音博~NOW AND 弦へ

私が今回の音博に特別な想いを持って行こうとしていたのは、結成20周年&音博10周年の節目の年だからというのもありますが、チケット販売直後に公表された"NOW AND 弦"の存在が大きく関わっていました。

前にも書いたのですが、ウィーンアンバサーデオーケストラとの再演ということで、NOW AND THEN企画が進む中、vol.3アンテナ回)の後、"弦"でワルツへ飛ぶのであれば、その間にあるNIKKIはどうするのだろう?タイミング的に音博でざっくりまとめてしまうのではないかとの懸念がありました。私にとってNIKKI~ワルツの間は、くるりファンとしての熱が一番高かった大切で思い出深い時期なので、そこを逃したくないという気持ちが強くありました。

しかし、東京から京都へ行き、すぐにまた戻ってこなければいけないということもあり、決断をしかねている間にチケットは完売。
例年に比べ参加アーティストの数が圧倒的に少ないこと、「今回くるりはいつも以上に長く演奏する」というコメントが出ていたことから、やはりこれはNIKKI~ワルツの流れになってしまうのでは?という考えが次第に強くなり、チケットの譲り手を探し始めました。

けれども、それは困難を極めました。SNSで熱心にチケットを探している方々の多くは明らかにくるりファン以外です。おまけにオークション利用なども相まって元値の2倍以上が当たり前についているような状態でした。私は値段をつりあげている輩やその方法に賛同しかねるというのもあり、きちんと正規の値段で譲ってくださる方を探していたので、空振りばかりで、本当に前日まで一向に見つかる気配がなく、半ば参加を諦めていました。その後のことは、”京都音楽博覧会2016”で書いた通りです。

そして、中止により失意の中、京都から帰ってきて、そのまま、普通の一日を過ごし、帰宅してはまた考え込み塞ぎこんでいました。考えれば考えるほど深みにはまり、「ちょっとこれはだめかもしれない(また卒業の危機か…)」という感じになっていました。

"NOW AND 弦"も人気公演なのでチケットの確保ができていませんでした。
「もう行けなくてもいいかな…」等と思いつつも、「でも、ここで行かなかったらきっと私はもうくるりを聴かなくなるだろう」という気配もあり、可能であればそれは避けたいとも思っていました。やはり彼らの音楽と共に濃密に過ごしたあの時期、あの感情は失いたくありません。

SNSを使い、譲り手を探し始めましたが、一向に見つかる気配はありません。それでも、迷いながらも、会場へ向かうことにしました。オーチャードホールは生活圏内にあるので、行きやすかったというのもあると思います。
ダメだったらそういう運命だったんだ。何かおいしいものでも食べて帰ろう。ぼんやりそんなことを考えながら、機会を待ちました。しかし、事態はなかなか進展しません。
そこで、(「キャンセル分の当日券が若干数出る」という社長のツイートも、見たのが遅かったので、)もうダメだろうと思いつつも、当日券窓口に行ってみました。やはり、当日券受付は終了してしまっているとのことでしたが、もしそこでもキャンセルが出た場合、開演以降、受付をする可能性がある(確約はできない)というお返事でした。
結局、開演時間になってもチケットの譲り手は見つからなかったので、その先あるか無いかはわからないけれども、当日券キャンセル待ちにかけて、窓口前に並ぶことにしました。

結果、開始から10分過ぎくらいの時間に、キャンセル分の開放がアナウンスされ、当日券を購入することができました。3階最後列の中心という席でした。
急いで場内へ向かいました。扉の中からeverybody feels the sameが聴こえます。音博後の緊急配信のセトリツイートを見て感じてもいたのですが、改めて、"これはワルツの回ではない"と気付きました。
係の方に扉を開けていただき、入り口付近で曲が終わるまで待ち、終わったらすぐさま座席へ向かいました。最後列ですが、高い位置からステージ全体が見渡せるのでさほど悪くないと思いました。

途中からになってしまったのは残念でしたが、公演は充分楽しめました。セットリストが、思い入れの強い時期のものが半分、それ以降のものが半分くらいで、あまり感傷的になりすぎずに済んだというのも良かったかもしれません。
何より、音博中止後に感じていたもやもやや懐疑的な気持ちが、美しいオケのハーモニーによって洗われ、浄化されていく感覚がありました。それは大きな救いでした。
初日はアンコール(1曲)を含めて2時間弱。はじめはなかなか音が入ってこなかったのですが、徐々に心の氷が溶け始め、素晴らしい音に打ち震えた至福の時でした。

終演後、近くのスリランカカレー屋さんで食事をしました。

食事後、会場に戻ってきてもこの時間帯です。健全。(帰宅も楽で助かりました。渋谷だと食事も交通も、うまいことばらけるので本当に楽です。)

さて、だいぶ気分的にも持ち直し、また良い音を聴きたくなったので、満を持して(?)二日目も行くことに決めました。
初日のアンコールで、「この編成では練習も大変で、できる曲は全部本編で出し尽くした。だからアンコールは本編で演奏した曲をもう一度する。」という話も出ていたので、セットリストが全く同じものになるであろうということは容易に予測されました。それでも、初日に逃した3曲分と、心の準備が整っていなかった数曲分を、改めて体感し直したいと思ったのです。

2日目は、アンコール2曲で、2時間強の公演でした。席は1階15列の端でした。前日の3階席とは眺めも音の聴こえ方も異なり、違う感じ方ができたので良かったです。セットリストはやはり、アンコール以外、初日と同じでした。

この2日間、”NOW AND 弦”に参加ができて、本当に良かったと思います。

まずは、音博の中止について、自分の中でそれなりに整理がついたというのがあります。
セットリストから、"NOW AND 弦"は”NOW AND THEN”のワルツ回ではなく、”NOW AND THEN”はNIKKIを飛ばすこともなく、きちんと順番通り、ワルツも含めて進んでいくであろうこと、音博で残っていた(中止になってしまった)部分には、オーチャードホールで聴いた以上のものは含まれないことがわかりました。
私が音博の中止で失ってしまったのではと思い呆然としていたNIKKI~ワルツの(ファン度が一番高かった時期の)再演が消えてしまったわけではないというのには、心底安心しました。
そして、それと共に(中止になってしまった部分については、オーチャードホールできちんと補えたというのもあり)、音博では20周年記念として、くるりの原点であるもっくんとの3人による濃密な演奏を聴けたので、それだけでも行けて良かったかな、と、思えるようになってきました。

その次には、やはり、公演自体の素晴らしさがあります。これについては、どこまで書いていいものやら…というのもあるので(↓との関連で)、今はただ、素晴らしかったと言うのみに留めておきます。

音博参加組で、”NOW AND 弦”に行けずに悔しい思いをしている方々もいらっしゃると思いますが、おそらく、この公演は映像化されると思います。過去に横濱ウィンナー(ワルツの時期のパシフィコ公演)が発売されているというのもありますし、今回の2日目にはカメラが入っていました。MCに、おそらく映像化を想定して話しているのでは?と思う部分もあったりしたので、決して確約はできませんが、今後、映像化されたものを体験できる可能性は高いと推測されます。それを是非、観てください。そして、音博の無念を晴らしてください。

私は、2日目が終わって帰宅した後、気分がよくなり、スロバキアのはちみつ酒を空けてしまいました。笑

2日前の落ち込みは一体何だったのだろうという感じです。

勿論、今でも、残念な部分は残念だけれども、そこに呑まれてしまうということはなくなりました。その位、心を浄化し解きほぐしてくれる、優しい音達でした。本当に良かった!岸田氏も社長も本当に楽しそうでした。満足です。

(セットリストについては、プログラムに明記されてもいましたし、おそら く他に書いている人もいると思いますが、映像化されたものを観るまで待 ちたいという方もいらっしゃるかもしれないので、ここには書きません。 もし、聞きたいという方がいらっしゃれば、個別にお伝えしますので、遠 慮なくお伝えください。)

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