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守衛さんに本を紹介する件

「俺にも本を紹介してよ。」

守衛さんは、出社・退社時に常に本を持っている私を見て、
気軽に言ったに違いない。

・守衛さんは、本を読むタイプではない。
・身体を鍛え、己の肉体美をみてほくそ笑むタイプ。(多分)
・お酒が強く、寝場所の近くに一升瓶を置いている。(アル中ではない)
・昔、プレイボーイだった。(らしい)

守衛さんを知っていれば、
また、私自身の引き出しがあれば、スッと本が出るのだろうが、
すでに一ヶ月半は経ったろう。
もう、そんな話も忘れているんだろう。

なにか参考にならんか、と以前気になった本を取り寄せてみる。

いまさらだろうが、私、世事にうといんです。

本屋「ヴィレッジヴァンガード」の店長(女性)が、
会う人(男性あり・女性あり)に、
その人にあった本を紹介していく。

が、「守衛さんへの本」としては参考にならず。

でもでも、エピローグで瞼が濡れてきて、
思わず泣いている自分にびっくりする。

「何者でもなかった自分に、仕事の面白さ、売るということの楽しさ、仲間と仕事をしたり支えあうこと、全部を教えてくれた場所です・・・・・・・・・今は・・・・・・感謝の気持ちしかありません」

エピローグ 季節はめぐる、終わりと始まり P. 201

不覚にも、自分の人生と重ねたか。
あとがきで、さらに追い泣きをする。

その2冊を選んでいただいたことが、逆にその人が今どういう気持ちで本を探されていたのか伝えてくるようで、こちらまで涙ぐみそうになってしまった。忘れたり、少しラクになりたいんじゃなくて、ひたすら悲しみに向かい合って、掘り下げたいと思っていたのだ。

あとがき 2017年秋、本屋の店先で P. 223

この本はキープではないが、
¥220で、すこしじわっときて、良い読書だった。
古本屋さんの話とか、本屋さんの話って、好きみたいです。

二日の通勤時間内で読める本でもあり、
これを守衛さんにおススメしても良いかと考えている。
いずれにしろ、守衛さんを「本の世界」に誘い込むのは難しい。

私のほうこそ、本をススメてほしい ♡