アートの誇大妄想

彦坂尚嘉氏「ヨーゼフ・ボイスのことをちょっと良いね、と思うのは仕方がない。コンビニ弁当で言えばローソン(彦坂・格付けで5流)、ファミリーマート(6流)よりちょっと良い。」

 
昨日見た、以下動画について。
 

【ヨーゼフ・ボイスのウソ】彦坂なおよしのアート論
https://www.youtube.com/watch?v=d1xytRaoonw

 
ヨーゼフ・ボイスの「社会彫刻」の主張に見られるような「誇大妄想」(=精神医学で言うと「精神病」のカテゴリー)のアートにおける系譜というのは、確かに戦後・ドイツ系のアーティストに多く見られるという印象は私はある。私が直接見た中では、キーファーの他、滑稽味が入っているが、キッペンベルガーもその系譜ではと。それとの日本との親和性ですね。それを彦坂氏は共に敗戦国であり、かつての枢軸国同士という関連を考察しているようだ。

親和性として、例えば「環境」(問題)に過剰に熱狂するという部分も。「環境」イデオロギーの発生元も、ナチスであるということも今日指摘がされている。ボイスも、元ナチスから資金援助を受けていたと、ドイツで近年出版されたボイスの伝記で。

誇大妄想系は、古くは、フリードリヒなどもそうではないか。

 


https://ja.wikipedia.org/wiki/カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ


参照。
 

「ドイツ人には自然回帰の傾向が強く、森林破壊に反対する右派が1977年に「緑の党」を結成した。そのロゴマークを描いたのは元ナチス党員で、太陽はナチスのシンボルだった。」
https://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/52077519.html

 

「ベルリンのドイツ歴史資料館に行くと、ボイスの資金提供者だったカール・ファストアーベントに関するナチスのファイルが私のテーブルに置かれました。その瞬間、ボイスがいかにナチスと密接な関係にあったかを理解したのです。ボイスに対して全く別のイメージを持っていたので、本当にショックでした。」

戦後を代表するドイツ人芸術家ヨーゼフ・ボイス 偽りだらけの過去
https://www.swissinfo.ch/jpn/culture/ドイツ人芸術家ヨーゼフ-ボイス-伝記/46618226?fbclid=IwAR31KhLRmxr7q1trpvCq3yS8un66mrR3xi4ckGqYnyw6p1SGekIGA_VFb10

 
ちなみに東京藝大での上記動画で触れられている、ヨーゼフ・ボイスの大規模講演会は、私の入学前年であった。絵画科油画専攻の当時助手らが企画したものと、私は伝え聞いていた。私自身が在学中、大学院で工藤哲巳研究室に入る前に、学部時最も気にした作家はマルセル・デュシャンとともに、ヨーゼフ・ボイスでしたね。洋書も何冊か買っていた。評論家・針生一郎氏のボイスについての講演にも、私は足を運び熱心に聞いていました。

それらの対象の鍍金が、心理的に私から完全に剥がれたのは、実に、まだ比較的近年では(10年以内)。

ボイス伝記著者・ハンス・ペーター・リーゲル氏は、ボイスは「大学で自然科学を学んでいたことも、戦場での経験も、国家社会主義者(ナチスのこと)としての過去も偽りでした。」と語っているので、ボイスが自身の作品およびパフォーマンス等に関連付け語っていたことは創作だったということで、パイロットとして従軍中に撃墜され、現地人にフェルトや脂肪で包まれて橇で運ばれ救出されたという話も、感動を誘う「ええ話」レベルだったということになる。「体温」とか「大地」、「生命力」等を想起させる仕組みの。

私が先行して、鍍金が剥がれていたのは、主に惹かれていたボイスのドローイング等の良さについて、「やっぱり構造的に弱いな」「空間ができていない」等と気づいたからだが、この約10年間に。

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