風俗と競馬が好きな人こんにちは 23 性感エステデビュー⑤ 2人目のお客さん 其の一
こんにちは夏子です。
前回の続きです。
風俗デビュー初日の2人目のお客さんも強烈な印象を残してくれました。
「なっちゃん、次の人も古くからの常連さんや。怖くないからがんばってや」
「え?怖くないから?」
「いろんなこと教えてくれるわ」
お店を出て自動販売機の前を見ました。
杖をついたおじいちゃんのような人が立っていました。
でも、、街でよく見るおじいちゃんとは何か雰囲気が違う。
「夏子です。番号札をいただきます」
お客さんはお店を出る時に番号札を持たされ、それを女の子に渡すことになっています。
その人は頭髪は白く、腰も少し曲がっていて金縁のサングラスのような眼鏡をかけていました。服は麻の黒い半そでのシャツにグレーのスラックス。
履物は草履です(その人は雪駄・セッタと言っていました)。
夏子のおじいちゃんもこんな草履をはいていましたが、何年かぶりで草履をはいている人をみました。
そして杖を握っている右手の薬指には、サイコロのような正方形の分厚いゴールドの指輪。
歩く速度がゆっくりなので1分ぐらいかけてホテルに到着しました。
さっきの1人目のお客さんの時よりも余裕がありました。
部屋に入るまでに服装チェックしながら
「すごい高そうな指輪ですね」
「これは手作りや。もう50年ぐらい前かな、知り合いの歯科技工士に純金を渡して作らせた。初めはものものしさがあったけど50年も使っていると角も取れて味わい深い逸品になってきよった。
若い時は中指にしていたけど、病気して痩せたので今は薬指にしている」
部屋に入ってからも話は続きました。お店を出る時に小さなカン入りのお茶を持たされています。それを開けてお客さんに渡しました。
1人目のお客さんの時はこのお茶を渡してもらうのをお店が忘れていました。
「ちょっと待って下さいね。お店に電話をします」
店長が無愛想な電話の応答で受けてくれました。
「どんな病気をされたんですか?」
「15年程前に脳梗塞をやって左半分にマヒが残った。酒の飲み過ぎが祟った。学生の時から毎日浴びるように飲んでた。オネエチャン、応援団って知ってるか?」
「大学のですか?チア―リーダー部というのはありましたけど」
「オネエチャン大学出てるんか?ワシらの時はそんな可愛いモノはなかった。男ばっかりでみんな学ランや。それも長ランという長いヤツ」
「テレビのコントなんかでお笑い芸人が着ている黒の長い学生服ですよね」
「毎日授業に出ないで援団(応援団のこと)の部室で麻雀しながらヒヤ酒飲んでた」
「えー、そんな大学生は見たことも聞いたこともありません」
「嗚呼、花の応援団 という漫画知ってるか?映画にもなったわ」
「知りません」
「そりゃ知らんわな。何十年も前のことやから。アレはワシらの援団がモデルや。漫画では面白おかしく描いているけど、だいたいあの通りや」
さすがの読書好きの夏子でも知らない本でした。あの時は帰宅して直ぐにネットで調べました。面白そうなコミックだったのでいつか読んでみたいと思ったのですが、今現在まだ読んでいません。
「応援団というのは運動部の試合会場に行って、我が大学の選手やチームを応援するんや。ワシらは試合に負けても応援では負けないように気合を入れて試合の応援をやっていたもんよ」
「部活がんばっていたんですね」
「今は部活って言うんやな。そんな言葉にされたらちょっと違うな。ワシら大学の用心棒のようなこともやってたんやで」
「よ、用心棒?全く意味がわかりません。大学生でしょう?」
「あのころ、学生運動というのが流行り出して全国の大学で決起した学生たちが、左翼思想の全学連というのを組織して、国に対しての不満をデモ行進して、あっちこっちで機動隊と激しくぶつかりあってたわ。
ウチの大学の構内にも、学生を勧誘するような立て看板を立てたり講義室を占拠したりして授業ができない状況を作り出していたんよ。
ワシらは今日も休講、今日も休講で授業がないことを喜んでたんや。
ところがある日、応援団が練習に使っていた場所に立て看板を並べよった。
ワシらは団員総出でその看板と学内の他の場所にあった看板を撤去して、
全部グランドまで運んで燃やしたってん。火の不始末がないように1年坊4~5人をその場に残して、ワシら幹部は部室に戻って麻雀やってたんや。
そしたら1年坊の1人がすっ飛んできて、
団長!えらいこってす!あいつら30人ぐらいで押し寄せて来ました!
鉄パイプや角材を手に持ってます
それでお前らはどうした?逃げて来たんか?
いえ、乱闘になっています!
よし、これが(麻雀)終わったら見に行ったるからお前らだけで持ち応えろ。
そ、そんなァ、、なんぼなんでも相手は武器を持ってるし30人ですゥ。
あんな奴らにやられたら団の面目丸つぶれです
う~ん、それもそうやな、団の面目というのは1番大事なことや。ほな行くか。
と言って部室に残っていた2~3人も連れて現場に行ったんや。
全学連の奴らはデモ行進する時はヘルメットをかぶって、サングラスにマスク。手には鉄パイプや角材を持つのがスタイルやった。
せやけどなオネエチャン、あいつらは高校の時は勉強ばっかりして、大学生になってもマルクスやレーニンや言うて難しい本を読んで思想が左に傾いていった連中や。
それに比べてワシらは高校の時からケンカばっかりして、大学に入ってからも応援団の厳しい練習や先輩のシゴキに耐えて、団の威信やメンツのために体を張ってきた。
実戦で鍛えてきたワシらと、機動隊ともみ合うだけの連中では力の差は歴然や。ワシらが2~3人学ラン着て街を歩いたら、ヤクザでも道を開けよってんで。
力関係もわからんような、ひょろひょろの奴らが、数の力で勝てると思ったのか、、ワシらは総勢10人ぐらいやったけど連中をボコボコに叩きのめして何人も病院送りにしてやった。
そのことを大学の事務職員が見ていて、あくる日に学生課から呼び出しがあったんや。停学を喰らうんかなと思って行ったら、課長が出て来て
昨日はよくやった!って褒めてくれるやないか。乱闘騒ぎして褒められるとは思わんかったわ。大学側も連中の扱いには手を焼いていたようで、注意しても小競り合いになるし、かと言って他大学のような警察の介入も避けたいし、、、困っていたみたいやった」
夏子の全く知らない世界のお話でした。わずかに昭和の学生運動の時代の恋愛小説は読んだことがあって、時代背景は少しはわかるぐらいで、こんなに掘り下げたコアな話に大いに興味をいだきました。
でも、でも、この時すでに40分が経過していて120分コースで入ってもらっているとはいえ、1人目のお客さんが言っていた
「オープニングトークで30分も引っ張る風俗嬢になったらあかんで」
というのが頭の中から離れず時間が気になっていました。
「すごい面白いお話ですね。マッサージをしながら続きを聞かせて下さい」
「オネエチャン、時間気にしてるんか。店に電話して60分の延長できるか聞いてみ」
「延長ですか?」
延長の時の手順を聞いていなかったのでお客さんに言われるまま、お店に電話を入れました。この日は最初から2人と決まっていたので後の時間にお客さんは入っていません。
電話で追加料金のことを聞き、先払いでその場でお金をもらって、60分の延長が決まりました。
このあとも面白い話は続き、性感エステシャンとしての心構えや、アナル性感のやり方、男の潮吹きのテクニック、SとMの話などオーナーが言っていたようにいろんなことを教えてもらいました。
そのお話は次回へ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?