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女性、社会、テクノロジー(Femtech)

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女性にまつわること。
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記事一覧

女性たちのオンラインでの安全を守る新興プラットフォーム

インターネットは階級、異なる言論、分断を可視化し、炎上の頻度も加速化し、たいそう治安の悪い公共空間となった。 19世紀末にフランスの社会心理学者ギュスターヴ・ル・ボンが指摘した群衆像はテクノロジーが進化しても普遍的な特性があることを気づかせてくれる。 開かれすぎたインターネットで攻撃の「標的」になる属性はさまざまあるが、特に「女性」に対するオンライン・ハラスメントは世界的な社会問題になっている。 日本で若い女性の大半がオンライン・ハラスメントに遭遇経験があるという。

メタバースとジェンダー

Facebook社が社名をMetaに変更することを発表してから、NIKEやディズニーなどの大手参入が相次ぎ、一気に注目のバズワードになった「メタバース」。 SFでサイバースペースを意味する概念は昔からあるが、オンラインの仮想世界を「メタバース」と初めて定義したのは1992年のSF小説「スノウ・クラッシュ」。「超~」「高次~」を表すMetaと宇宙を意味するUniverseを足した造語。 ファッション・メタバース、(ビジネスの場としての)エンタープライズ・メタバース、エンターテ

強いメッセージとイキりについて

アクティビズムは特別な行動ではなく、SNSでハッシュタグを使って態度表明したり、購買することで実行できる消費者アクティビズムなど身近なものになった。 社会に一石を投じるメッセージが溢れていて、強い言葉でなければ目立たなくなってきたのかもしれない。 ファッションの祭典メットガラ2021今年のメットガラはテーマが「In America: A Lexicon of Fashion」。メッセージ性が強いファッションが目立ったがSNSでの批判も多かった。 コロナ禍でBlack Li

女性誌の定義する「女性像」はどうなってるのか〜2021年夏篇〜

美容院に髪を染めに行くと、ドサっと色んな年代の女性向けの雑誌を積まれて黙々と読む。 時間つぶしにパラパラとページをめくりながら「ヘ〜最近はこんなことも取り上げるのか」と思うものもあれば「2020年代にその感覚ヤバくない?」というものまで色々ある。 髪を切りに行く「女性」の年齢も職業もさまざまだから、「女性誌」も多様で、情報を得ながら世相を読んでる気分になる。 いつもは美容院でなんとなく時代の気分に触れて終わりだけど、備忘録としてKindle Unlimitedにある女性誌に目

ジェンダーと代替医療の関係

代替医療と女性の関係について、ジェンダーが関連しているという記事や論文をいくつか見たので、書いておこうと思う。 アロマオイル、サプリメント、ヨガ、瞑想、ホメオパシーといったものは女性に人気がある。科学的に効果があるとされているものとそうでないものもあり、最近はアロマとサプリメントはマルチ商法の商材にもなっている。 代替医療の歴史は古くからあるが、60年代のカウンターカルチャーとフェミニズムの機運が結びついたオルタナティヴ・ヘルスムーブメントから現在の女性向けの代替医療文化

「ガールボス」または「リーン・イン」の終焉

女性が華々しくビジネスの場で活躍をする「ガールボス」や「リーン・イン」文化は、なぜ批判を浴びるのか。 女性のCEOの失敗が注目を集めるのはなぜかをまとめてみた。 ガラスの天井を打ち破ろうとする女性CEO ガールボスを世間に浸透させたのは、eBayでの古着販売から、ファッションブランドNasty Galの立ち上げで成功者となったソフィア・アモルーソ。 2014年に出した有名な回顧録「 #GirlBoss 」を執筆し、3年後にメディアプラットフォーム「#GirlBoss」を立ち

女性不在のテクノロジーFembot

私たちの社会システムにはバイアスがある。常に存在しているが、長い間受け入れられ、確立されたプロセスの中で不可視にされている。 目新しいことではないが、人工知能(AI)の女性化はSF映画で描かれ続けてきた。このことは、Fembot(女性ロボット)として、ジェンダーや表象論で扱われてきた。 そして近年では、SFを現実に実装するテクノロジー企業のサービスにもFembot的なものが現れてきた。 企業は性差別という悪気なく、人々が慣れ親しみやすく「感情」を豊かに表現するから、女性化はA

ロボットの性、ケア、倫理

最近はオンラインイベントが当たり前になってありがたい。先日、ジムでシンポジウムを聴きながら運動をしていて、木村武史先生の基調講演でのテーマ「セックス・ロボット、ポスト・ヒューマン、人類はどこへ?」がとても興味深かった。 国内ではあまり語られていない分野とのことだったので、記録として残しておこうと思う。 ロボットは家庭用から産業用まで社会の様々な面で接することがある。 接客をするロボット、工場で単純作業をするロボット、家庭用の愛玩ロボットなど。 セックス・ロボットとは、日常

2020年のフェムテックとリプロダクティブ・ヘルス/ライツ

2020年、経済に影響をあたえたコロナの状況下でも、フェムテック関連の新しいイノベーションが数多く生まれていることを紹介したい。 婦人科領域からメンタルケアまで包括する、女性の健康と生きやすい人生設計のためのビジネスがたくさん生まれている。 フェムテックとは Female(女性)とTechnology(技術)を掛け合わせた造語。生物学的女性の、見過ごされてきた健康課題である「生理」「更年期」「婦人科系疾患」「不妊・妊よう性」「出産・育児」「セクシャル・ウェルネス」などを解

新自由主義と反資本主義『99%のためのフェミニズム宣言』の感想

「もっと女性が働ける場を、女性を経営層に、女性の起業家を」という言葉を見る機会が増えた。私も女性として働く場でマイノリティであることにうんざりしているし、女性の起業家を応援するイベントを企画したり運営に関わってきた。 ゲームのルールを把握してうまく立ち回らなければと思っていながら、何故自分が生きづらい仕組みに最適化しなければいけないのか、という疑問がある。 「フェミニズム」という言葉は実際の生活で語られることは少ない。SNSでこの言葉を書くだけで私を敬遠する人がいる。そう

スペキュラティブ・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ

課題解決するデザインから問題提起するデザインとして「スペキュラティブ・デザイン」という概念がある。 ここ最近、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康・権利)の領域で未来について思索・推測(スペキュラティブ)させられることが増えてきた。 現実の「スペキュラティブ・デザイン」化実際、リプロダクティブ・ヘルス/ライツについては、積極的に生理について広告発信したり、フェムテックなど新しい経済の動きができている。 卵子凍結のサービス、生理自体を抑制する低容量ピルの

カーディBのWAP論争

カーディBとメーガン・ジー・スタリオンのヒット曲「WAP」が面白い議論を起こしている。 コロナと同時にBlack Lives Matter運動が起こる混沌としたご時世に、パワフルな表現で、挑発的な歌詞とミュージックビデオ(以下MV)で「これはポルノである」「女性が主体的に性を主張するフェミニズムである」と意見が割れている。 カーディBはニッキー・ミナージュと並んで、私の中で攻撃的にドラァグする女性として好きな存在。(カーディがニッキーに殴りかかって不仲らしいけど) とん

サディズム・マゾヒズムとジェンダー

サディズムとマゾヒズムという言葉は、心理学やパーソナリティ(気質、性格)の話、創作、文化、性的ロールプレイに出てくる。 鏡のような相互依存だと本でよく書かれていて、権力、快楽、罰による歪な関係性があり、いきすぎると全体主義の構造になるとも言われていて人間の類型として興味深い。 なんとなく雰囲気でサディズム・マゾヒズムの概念を自分なりに理解しているけど、ジェンダーと関連深いもので、絶えず変容しているジェンダー 観と共に今後どうなっていくのか考えてみた。 社会での人物像サデ

独身女性の幸福度

独身女性は独身男性と比較して、幸福度が高いという比較したグラフがTwitterで流れてきた。(こういう感じの情報) 幸福度は相対的ではないはずだけど、ジェンダーで比較するのはめずらしくて会社の社長との雑談で話のネタにしたりした。 女性は家庭に縛られず、孤立しすぎないよう周りと交流するかららしい。 私は独身女性なんだけど幸福かと言われたら「そこそこ」だけど、自分が子どもの頃想像していた成人女性の生き方より、自由で自律している自負はある。 男性の幸福度が低い点は、当事者の人の