備忘録『チーム ヒューマン』ダグラス・ラシュコフ著(ボイジャー 2021)

【2,640文字】

岡田斗司夫さんの動画をみて、
ダグラス・ラシュコフさんの『デジタル生存競争』を
発注しようとしましたが、品切・中古高めで、別著書作に変更。
『ネット社会を生きる10ヶ条』も同様。
2著作の間の作品『チーム ヒューマン』は入手出来ました。

チームヒューマンとは ー
人間がもっと機械に介入しようと呼び掛ける宣言です。
人間が人間であることの価値を認め合おうとする主張です。
人間がつながりや、信頼、一体感を分かち合うことを称えます。
人間が自主性を取り戻すために、住みたいと思う世界を作るため、
一緒に踏み出していくあなたに向けて書かれたものです。

日本の読者のみなさまへ


コンピューターネットワークはアメリカ国防総省のための核シェルター
みたいなものとして始まったという話があります。
実際には、コンピューターネットワークが始まったのは、
情報の処理能力を共有するためでした。

3章 嘘を学ぶ ー メディアのウイルスとは何か P. 46

デジタル技術はすべて、軍事目的からの転用だと思ってましたが、
そうでもないのですね。なんの情報の処理能力だったのか?

テレビの広告主は、消費者を実験用ラットのように使って
操作できるという考え方をとってきましたが、
ソーシャルメディアも、この手法を武器として使っています。

3章 嘘を学ぶ ー メディアのウイルスとは何か P. 57

放送メディアの普及は、広告が必要と考えたアメリカの全国的ブランドが
資金を提供して実現したものです。

4章 図形と背景 ー 主と客が入れ替わる P. 71

テレビが国民洗脳の道具になっている事には気づいていても、
SNSは違うと思っているかもしれない。
どんな技術であれ、徐々に支配層が手をまわす。
テレビの最初につくられた目的が「広告」であれ、
今とは別の可能性もあったかもしれない。
ドキュメンタリー番組からは、感動を共有させてもらった。

人間の活動には、多くの場合、「パレートの法則」
という傾向が見られます。
(・・・)
80パーセントの人は、
大多数の消費者のようにどちらかと言えば受け身に行動しますが、
20パーセントの人はより積極的または創造的に行動します。
(・・・)
私たちはアルゴリズムを使って20パーセントを排除しようとしています。
(・・・)
人間の多様性、すなわち戦略や戦術の多様性が減ってしまえば、
種としての人類の強さや持続可能性が低下します。

5章 デジタルメディア環境 ー モノ化される人間


経済市場が技術を通じて意思を表現している
(・・・)
現在行われている資本主義は、商取引の敵です。
(・・・)
今の私たちが資本主義と考えるものは、
自然に経済成長する時代であった中世の末期に生まれました。
(・・・)
外国から革新的なものや考え方を持ち帰りました。その一つが、
ムーア人のバザールから持ち帰った市場経済という概念でした。
(・・・)
ムーア人は、穀物領収(受取)証も発行しました。
(・・・)
この種の貨幣で興味深いのは、時間が経過すると価値が減少することです。
(・・・)
この貨幣は早く使わなければなりません。
(・・・)
多くの農民は中産階級の商人になりました。
奴隷としてではなく自分自身のために働くようになって、
それまでのヨーロッパ人と比べると1週間の労働日数が減少し、
より多くの利益を得て、より健康になりました。

貴族階級はこのような平等主義的な発達を嫌いました。
農民が自給自足できるようになると、
専制君主は彼らから税金を搾り取ることができなくなります。

7章 経済学 ー ゼロサムゲームからの脱却 P. 126-128

現代日本人も、工業社会に組み込まれることで、自給自足出来なくなり、
天引きシステムで、自動的に税金を取られてます。
自給自足出来るようになること、また、非電化の暮らしが出来ること等が、国の暴挙を抑制することになるかと思うのですが、
現実的には、なかなか。それでも私の理想は、そこにあるかと。


この世界を自分のイメージに合わせて作り変えようとする
制度や技術に対しては、戦いを挑みたくなります。
(・・・)
人間がいつまでも自然を支配し続けることは出来ません。
だからと言って、文明から手を引くこともできません。
(・・・)
危機に対して二者択一的な対応をとるならば、
それはデジタルメディア環境の0と1の論理に降伏していることになり、
抵抗しようとする対象そのもになってしまいます。
(・・・)
自然とつながりを持っていたいという人間の欲求と、
現実世界に影響を及ぼしたいという欲望の
バランスをとらなければなりません。
(・・・)
これは、川でラフティングをする人が
急流に出会ったときに最初に学ぶことに似ています。
乱流によってラフト(舟)が激しく揺れ始めると、
初心者は、パドル(櫂)を真っすぐに水中に入れて流れに抵抗して、
できるだけ静止させようとします。
あるいは、パドルを完全に水から出して流れに身を任せる人もいます。
どちらの方法も、ラフトは川のなすがままになってしまいます。

最善の対応は、しっかりとパドルを漕いで速く進むことです。
(・・・)
抵抗するのでもなく、受け身になるのでもありません。
積極的に参加するのです。

11章 自然科学 ー 科学は誰のためにある? P. 218 - 219


他人の意見や立場は、それがひどいものであっても、
また、歴史や強欲、戦争や抑圧によってゆがめられたものだとしても、
何らかの人間的な感覚から生じたものです。
その中にある人間性を発見し、その人間性と共鳴し、
そこから本質的な真実を取り出すためには、
敵対する人も人間として扱って、その話に耳を傾けなければなりません。
彼らは人間です。少なくとも今のところは。
(・・・)
全ての人が人間性を失っていると考えるよりも、
相手の不安を理解して共通の目標に向かって一緒に進むほうが、
はるかに建設的です。
相手の感情が破壊的な行動に変化する前に、
その感情の論理に奥深く立ち入って、共感できる何かを見つけるのです。

13章 組織化 ー チームヒューマンに参加する P. 257 - 258

自分を殺しにくる人に対し、
その行動の源となる発想要素(不安や快楽)を推測し、
共感できる部分を見つけ、
自分を殺す以外に、その不安に対処できる方法があると提案出来るか。

そんな事を考えているうちに殺されそうだが、
たしかに、殺しにくる敵を全否定してしまえば、
溝が埋まることは無い。
0-1思考ではなく、その間の落としどころが必要なのだろうが。