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2024年6月の記事一覧
【瑞木瑠衣SS-10】感情の名前
「すきだよ、白石」
───その言葉を残して、彼は屋上へと来なくった。
白石玲央は彼のいない屋上で彼の残した言葉を反芻する。
その言葉の意味を求めるように。
彼は何で好きと言ったのだろう。
何を好きと言ったのだろう。
どうして、屋上に来てくれないのだろう。
そもそも、好きとはなんだろう。
名前としてなら勿論知っている。
好き、それは何かを好ましく思うこと。
演技が好きだとか、好きな食べ物
【瑞木瑠衣SS-9】 日常との決別
修学旅行が終わった。
それは即ち、旅行という非日常から日常へと戻ることを意味する。
オレはいつものように屋上で筆をとる。
スカイツリーに浅草寺、ディズニーのパレードにシンデレラ城。
鮮明に、詳細に思い出される光景を1枚1枚紙に描いていく。
記憶を整理するように。
考えなくてはいけないことから目を逸らすように。
しかし、考えないようにとすればするほど考え込んでしまうのは仕方の無いことだろう。
筆を