不義理

環境音楽あたりを聴いていて、ニューエイジミュージックと言われていた「喜多郎」さんを思い出した。社会人になった頃、気にかけていただいたYさんが、車で「喜多郎」をかけていた。

奈良県南部にある大峯山に行くようになった私は、Yさんに誘われて「冬の大峯山」に登ることになった。それまでは、初夏だったと思うが、百人くらいの団体で登った。洞川温泉に泊り、酔いつぶれた。次の日も朝は早かったが。
登山初心者にとって、雪山は危険なので、登るべきではない。大峯山であっても。。。標高八百メートルあたりまで車で近づき、頂上は千七百メートル。Yさんは、渓流釣りもされ、独りで行動される方だったと思う。誘っていただいて良かった。登山に慣れていても、独りで雪山に登るのは危険だろう。頼りにならない私でも、まだいた方が良かったのでは。

頂上も近くなったが、途中、積もった雪に腰を下ろした時、東京への転勤を告げた。Yさんの言葉は覚えていない。
奈良から四駆での帰り道、大阪の電色は綺麗だったのだろう。Yさんが、「このあたりは景色が良くて有名だ」と言っていた。私は関西の人間じゃないから。

その後、東京にいた私は、Yさんが亡くなったことを聞いた。冬の大峯から、五年後くらいだったろう。なんとなく思う。なにか病気をかかえていて、死を近くに感じていたんじゃないかと。息子がほしかったのかもしれない。Yさんの娘さんは大人しい娘だった。

最後に山に登ったのはいつだったか。2017年 2月、愛宕山(京都)に登るはずだったが(雪が多少ある時期)、その数日前に交通事故にあった。大事に至らなかったが、登山する状況では無かった。

最後の山は、今から八年前くらいだ、たしか。私の言う登山は、登られる方の言う「ハイキング」程度だが。登れる体力があるうちに、独りで登ってみようか。雪の無い時期に。