DVDピックアップの解説


レーザー顕微鏡を作っていくうえで最も重要な、DVDピックアップについてまとめる。

DVDピックアップ PHR-803T

X-BOX360のDVDドライブに採用されているピックアップ。仕様が公開されていないのにみんな大好きで、さかんに応用されている。例えば・・・

  1. μflow  蛍光検出ツール

  2. GaudiLabs DVD Laser Scanner Microscope レーザー顕微鏡

  3. Hacking the PHR-803T  フィルムレジスト露光装置

"μflow"については、精子の検出とか出てきて分野外の方は面食らうかもしれないが、めちゃくちゃ詳しくピックアップを調べてデータを載せてくれていて、すごく有用。

他にもGoogle Scholarで探していくと、AFMのカンチレバーの変位検出とか、バイオ系のホログラフィック顕微鏡への応用とか、色々見つかる。

情報が多く出ているので、自分で1からという感じではないのが救い。回路に慣れていて基板作ったことがある人ならそれほど困らず動かせるはず。

ピックアップについて

機能としては、大まかに3つに分けられる。

  • レーザーダイオード

  • ボイスコイルアクチュエータ(VCA)

  • 受光用IC

0.5mmピッチ45ピンのFFCで接続できる。ピン配置はμflowに詳しく書かれている。

※注意
レーザー出力が高く(120mW)、ヘッドをDVDドライブから取り出した状態だとクラス3Bになる。焦点距離が1mmほどなので目に直接入射する可能性は低いが、ゴーグルなどの保護具は準備しておいた方がいいだろう。

レーザーダイオード

ここの仕様がよくわからない。適切な電源と、Intensity端子にDCかPWMで輝度を入力すると、それに応じて光量が変わる様子。私は後述のDACの余っているChを利用している。赤外、赤色、UVを切り替える端子があり、観察内容に合わせて選択すれば良いと思う。

ボイスコイルアクチュエータ(VCA)

レンズの上下動作(フォーカス)、水平動作(トラッキング)、傾き動作(チルト)にそれぞれ対応したVCAでヘッド部分を動かすことができる。私はDAC(MCP4922)で電圧を作って、それをパワーオペアンプで差動にして駆動している。±1Vぐらい印加できれば多分よい。PWMで駆動する例もあるようで、そちらの方が回路が楽かもしれない。フォーカスとトラッキングは大体±1mmぐらい動作する。こんな感じで動く。

XY移動は手ぶれ補正ユニットを利用するので、トラッキングは使わないかも。

受光用IC

先人の調査を見ていくと、ピックアップに使われているPDICがMelexis MLX75012であることがわかる。この部分はほぼ仕様が判明しているといっていいようだ。

↓に示す素子の出力を使って演算し、色々な結果を得る。(B+D)-(A+C)はフォーカスエラー信号と呼ばれ、フォーカスが合っている近辺数umの範囲でフォーカスがどっち方向にずれているかを検出できるらしい。単にA+B+C+Dで反射強度になる。E, F, G, Hという素子もあるようだが、使い方がわからない。(E+F)-(G+H)でフォーカスエラー信号と同様に扱うのかな?一般的にはアナログ演算するようだが、ADCのChが許す範囲で個別に見れるようにしておくことにした。(このために、割といいADC ADS124S08の子基板を作った)

MLX75012 Datasheetより受光素子の形状パターン

試料台にブルーレイディスクの破片(DVDがなかった・・・)を置いて、ヘッドフォーカスを変えながらそれぞれの信号を見てみる。

ヘッドを上げていった場合の検出値 RF=A+B+C+D, FE=(A+C)-(B+D)

どの素子からもそれっぽい信号が出てきていて、少なくとも輝度(RF)はそこそこ綺麗な形のピークになっているようだ。フォーカスエラーを見るにはもう少しノイズ落とさないと難しそう。そもそもこの信号は8umぐらいしか直線領域がないようなので、よっぽど平坦でないと活用厳しいかな。F, G, Hもきちんと取れているが、A, B, C, Dに比べるとブロードになっている。

ヘッドと試料台の傾きを調整すれば、もうちょっと違うデータになるかもしれない。

実際の像の見え方

0805のチップ抵抗(2mm*1.2mm)を手ぶれ補正ユニットで試料走査してA信号を2次元マップにすると、よい感じの像が得られた。

見えた!!

まとめ

像の確認までできたのでこの記事はこれで一旦おしまい。
次は手ぶれ補正ユニットについて解説する予定。


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