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再び自転車乗りになる

 二十年ぶりに、自転車に乗り始めた。

 小学生の頃から自転車に乗り始め、二十代前半まではずっと自転車で移動していた。通学はもちろんのこと、駅前に遊びに行くにも自転車、一つ山を越えて隣町まで買い物に行くにも自転車、遠い親戚の家に遊びに行くのも自転車だった。親戚の家に行った時は、あまりに遠距離を走ってきたので疲れ果ててしまい、軽トラックの荷台に自転車を載せて家まで送り届けてもらった。
 しかし、二十代前半に自分の車を手に入れると、自転車は物置で埃を被ることが増えてしまった。何しろ、車は雨の日でも濡れずに移動できるうえに筋肉を酷使しないので疲れない。根が怠惰なので乗られなくなった自転車は年月とともに錆つき、最後は廃品回収車に引き取られていった。

 以後は二十年間、移動するのは徒歩か車、あるいは公共交通機関を利用してきた。特に不便を感じることはなかったが、生活していると「車で行くほどでもないが、かと言って徒歩で行くのは面倒な距離」への用事がどうしても出てしまう。そういう中途半端な距離感を、歳を重ねるにつれて面倒に感じるようになってきた。
 かつて自転車で普通に通っていた場所へ、面倒だからと行かなくなるのはもったいない。そういう気持ちが生まれ始めたのは、決して若いとは言えない年齢になってからだった。しかし、坂の多い街で自転車のペダルを漕ぎ続けるのは体力的に厳しい。そうなると、選択肢は電動アシスト自転車一択に絞られた。

 かれこれ二年ほど逡巡して購入したのは、Panasonicのベロスターミニになった。電動アシスト付きのスポーツタイプのミニベロで、色はマットオリーブ。少しばかりの荷物を載せられるように前カゴだけ取り付けた。
 若い頃は通称ママチャリと呼ばれるシティサイクルしか乗っていなかったので、初めての電動アシスト自転車、初めてのダイヤモンドフレームの自転車、初めてのミニベロとあらゆることが初めてづくしになった。注文した自転車店から入荷の連絡があり、受け取りに行く前夜は興奮して寝付きが悪かったのを覚えている。まるで子どものようだ。
 クリスマスの前日に納車され、以後は近所へ出かける時に乗り回しているが、電動アシスト自転車という乗り物は想像以上に快適であることに気がついた。路面の状況に応じてモーターが適度にアシストしてくれるので辛いと感じることはなく、それでいて「自転車を漕いでいる」という肉体的満足感も得られる。さらに平坦な道では想像以上にスピードが出る。努力義務ということで、事前に自転車用ヘルメットを購入していて本当に良かった。

 心配していた車との共存も、出かける場所に応じて使い分けていけそうなので利用状況がどちらかに偏ることもないと思う。今後は「車では面倒だが、歩くには面倒」な距離感の場所へ積極的に出かけてみようと考えている。
 とりあえずは、朝の通勤をバスから自転車に切り替えてみることから始めようか。

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