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猫にお手

きっかけは、旅に行こうと思ったことからだ。

2泊3日の旅行中、自立心と食欲の旺盛な飼い猫にどう過ごしてもらうかを考えた。自立心旺盛ゆえ、人間の2~3日の不在はさほど問題にはならない。しかし、食欲旺盛ゆえ、置き餌なんてたとえ3日分でもたちまちにして食べつくしてしまう。困った末自動給餌機を置いた。これでご飯の心配はなくなったが、旅行から帰ってきても自動給餌機さえあれば、人間なんていらないとばかりに機械に夢中なのだ。
ねえ、このご飯をあげているのは機械ではないのだよ。人間なのだよ。
給餌機をすみやかに片づけ、ついでにご飯の出どころが人間であることをより認識してもらういい手はないか考えた。ちょうどこの頃、『しゃべるねこ』や『お手をするねこ』が動画サイトで話題になっていたこともあり、うちもお手ならできるんじゃないの?と始めてみたら、食欲旺盛にして物覚えのいい猫ゆえ、餌付によりたちまちお手を覚えた。一時期は「お手」「お代わり」「しっぽトン(しっぽで床を叩く)」までやっていたが、しっぽは神経の通う大切な箇所であることを何かで読み、今ではお手だけに落ち着いている。

ご飯のたびにお手をするからといって、人間がご飯をくれるありがたい存在だと認識してくれたかどうかは、かなり心もとない。というか、完全に人間側の自己満足でしかない。ただ、お手の反応を見ると、猫のコンディションはよくわかる。朝は空腹のピークだから、お手というよりはビンタのようなスピードだ。お昼はまだ余裕があるから、ゆっくりと「お手」「お代わり」に応じてくれる。朝に昼のようなゆったり感だと、…どこか調子悪い?と心配になる。猫の健康のバロメーターとしてだけ、わが家のお手は機能しているようだ。そして、食欲旺盛な猫ゆえ、「待て」だけはぜったいにできない。試してはいないが、間違いない。


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