらず物理的なキーボードが好きだ。文章を入力するのも、スマートフォンでフリック入力するのとPCでキーボードを使うのとでは、入力速度もタイプ精度も大分違ってくる。
(ついでに言えば、スマートフォンやタブレットで長文を入力する気には到底なれない) 

 小学生の頃にMSXを買い与えてもらってから、ずっとPCのキーボードに触れてきた。いつの間にかタッチタイピングを覚え、十代の後半はひたすらテキストエディタに文章を打ち込んでいた。絵や音楽の方面に才能は全くなかったので、せいぜい自分にできるのは文章の入力くらいのものだったせいもある。その頃使っていたPC-9801のキーボードは、メカニカルスイッチで打鍵感が気持ちよかった。
 社会人になって自分の稼いだ金で自分のPCを揃えてからも、キーボードはずっと身近なものだった。その頃はまだキーボードにこだわりはなかったので、PCに付属してくるキーボードかショップで980円程度の安いキーボードを使っていた。それでも毎日個人サイトを更新し、夜な夜なチャットで発言していたのだから、疲労が出なかったのはひとえに若さのなせる業というものだろう。
 それなりの年齢になった時、世に出回っているキーボードには色々な種類があることに気がついた。メカニカルスイッチやメンブレン、パンタグラフ。とりあえず十代の頃に使っていたPC-9801のキーボードが懐かしかったので、数晩悩んだ挙げ句にメカニカルキーボードを購入した。FILCOのMajestouchで、カチカチという打鍵音が気持ちよかった。

 年月の経つのは早いもので、Majestouchを購入してから8年経った。経年劣化というものは何者にも等しく訪れるもので、Majestouchもいつしかつや消しのキートップがテカテカ光るようになり、文章をタイプしているとキコキコ音を発するようになり、終いには一回押しただけなのに複数入力されてしまうチャタリングが頻発するようになった。8年もトラブルなく使えたので、満足である。

 代わりのキーボードを買わなくてはならない。メカニカルキーボードを使ってきたので、いまさら安いキーボードでは満足できない。それならば、いっそ高級キーボードと呼ばれるものに手を出すべきか。Majestouchの時は数晩悩んだが、今回は数週間悩み続けた。
 結果として選択したのが、東プレのRealforce。静電容量無接点方式を採用した、国産キーボードの雄である。昔から気になってはいたものの、キーボード単体としては価格がトップクラスで、あまり金に余裕のなかった若い頃は端から諦めていたものだった。
 今回購入したものは、最もベーシックなR2-JPV-IVというモデルになる。日本語配列(かな刻印あり)でテンキーあり、変荷重(キーの位置によって荷重が変化する)のアイボリーだ。意識が高い方々ならば英字配列やテンキーレスを選ぶところだろうが、全くそちらへの意識が及ばない質なので彼らとは真逆の道を歩むことになった。

 キーボードが届いた日が出勤日だったので数日間はそのまま寝かせておいたが、いい加減に触りたくなったので在宅勤務の日に自宅PCに接続して軽く文章を打ち込んでみた。
 キーをタイプする感覚が「スコスコ」もしくは「コトコト」と形容すべきもので、仕事で使っているメンブレンよりもタイプする力が要らないのは非常にありがたい。キーを打ち込む反動もメカニカルスイッチとは違う独特なもので、薬指や小指で使う位置のキー荷重が軽いため長時間タイピングしていても疲れが出にくそうだ。さすが業務用として定評のあるキーボードだと思う。
 以前はテンキーレスのキーボードを使っていたが、やはりテンキーがあると数字の入力が捗るので文章の入力ペースも上がる。見た目を気にせず、フルキーボードを選んで良かった。
 アイボリーでかな刻印があるキーボードの外観も、何となく昔使っていたPC-9801のキーボードを彷彿とさせて懐かしさを覚える。日本語入力に関しては、速度を突き詰めていくとかな入力が最速ということになるらしいので、機会があればかな入力も覚えておきたい。

 やや高額な買い物となったが、Realforceは文章の入力が楽しくなるキーボードだった。独特の打鍵感が気持ち良く、ずっと何かしら打ち続けていたいという気持ちになる。各所のレビューを見た限りでは耐久性も相当高いようなので、今後も末永く使っていきたい。
(埃よけのキーボードルーフを、後でオーダーしてしまった)

 余談ではあるが、MacBookなどノートブックに採用されて現在ポピュラーになったアイソレーションタイプのキーボードが苦手である。キーの間隔が空いているのでタイプミスしづらいという主張もあるが、自分の場合はキーの間隔に惑わされてタイプミスを頻発してしまう。ついでに言えば、それらのキーボードは大体薄く平たい板状なので、長時間タイプしていると指先が痛くなる。
 やはり、キーボードは昔ながらの厚みがあってキーストロークが長く、ステップスカルプチャー形状のものが一番使いやすい。そういう話を職場の比較的若い人々と交わしたところ、「その好みは正直お爺ちゃんだと思う」と一笑に付されてしまった。時の流れは残酷である。

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