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「目の見えない白鳥さんとアートを見に行く」感想

最近聞いている(見ている?)、美術に関するお話がとても興味深いVTuberさんが紹介していた本作。
とてつもなく濃い本で、一章毎に色々な気づきや問いかけ、ドキッとすること心がやざわつくことがあり、文章は読みやすいのですが私の処理能力が追いつかず休み休み読みました。
著者の方が長い期間かけて体験したことをギュッとまとめているのだからそりゃそうだなという感じなのですが、これまでなかなかこんな本を読んだことがありませんでした。
素直に読んで良かったと思った一作です。

先ず何と言っても気になるのは「目の見えない方がどうやってアートを楽しむのか」ですが、白鳥さんは一緒にいる方々に何が見えるか説明してもらって楽しむとのこと。
しかも、頭の中で想像するモノを、見える人が見えてるものに寄せていくという楽しみ方ではなく、人がそれぞれいろいろな見方をしている事自体を楽しむという…。。
恥ずかしながら私はこの本ではじめて「対話型鑑賞」というものを知りました。
有名な企画展の際に何度か美術館に足を運んだことはありましたが、誰かと行ってもなんとなくはぐれて一人でマイペースに回るのが常。
まぁ、それはそれで好きに好きな絵を見て回れて楽しくはあるのですが、美術に関する知識もないので、することといえばやっぱり自分の好みの絵を「好きだなー」と見るしか無いわけです。(それもそれで良い)
でもよく考えたらやっぱり見終わったあとの感想戦みたいのも楽しいし、それなら見ている最中にぺちゃくちゃ思ったことをお話できたらなお良いなと思いました。
しかも知識がなくても良いというのが嬉しい!
ということで、こんどいい企画を見つけたら、対話型鑑賞しに行ってみたいと思ってます。

心が一番ざわついたのは、優生思想についての章です。
よく言われるのは「(過去の悲しい歴史でわかるように)優生思想はNG」ということ。それは理解しています。
でもずっと思ってたのは、何かをみんなで負担しなくてはいけないときに、負担できない人がいたら、他の人の負担が当然増えるよねということ。
しかも、私達はずっと、勉強がよりできるように・運動がよりできるように・仕事がよりできるようにと思って生きてきたのだから、できなくてもいいという価値観はなかなか受け入れづらいし、それは仕方のないことなのではということ。
だから自分の中でくすぶっているちっちゃな優生思想みたいなものは「あるけど、出してはいけないもの」として整理してきました。
その燻りをこの本はとてもうまく言語化してくれたなぁと思って、それは「優生思想」と「向上心」の違いについての問題ですね。
結論を言ってしまえば単純で、「もっとできるようになりたい」を自分に向ければ「向上心」、「もっとできるようになる"べき"」と人に向けたら「優生思想(ぽいもの)」になってしまうんだと認識しました。
ただ、一番難しいのは子どもの問題だなと思いました。子どもに生を与えるのは親なので、どうしても親だけの・子供だけの中の「向上心」の問題にとどまらない面がある。そういう意味で、筆者の方がお子さんのことで泣いてしまった経験や、泣いてしまったという事実が何を示すのかということに気づいてしまった時の辛さは、本当に伝わってきて苦しかったです。
私は今そういった状況に無いので特に意見は持ちませんが(というか関係ない第三者が一般論を持ってしまうこと自体が「向上心」の範疇を超えてしまうと気づきました。)、白鳥さんが「小さな優生思想(きっとこれは向上心ですが)は誰にでもあるのではないか」という趣旨のことを仰っていたのがとても印象的で、ちょっと救われた気がしました。

ほかにも、夢を見に行く施設や裸足で楽しむ施設など、アートって色々な形があるのだなぁと興味深く読みました。
紙の本を読む習慣も少しずつ復活させていきたいな

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